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西欧近代を問い直す
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政治・社会
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文庫版まえがき

『西欧近代を問い直す』
[著]佐伯啓思 [発行]PHP研究所


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 本書は、平成五年(二〇〇三年)にPHP新書として出版された『人間は進歩してきたのか──「西欧近代」再考』の文庫化です。この新書は、もともと京都大学の、いわゆる教養科目として行った講義をもとにしたものでした。講義のテーマは次のようなものでした。

「われわれはすべからく『近代社会』に生きている。ではどうして西欧において近代的理念が生みだされ、近代社会が形成されたのか。そして、それはどこへ向かおうとしているのか」


 そして、これはただ大学の入門的講義のテーマというだけではなく、私自身の長年の関心事でもあり、また今日、(少し大きく言えば)世界にとってもきわめて重要なテーマだと思うのです。

 西欧近代は、合理的科学にせよ、自由な個人の観念にせよ、基本的人権にせよ、民主的な政治理念にせよ、主権的国民国家にせよ、市場競争主義にせよ、普遍的な理念を生み出しました。少なくとも、彼らは、それを普遍的な理念とみなしてきました。

 そして、実は、われわれ日本人もそうです。明治の近代化以降、さらには戦後のアメリカ型の近代化以降、われわれも西欧近代社会を形作っている理念は普遍的だと考えてきました。だからこそ、この理念を導入し、定着してゆくことが日本社会の、さらには世界の「進歩」になると見ていたのです。こんなことは疑う余地のない当然のことだとみなしてきたのです。

 私が本書で試みたことは、このような見方、いってみれば歴史観・世界観に疑義を呈することでした。そのために、まずは、西欧近代とはいったい何なのか、どうして西欧において「普遍的」(とみなされる)近代的理念が成立したのか、そこにはどのような背景があるのか、ということを理解しておかなければなりません。本書の関心はそこにありました。

 この書物が書かれた時期は、二〇〇一年九月一一日に世界を震撼させた、アル・カイダによるアメリカへのテロ攻撃が起こり、続いて、アメリカによるイラク攻撃が開始された頃です。アメリカに代表される西欧近代主義の普遍化が、まさしくイスラムとの激しい確執をもたらしつつあった頃なのです。その後、イラクはますます混乱に陥り、二〇一〇年代に生じた中東の「民主化」運動は失敗して、いっそう中東は混沌とし、今日「イスラム国」運動が生じています。その少し東のほうでは、ロシアの強権的な大国化が進展し、さらに東では中国の不安定な強国化が進行しています。

 日本では、アメリカ型の市場競争経済を模範とする経済改革と、アメリカ的な民主主義を徹底する政治改革がともに挫折して、長期にわたる政治・経済の低迷が続いていました。二〇一三年になって安倍政権の誕生とともに、状況は少しずつ変わってきていますが、まだ先行きは不透明です。

 本書では、これらの「現実」を直接に扱っているわけではありませんが、この「現実」が背後にひかえているわけで、そのもとを辿(たど)れば、西欧が生み出した「普遍的」理念が本当に普遍的なのか、という論点へとゆきつくのです。そのための、ひとつの展望(パースペクティヴ)を与えようとしたのです。この点も含めて、小浜逸郎さんがたいへんに丁寧な解説を寄せてくださいました。本書の文庫化を進めてくださったPHP文庫出版部の横田紀彦さんともども深謝します。


 二〇一四年一〇月八日
佐伯啓思 
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