『最新版 小学生の学力は「ノート」で伸びる!』
[著]親野智可等
[発行]すばる舎
◆何のためにノートを取るのか?
教師時代に感じていたことがあります。
それは、親にもっと子どものノートを見てほしいということです。
ノートには、子どもの今の姿が実によく表れています。
勉強のどんなことが得意で、どんなことが苦手なのか。日々どんなことを感じ、発見しているのか。ノートは子どもの成長の軌跡なのです。
ただ、親はなかなかノートを見ないわけです。見るタイミングをつかむのが難しいのでしょう。毎日、忙しいというのもあるでしょう。
でも一番の理由は、どう見ればいいかわからないからではないでしょうか。
そこで本章では、親が知っておきたいノートの見方、親がノートを見る意味について、お話していきたいと思います。
最初に知っておいていただきたいのが、ノートの機能です。
ノートの機能には3つあります。
①記録のため
②思考のため
③練習のため
一つずつ説明していきましょう。
◆ノートは「記録」「思考」「練習」のため
ノートの一つ目の機能は「記録」です。
学習したことを一度で身につけることは誰にもできません。何かに記録し、くり返し見て、確認することで、知識として定着していきます。
板書だけでなく、授業中に自分が考えたこと、友達が発言した内容なども記録することで、学習効果が高まっていきます。記録がしっかりできるということは、勉強の基本姿勢ができているということです。
また、社会見学、講演や講義を聴いて書くのも、ノートの記録としての機能です。
二つ目は「思考」。発想を広げたり、深めたりするためのものです。
たとえば、算数の応用問題の図を描いて考えるといったことです。また、理科や生活科の観察実験の様子を記録し、課題について仮説を立てたり、結論を導き出したりするのも、ノートの重要な機能です。
つまり、書きながら考え、自分の意見や主張を見つけ出す作業がノートで行なわれるのです。
作文や物語の感想文を書くのも、思考を深める作業です。
三つ目が「練習」です。計算練習、漢字の書き取りなどのために、ノートはなくてはならないものです。小学生のうちは、何度もくり返すことで学習効果が高まるものがたくさんあります。
掛け算や割り算の筆算にしても、頭でわかっているだけでは不十分で、くり返し練習して体で覚えることが大切なのです。
◆3つの機能をフル活用して学んでいく
小学生のノートには、これら3つの機能があります。そして、この3つの機能が混在しています。ノート全体に混在していますし、1つのページにも混在しています。
たとえば、最初は記録のために書き始めたものが、途中から思考のために変わることがあります。
社会見学で、商店街の店主に取材をしたとしましょう。
その場でメモできなかったことを、教室に戻って記録します。そのとき、「もっとあんなことを聞けばよかった」「あれも知りたかった」と、疑問が出てきたりします。
好奇心が刺激されると、子どもの頭には次々と質問が浮かび、それについて自分で考えるようになります。
「他のお店の人も、地元産が一番売れ行きがいいんだよって言ってたなぁ」と思い出し、流通のしくみについて考え始めたりします。
授業で習った、地元の名産品の具体的な産地を店主から聞き、興味をもって調べ、書き足すこともあるでしょう。
このように、書きながら記録と思考が入れ替わるのです。また、練習から思考へ変わることもあるでしょう。
「記録」「思考」「練習」は、はっきりと3つに分かれて存在しているものではなく、ひじょうに流動的なものだということを、まずは頭に入れておいてください。