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官僚の責任
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政治・社会
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第3章 官僚はなぜ堕落するのか

『官僚の責任』
[著]古賀茂明 [発行]PHP研究所


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改革派から守旧派へ転じた経産省
「古賀さん、もうちょっと抑えたほうがいいですよ」

 経産省のクラブ付の記者によく言われたものだ。
「もう官房長が『かばいきれない』って言っています。まずいですよ」

 私の将来を心配してくれたのだろう、記者たちは口をそろえて忠告してくれた。

 事務次官に呼ばれてこう言われたこともある。
「やりたいことをやるのはいいけれど、やり方というものがあるだろう。もう少し行儀よくできないのか?」

 実際、私は「改革派」と呼ばれ、経産省内ではタブーとされた分野にもずいぶんと踏み込んでいったし、重要な改革を実現してきた自負もある。そのため「守旧派」と呼ばれる人たち――皮肉なことに本人たちはそう思っていない――と対立したことは数えきれない。

 が、だからといって干されることもなく、ある時期まではむしろ、周囲からうらやましがられる出世コースを歩んできた。べつに出世したかったわけではないが、結果的にそうなったのは、比較的、上司に恵まれたこと、そして経産省自体にもまだそれを許すだけの度量があったという事実も申し添えておかないといけないだろう。

 だが、いつしか守旧派――つまり急進的な改革を望まない人たちが経産省の主流になっていた。そのため、省としての方針が変わり、それとともに私の評価にも「×」がつきはじめた。記者たちがいろいろと言ってきてくれたのは、そのころのことだ。
「なぜ、そこまでするのだろう……」

 私は自問自答してみた。間違っていることをしているとは、まったく思わなかったし――守旧派からすれば悪人に見えるのだろうが――むしろ当たり前のことを当たり前にしているという感覚があった。
「日本経済のためになると自分が思ったことを、国にとって利益になると信じることをする」

 それが私の行動原理だった。だから私は、周囲からどう思われようと、相手が不愉快に感じようと、自分がよいと信じることをしてきた。
「偉くなりたい」と思っていたら、「次官の意向に反することをしたら×がつくかもしれない」とか、いろいろと考えたかもしれないが、そういう発想はいっさい出てこなかった。産業界のため、国のためになるのだから、むしろ喜ばれるものと思っていたほどだ。

 しかし、必ずしもそうではなかったらしい。

 現に二〇〇九年十二月、国家公務員改革推進本部事務局審議官の役職を解かれ、経産省に戻された私は、「大臣官房付」という閑職に追いやられることになった。「官房付」とは、次のポストが決まるまでのいわば「つなぎ」。ふつうは数カ月以内に次のポストが決まるのだが、私の場合はいっこうに行き先が示されず、このまま官僚生活を終える可能性が高いのだ。

規制を守ることが使命という「気分」

 そのことに対して後悔はしていない。おかげで、ずいぶんおもしろいことができた。

 だが、同時に思う――。
「はたしておかしいのは私なのか? 自分が特殊なのか?」

 すでに述べたように私は、「そうすることがベストだ」と思ったからそうした。口はばったいが、「それが日本経済のためになる」との信念があった。
「省のためになる」とはまったく考えなかったのは確かだ。だが、国家公務員であるならば、省益の前に国益を第一義とするのは当然だろう。
「となれば、そのように考えない周囲の人間のほうがおかしいのではないか?」

 そう思わざるをえないのだが、官僚という人種は、どうもそうは考えていないようなのである。たとえば、こんなことがあった。

 一九九〇年代に日本でも広がりはじめた事業に、リース会社やクレジット会社がもっている債権をまとめて流動化するというものがあった。これは、リーマンショックを招いたデリバティブのようなもので、それなりのリスクがある。したがって、まだこういう商品になじみの薄い日本でそのまま流通させると、知らず知らずのうちにリスクが広がって、投資家が思わぬ打撃を受けたり、また、一度予期せぬ破綻事例が出ると業界全体に信用不安が生じて、共倒れになるほど大きなリスクになったりする可能性がある。

 そこで、国が審査して「安全だ」とのお墨つきを当時の通産省が与える仕組みが必要だということになり、こうした事業の規制および保護・振興を目的とした法律づくりを通産省が進めることになった。

 とはいえ、そのような専門的な仕事は省内部ではできない。そこで、リース業界とクレジット業界から一億円ずつ資金を拠出してもらい、プロの専門家を集めて「財団法人日本資産流動化研究所」という団体を設立。そこに通産省が予算をつけ、審査業務を委託することになった。ここで「安全」のお墨つきをもらうと、個々のリース会社やクレジット会社の格付けと関係なく、流動化された債権としての格付けが得られ、低コストで資金調達が可能になるとともに、業界全体の資金繰りも円滑になって活性化するという仕組みだった。

 が、その結果、新たな団体が生まれたことで、そこへ理事長として一人、事務局長として一人を通産省から送り込むことが可能になった。典型的な天下りポストが誕生したわけだ。

 その後、私が商務情報政策局の取引信用課長として、こうした事業を担当することになったときにはすでに、事業は安定してまわっており、かつ流動化の仕組みも市場での理解が進んでいた。だから、私はこういう提案をしてみた。
「もう、いちいち経産省が審査しなくても民間でできるでしょう。リースとクレジット以外の資産流動化にはこんな規制はない。
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