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辞書には載らなかった 不採用語辞典
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雑学
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第3章 こんな言い方もあるとは──バラエティーに富んだことば

『辞書には載らなかった 不採用語辞典』
[著]飯間浩明 [発行]PHP研究所


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(あか)タン



〔私立探偵の〕誰かが信号に引っかかっても「赤タン(赤信号)です。誘導してください」の無線で再び追いつけるから、アセる必要がない。
(北尾トロ『危ないお仕事!』2006年 新潮文庫 46ページ)



 世間的には謎の多い職業を、ライターの北尾トロさんが直接取材したルポルタージュからの引用です。

 ここでは、浮気調査をする私立探偵の車に同乗しています。調査対象の車を数台の車で尾行します。その車のどれかが、赤信号に引っかかってしまうこともあります。この「赤信号」を「赤タン」と言います。
『集団語辞典』にこの語はなく、代わりに、不良用語として「鼻血」の意味が載っていました。どちらも、花札の「赤タン」(赤い短冊の絵のついた札)から来ているのでしょう。

 こうした狭い範囲で使われる隠語は、『三省堂国語辞典』にまず載らないものです。でも、私は関心を持って集め続けています。

 この本には、ほかにも隠語などが多く出てきて、参考になります。

 たとえば、スーパーの警備員が入り口で見張っていて、万引きに備えることは「居待ち」。万引き集団で盗む役のことは「真打ち」。

 あるいは、新聞販売店では、5日勤務の後に休日が来るのが「五勤一休」。契約を取るために配る品物が「拡材」、という具合。著者は、拡張員の日常を知るため、身分を隠して販売店で働いたそうです。

あぶれ手当(てあて)



派遣ユニオン書記長「今回、〔人材派遣会社の〕廃業でもし〔日雇い労働者が〕仕事を失うんだとしたら、きちんとさかのぼって日雇い雇用保険に加入させてですね、あぶれ手当が受けられるように措置をするべきだというふうに思います」
(NHK「ニュース7」2008年6月2519時放送)



 大手人材派遣会社が廃業した時、登録していた日雇い労働者たちに雇用保険が下りないことが判明したというニュースです。

 ここで「あぶれ手当」と言っているのは俗称で、正式には「日雇(ひやとい)労働求職者給付金」と言います。役所では、何でも堅苦しく言うものですが、より分かりやすいのは「あぶれ手当」のほうです。

 つまり、日雇い労働者がもしその日の仕事にあぶれても、保険料を払っているなど、条件を満たしていれば、手当がもらえます。これが「あぶれ手当」です。

 役所の用語は、「不景気」が「調整過程」、「丸投げ」が「一括下請負(したうけおい)」というように、日常感覚とかけ離れてしまうのが難点です。

 人々の怒りを買ったのが、医療制度の名前にもなった「後期高齢者」(75歳以上の人)という用語でした。もうすぐお迎えが来るかのような表現です。これも以前からあった用語で、『三省堂国語辞典』では、2001年の版から「高齢者」の項目で触れています。

 NHKのニュースでも、「あぶれ手当」の部分の字幕は、単に「手当」となっていました。俗語はなるべく避けているようです。

イモひく



「向こうはトカレフですよ」/「それがどうした。東京のチンピラにイモひいて、どう落とし前をつけるんや」
(黒川博行『螻蛄(けら)』〔2009年単行本〕新潮文庫 452ページ)



 黒川博行さんのサスペンス小説の一場面。建設コンサルタントと経済やくざとの会話です。この「イモひく」が分かりませんでした。

 作品中には、もう1か所出てきます。〈川坂の代紋背負(せたろ)うて、東京の極道にイモひくわけにはいかんのじゃ〉。
「負ける」という意味のようにも読めますが、謎のことばです。

 森村誠一さんの小説にも、〈〔夫は〕いまさら芋引いて(頭を下げて)生きられるかって怒ったわ〉(「棟居(むねすえ)刑事の推理」)とあります。「頭を下げて」と注記してあります。いったい、本当の意味は何なのか。

 古い辞書には、「イモ(を)ひく」が載っています。ただし、「恐れる」の意味と書いてあるだけで、具体的な説明がありません。

 インターネットで検索すると、この種の隠語にくわしい人々が、いろいろ解説してくれています。

 総合すると、これはやくざ用語で、意味は「おじけづく」「たじろぐ」「びびる」「恐れて物事から手を引く」「逃げ出す」「負ける」などらしい。語源は、芋のつるをへっぴり腰で引っ張る姿勢に由来するそうです。全面的に信頼するわけにはいきませんが、勉強になりました。

うたう



〔元防衛相は〕「献金をいただいた企業の経理担当者がクビになって、捜査当局にうたう(自供する)こともある」などと生々しい具体例をあげ、注意を呼びかけていた。
(『産経新聞』〔ウェブ版〕2009年3月19日閲覧)



 派閥の総会で、元防衛相が若手議員たちを前に、政治と金の問題について厳しく身を律するよう注意を促した、という政界ネタです。もし違法献金をもらったとしても、先方が、捜査官にすべてを自白するかもしれないよ、というのです。
「うたう」を「自白する」の意味で使うのは犯罪者の隠語です。国会議員の発言としては、いささかくだけすぎているかもしれません。

 けっこう古くからある言い方で、明治時代に広島県警の警部が編纂(へんさん)した隠語集にも〈ウタウ 白情〔=白状〕セシ(こと)ヲ云フ〉と出ています。もっと古く、江戸時代からあったかもしれません。

 関西では、「うたわしたろか」と言えば、「痛い目に遭わせて泣かせてやろうか」ということです。「うたう」には昔から、俗用で「悲鳴を上げる、泣く」という意味がありました。「自白する」はそこから派生したのでしょう。泣いて謝って、すべてを自白するわけです。
「自白する」を意味する隠語には、ほかに「落ちる」「げろする」「泥を吐く」「べしゃる」などがありますが、「うたう」「べしゃる」以外は『三省堂国語辞典』にも載っています。


内引(うちび)



もっともコンビニの防犯カメラは店内ばかりでなく、倉庫にも。従業員が商品を盗む「内引き」も多いのだ。/実際、倉庫内に設置された防犯カメラが、タバコを盗み自分のバッグに入れる従業員の犯行をキャッチした。
(ウェブ「J-CAST テレビウォッチ」2009年1029日)



 偶然にも犯罪用語が続きますが、おつき合いください。

 上の記事は、コンビニの防犯カメラの映像を取り上げたテレビ番組を紹介するものです。「内引き」の「引き」は、「万引き」の「引き」。内部の者が引く(=盗む)から「内引き」です。

 こんなことばが、いつからあるのかと思って、昔の隠語辞典を見てみましたが、載っていませんでした。

 2000年に出た『集団語辞典』には、「内引き」はありますが、用例は出ていません。おそらく、古い例が見つからなかったということでしょう。ほかに、同じ意味の「忍ばせ」ということばが載っていました。スーパーやデパートで、店員が商品を着服することです。

 国語辞典はどうかというと、『大辞林』第3版の電子版に「内引き」の項目がありました。0910月に採録とあります。時期的に見て、上に紹介されているテレビ番組から例を拾ったのかもしれません。
「内引き」がさほど古くないらしいことは分かりました。コンビニの普及にともなって発生した、新しい犯罪用語という可能性もあります。この分野のことばも、時代とともに変わるのでしょう。

駅立(えきだ)



ほんの3週間ほど前の朝の駅立ちでは、/「小泉進次郎です。
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