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(2021/11/26 追記)

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定年からが面白い
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生き方・教養
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6 川端康成氏との不思議な縁

『定年からが面白い』
[著]小林淳宏 [発行]PHP研究所


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 小説『名人』を知る


 日本棋院に入学したのが昭和五十三年の一月で、七月には2級になった。そして十月二十三日、湯河原に出かけて名人戦とつき合い、二日過ごした。林海峰名人に大竹英雄九段が挑戦した第五局である。私の友人や先輩が主な新聞社の首脳部になっているので、こういう新聞棋戦の観戦を頼むと、現地で丁重にもてなされることを知った。

 碁好きとしては有難かったが、こういうところにわざわざ観戦にくるのはアマ高段者に決まっている、と受け取られ、私は冷汗のかき通しだった。

 純和風の「石亭」の客室が朝日新聞の仕事部屋になっており、ここでたった一人の私を相手に高川名誉本因坊と竜騎兵氏が進行中の名人戦を解説してくれた。
「私は初心者で、そんな高級な解説は分かりません」

 と白状することができず、正座のヒザを固くして私はやせる思いをした。

 雲の上の神様と思っていた名誉本因坊を前にしてはあぐらをかくわけにも行かず、難行苦行で名人戦とつき合った私は、東京に帰ったらまたまた「名人」とつき合うことになった。といっても今度は川端康成氏の小説の『名人』である。

 十一月八日、私は松下幸之助さんのところで出している「PHP」という英文の雑誌に眼を通していた。無料で定期的に寄贈されていたが、有益な論文があるので見落とさないようにいつも気を付けていた。

 この中にアメリカ人でプロ初段になったジェームズ・カーウィンさんの紹介記事があり、これを読み終えたらその後に、

 The Master of Go, by Yasunari Kawabata, Translated by Edward G. Seidensticker

 という二ページの記事が掲載されていた。

 サイデンステッカーさんの翻訳した川端康成氏の小説、『名人』の書評である。私は無学にも氏にこういう小説のあることを知らなかった。早速昼休みに丸善に出かけていって手に入れた。


 ノーベル賞授賞式での大騒動


 話はちょうど十年昔にさかのぼる。昭和四十三年十二月、ノーベル賞受賞のため日本からきた川端氏と私はストックホルムで初めて会った。一九一三年、インドのタゴールが受賞して以来、半世紀ぶりに文学賞が東洋に行くというので国際的話題になっていた。もちろん日本では初めての文学賞なのでマスコミは騒いでいるようだった。

 これを報道するためストックホルムに集まった日本人記者は約十人。ボンからきた共同通信支局長の佐々木さんとパリからかけつけた私以外は東京からやってきた。

 川端さん一行は御家族や通訳のサイデンステッカー博士を含めた大人数だったし、さらに映画『雪国』の女主人公を演じた岸恵子さんも呼ばれてパリからくることになっていた。
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