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(2021/11/26 追記)

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私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音
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くらし
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オーバーワークと異変

『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』
[著]姫野桂 [監修]五十嵐良雄(メディカルケア大手町 院長) [発行]イースト・プレス


読了目安時間:3分
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 フリーライターとして5年目の2017年11月。ありがたいことに仕事は順調。でも、精神はギリギリの状態だった。自分にはライターという仕事しか能がないと思っていたので、ほぼ休むことなく、遊ぶことなく仕事を詰め込んでいた。今思うと完全にオーバーワークなのだが、どんなに仕事が立て込んでいても絶対に締切に遅れることはなかった。遊ぼうと決めた日でも、自分が遊んでいる間にも締切はジリジリと近づいてくるので落ち着いて楽しめないし、週刊誌の仕事はタイトなスケジュールなので突然取材が入る。恋人も長らくいないので精神的な支えがない。しいて言えば「仕事ができる自分」が心の支えだった。でも、フリーという働き方を選んだのは自分なのだから、仕事一本でたくましく生きていくべきだと思って突っ走っていた。気づいたら、アルコール度数の高いお酒を酩酊状態になるまで飲むか、セックスをするかでないと眠れない身体になっていた。


 そして年明け2018年1月、プライベートで追い打ちをかけるようなショックな出来事が起こり、私の心は音もなく崩れ落ちた。もう4日間眠れない日々が続いている。頭も体も疲れているはずなのに、布団に入ってもまったく眠れない。このままずっと眠れないのだろうか……。食欲もなく、胃が何も受け付けない。胃液がこみ上げるが、胃が空っぽなので何も出てこない。しかし、眠れない、食べられないなかでも仕事は追いかけてくる。担当している週刊誌の入稿がすぐそこに迫っていた。今すぐにでも眠りたい。でも眠れない。眠らないまま取材に出かけ、いつも通り取材をこなして帰宅。原稿執筆に取り掛かろうと自宅のデスクに向かった。


 と、そのとき、か細い女性の歌声が聞こえた。耳を済ませてよく聞いてみると、「アンパンマンのマーチ」を歌っている。どこから聞こえてくるのか出どころを確かめようと、低く唸っていた部屋の暖房器具を全部消して無音状態を作ることにした。最初は外から聞こえているのかもしれないと思ってベランダに出るも、大通りの車の音しか聞こえない。部屋に戻り、耳を澄ませようとすると、自然に体勢が低くなる。その体勢のまま、部屋中をゆっくり這うように歩き回った。飼い猫が私の奇異な動きを不審な目で見つめていることに気づく。アンパンマンのマーチは聞こえたり、途切れたりする。結局、その歌声の元は分からなかった。そして、もしかしてこれは幻聴なのではないかという結論に至った。


 デスクに戻り、幻聴によるアンパンマンのマーチをBGMに原稿を書く。心療内科の受診経験がある週刊誌の担当編集に「今、幻聴が聴こえる状態です」と伝えると、「時間がかかってもいいから一緒に頑張ろう」と言ってくれて、締切の時間を延ばしてくれた。ボロボロ泣きながら原稿を書き上げ、当初の締切の時間に間に合わせた。



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