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六千人の命を救え!外交官・杉原千畝
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ルポ・エッセイ
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第二章 命のビザ──杉原千畝の決断

『六千人の命を救え!外交官・杉原千畝』
[著]白石仁章 [発行]PHP研究所


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リトアニアのカウナスへ


 一九三九年七月二十日。(すぎ)(はら)一家のフィンランドでのおだやかな生活は、(とつ)(ぜん)、終わりを告げました。(すぎ)(はら)に、(てん)(きん)の命令が(とど)いたのです。次の(きん)()(さき)は、リトアニアの当時の首都カウナス((げん)(ざい)の首都はビリニュス)という町です。そこに新しく日本の(りょう)()(かん)(*1)を開いて、(りん)()(せき)(にん)(しゃ)になるというものでした。


 リトアニアは、第一次世界大戦までロシアに()(はい)されていましたが、ロシア(かく)(めい)(こん)(らん)のなかで、(どく)(りつ)を達成しました。それまでリトアニアには、日本の出先機関がありませんでした。なぜこのとき、(とつ)(ぜん)(りょう)()(かん)を開くことになったのでしょう。そして、なぜ(すぎ)(はら)が、()(けん)されることになったのでしょうか。


 このころ、満州国とモンゴルの(こっ)(きょう)付近では、日本とソ連がはげしい(せん)(とう)をくり広げていました。(げん)(ざい)では、日本とモンゴルはとても親しい関係です。しかし、(すぎ)(はら)がリトアニアに()(けん)された当時のモンゴルは、むしろソ連と仲よくしていました。それは、モンゴルが、ソ連に次いで世界で二番目に、(きょう)(さん)(しゅ)()を目指す国になっていたからです。


 満州国とモンゴルの(こっ)(きょう)は、とてもあいまいで、二つの国の間でたびたび争いが起こっていました。一九三九年にも大きな争いが起こり、日本とソ連も()きこまれました。これをノモンハン事件(*2)といいます。この戦いでは、ソ連の兵器が日本のものより(かく)(だん)にすぐれていたので、日本軍は不利な(じょう)(きょう)に追いこまれました。


 当時の日本では、健康な(だん)(せい)は、一定期間軍隊に(きん)()する()()がありました((すぎ)(はら)(がい)()(しょう)(りゅう)(がく)(せい)のときに、一年四か月ほど軍隊に(きん)())。()()(まさ)()という外交官は、(がい)()(しょう)に入って約一年後に軍隊に(きん)()し、その間にこの(せん)(とう)(けい)(けん)しました。()()の目の前で(てん)(かい)されたのは、おそろしい光景でした。


 当時の多くの日本兵は、(たい)(ほう)(おう)(えん)を受けながら、(てき)(じん)()を目指して走っていく戦い方をしていました。ところが、ソ連軍が、日本軍より(こう)(せい)(のう)(たい)(ほう)を持っていたため、まず日本軍の(たい)(ほう)()(かい)されました。日本兵は、(たい)(ほう)(おう)(えん)がないまま(てき)()につっこむしかありません。すると、そこにソ連の戦車があらわれて、兵士は次つぎにたおされたそうです。


 日本陸軍は、ほとほと(こま)ってしまいました。陸軍大臣は、(がい)()(だい)(じん)に相談し、なんとかソ連と(こう)(しょう)をして、日本に不利にならない形で(せん)(とう)が終わるように申し入れます。(がい)()(しょう)としても、この問題は、少しでも早く(かい)(けつ)しなくてはいけないという気持ちでした。


 そして、(がい)()(しょう)は、(すぎ)(はら)など五人のロシア語(せん)(もん)()を、ソ連とソ連の周辺国に急いで()(けん)することを決定したのです。選ばれた五人のなかで、(すぎ)(はら)はもっとも(わか)く、(がい)()(しょう)が、かれの(じょう)(ほう)(しゅう)(しゅう)(のう)(りょく)を高く(ひょう)()していたにちがいありません。「(てき)を知り(おのれ)を知れば百戦あやうからず」ということわざがあるように、相手をよく知るということが、(こう)(しょう)を有利に進めるためには必要なのです。


 (すぎ)(はら)()(けん)されたリトアニアは、同じ時期に(どく)(りつ)したラトビア、エストニアとともに、バルト三国と()ばれています。おそらく(すぎ)(はら)一家は、()らしていたフィンランドのヘルシンキから、船を利用して出発したと思われます。まずは、海をはさんですぐ向かいにあるエストニアの首都タリンまで行き、その後、エストニア、ラトビア国内を鉄道で()(どう)したのではないかと考えられます。


第二次世界大戦の始まり


 一九三九年、(すぎ)(はら)一家がリトアニアに向かっていたまさにそのとき、世界中をおどろかす(だい)()(けん)が起きました。ドイツとソ連が、(とつ)(ぜん)、手を組んだのです。二つの国は、たがいに相手の国を(みと)めようとせず、はげしくいがみ合っていたはずでした。


 ソ連は、ドイツでナチスが力を持つようになり、(きょう)(さん)(しゅ)()をほろぼすことを声高にさけぶようになると、その力に(たい)(こう)する(しゅ)(だん)を用意しなければならないと考えました。そこで、同じくドイツを(けい)(かい)していたフランスの協力を得て、(こく)(さい)(れん)(めい)に入ります。


 やがて、ドイツは、オーストリア、チェコスロバキアに(せい)(りょく)を広げ、次にポーランドをねらいました。ソ連から見ると、ポーランドはかつてのロシアの(りょう)()を中心に(どく)(りつ)した国です。そのため、この国を手に入れたいという思いがありました。


 それまでドイツとソ連が、ポーランドに手を出せなかった最大の理由は、たがいに相手の国にはばまれることをおそれていたからです。それならば、ドイツとソ連が手を結べば、(かん)(たん)にポーランドをたおすことができるのではないか。そのような考えが、それぞれの()(どう)(しゃ)の頭にうかんだのでしょう。


 ソ連とドイツは、こっそりと話し合いを進め、ポーランドを両側から()めて、その(りょう)()をどのように分けるかということまで決めました。さらに、ソ連がバルト三国やフィンランドを手に入れること、ドイツがドイツより西側のヨーロッパ各国を手に入れることを、たがいに(みと)めることにしました。このおそろしい計画は、ほかの国には、当然()(みつ)にされていました。


 そして、一九三九年八月二十三日、二つの国がたがいに相手を(こう)(げき)しないということを約束する()()(しん)(じょう)(やく)を結んだことが発表され、世界中が不安になったのです。


 これは、何を意味するのでしょう。各国の新聞は、この(じょう)(やく)の結果、ポーランドと日本が、たいへん不利な立場に追いやられたと(ぶん)(せき)しました。ドイツとソ連からはさみ()ちにあうポーランドだけでなく、なぜ、日本が不利な立場に追いこまれると思われたのでしょうか。


 理由は、当時の日本にとっていちばんの味方だと信じられていたドイツが、日本と(せん)(とう)(ちゅう)のソ連と手を組んだからです。これで、日本に味方する国はなくなると思われました。日本が受けた(しょう)(げき)は大きく、当時の(ひら)(ぬま)()(いち)(ろう)(ない)(かく)は、()()(しん)(じょう)(やく)が発表された五日後に(そう)()(しょく)しました。ドイツとソ連の()()(しん)(じょう)(やく)の発表によって、(そう)()(だい)(じん)がやめるまでに追いこまれたのは、世界中でも日本だけでした。


 ヨーロッパの大国で、(こく)(さい)(れん)(めい)の中心メンバーであったイギリスとフランスは、それまで戦争をさけていました。そのため、どちらの国も、周辺の国ぐにに対するドイツのふるまいを、積極的におさえようとしてこなかったのです。しかし、ヒトラーが、チェコスロバキアを()(はい)()におさめ、さらにポーランドに進出を始めようとしたとき、両国は目を覚ましました。


 八月二十五日、イギリスとフランスは、それぞれがポーランドとの間に(そう)()(えん)(じょ)(じょう)(やく)を結びました。これは、もしもポーランドに何か(こま)ったことが起きたときには、助けるという約束をした(じょう)(やく)です。しかし、このようなイギリスやフランスの動きも、ヒトラーの(いきお)いをおさえることにはつながりませんでした。


 九月一日、ついにドイツ軍は、ポーランドに()めこんだのです。すると、九月三日、イギリスとフランスは、ドイツに対して戦争開始を告げる(せん)(せん)()(こく)をしました。

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