静かにきいているから、わかっているのかと思う。わかったかときくと、はい、わかりました、と答える。それでは、というので新しいことに話を進めると、あとでまるで見当ちがいのことを質問したりする。
おかしいと思ってよくきいてみると、はじめのことを上の空できいていることが判明する。それなら、なぜわかったと言ったりするのか。わからないと言えば面倒になるから、わかったことにしたのだ、と涼しい顔をしている。
学校の授業でも、たえずそういうことが起こっているらしい。
「わかりましたか」
「はーい。わかりました」
安心して先生が先へ進むと、実はわかっていない。
だいたいはじめから心に留めてきこうとしてもいない。