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定年からが面白い
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生き方・教養
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13 初段試験に落第

『定年からが面白い』
[著]小林淳宏 [発行]PHP研究所


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 消えた「定年一年で入段」の夢


 引退の翌年、念願の「オリーブの首飾り」をミスタッチ無しで弾き終え、上機嫌だったが、碁の方ではがくんと滅入ることが起きた。人生いいことずくめにはいかない。

 昭和六十年六月末は一つの目安だった。引退満一年だからこれまでには初段になりたいと思っていた。しかし碁会所では勝率が時々4割台になってはいたものの、三十局打って24勝することはまだまだ無理だった。雑誌の試験は1、2級どまりだし、こうなったら日本棋院の試験を受けるしかない。

 六月二十三日の日曜午前八時五十分家を出て東京駅に向かった。

 八重洲口で降り、観光会館の地下に行った。ポルノ映画館のある風景は少しも変わっていない。エレベーターで五階に上がった。何年ぶりかで訪れた中央会館は以前と同じであり、職員はみんな親切だった。

 初段試験を五千円払って申し込んだ。カードを貰って見たら「4連勝」「5勝1敗」もしくは「6勝2敗」の三通りで初段になれると書いてある。この規定も昔通りだ。持ち時間は以前四十分だったはずだが四十五分といわれ、これなら時間切れの心配はなさそうだと思った。

 最初の組み合わせが決まった。この時すでに私は幸運の女神に見放された。初対戦の相手はなんと3勝1敗の人だった。そもそも私の相手になる人は私と同じように初対局の人か、さもなければ1勝1敗もしくは2勝2敗の人でなければならない。星の同等の人同士を組み合わせるのが原則だからである。係りのアルバイト大学生らしい人が、
「しまった」

 といってしばらく二人のカードを眺めていた。カードの書き直しは少し面倒なのだ。私はままよとばかり、
「いいですよ」

 と運命を甘受した。手合時計を貰って三十前後の人と打ち始めた。私は必死だった。持ち時間を気にしなければならず、手合時計のボタンは押さなければならない。そのうち打ったとたんに「しまった」と思ったら、自分の右手が無意識に伸び、今打ったばかりの石をハガそうとしているのに気が付いた。
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