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(2021/11/26 追記)

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定年からが面白い
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生き方・教養
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4 転勤で破れたパリの夢

『定年からが面白い』
[著]小林淳宏 [発行]PHP研究所


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 帰国して囲碁事始め


 さて昭和三十九年二月、三十九歳でワシントンから日本に帰った私は、外務省記者クラブ(霞クラブ)に配属され、私の勤務していた通信社チームのキャップになった。この時の部下に沖野剛君という囲碁初段がいた。記者クラブというところでは普通、待ち時間が長い。これを利用して碁を習おうと思い、沖野君に手ほどきをお願いした。

 今思い出してもこの「変わり身」は実に迅速だった。ゴルフ好きにとっての理想郷であるワシントンを離れる時、あれほどなげき悲しんだのに日本に帰ったらぴたりとゴルフのことはあきらめてしまった。周囲を見回し、東京でゴルフを続けるには時間や場所はもとより幾重にも張りめぐらされた障害を克服しなければならないことをすぐに知ったからだった。そんな無理はしない方がいい、と。

 記者クラブでは、私の机の横の長い共同テーブルの上に碁盤と碁石が常時置かれていて、待ち時間に碁好きが打っていた。それを見て、ニューヨークで米国青年に「Do you play Go ?」と訊ねられ、「No」と答えたことを思い出した。そうだ、ゴルフよりこっちを習った方が無理をせずにすむ。こうして私は目標をいち早く囲碁に転換して、沖野初段に毎日毎日教えを乞うた。

 私は今でこそよく知っているが、碁を教えるのは大変な仕事である。とくに生徒の覚えが悪く、進歩が遅いと飽き飽きするし、かなりの忍耐を要求される。そういう生徒だった私を相手に、よくも沖野君は一年ほども毎日のように一局打ってくれたものだと、本当に感謝している。

 部下は一年毎に交替して沖野君の次に初段の屋山太郎君がきた。

 この屋山君も約一年私を懇切丁寧に指導してくれた。しかし「厚味に近寄るな」「厚味を地にするな」という棋理を口を酸っぱくして何度も私に叩き込もうと努力してくれたのに、出来の悪い生徒の私は「そうか、そうか」といいながら実際にはなにも分かってはいなかった。

 彼がローマに特派員として出発した後、志村文三君がきた。志村君も初段で、親切に教えてくれた。彼らにとって私は上司だったが、上司だからといった義理ではこんなに長期間、毎日のようにつき合ってくれることはできない。私の熱意にほだされたためだろう。それほど私は碁にのめり込んでいた。

 私も人並みに本を買って勉強した。そして入門書を電車の中で読み、シチョウ(こちらを参照)というものを知った頃のことである。小学校に行っている長男をつかまえて「碁は非常に簡単で易しいゲームだ。囲めば取れるんだ」ということと、二眼の活き(こちらを参照)を教えて打ってみた。しばらくしたら私の白がシチョウにかかってしまっていた。毎日電車で勉強して覚えたばかりの私は、よもや初めて石を握った長男がシチョウを知るはずがないと思って逃げ出したところ、
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