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中国、敗れたり
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政治・社会
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第四章 アメリカは資源戦争で中国に勝つ

『中国、敗れたり』
[著]日高義樹 [発行]PHP研究所


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第一部 中国は資源が足りない


 中国は小平が経済改革を始めて以来ほぼ三十年間、驚異的な経済拡大を続けてきた。ところが最近の中国政府の発表によると、二〇一四年第1四半期の経済の拡大はGDP比七・四パーセント、第2四半期は七・五パーセントに過ぎなかった。九月十七日、中国政府は中央銀行を通じて、八一〇億ドルの緊急融資を一三の市中銀行に行うと発表した。

 中国では、通常の銀行ではなく、非公式な闇金融機関、いわゆるシャドーバンクと呼ばれる金融機関が資金不足で行き詰まり、大きな問題になっている。中国経済が、このシャドーバンク問題の影響を受けて伸び悩んでいるため、対策として緊急融資が行われることになった。

 八一〇億ドルの緊急融資は、公定歩合を〇・五パーセント引き下げたのと同じ金融効果をもたらす。中国政府はこれまで金利の引き下げを行わないと主張してきた。現在の公定歩合のもとで経済の拡大を七・五パーセント以上にすると公式に述べてきたが、今度の中国政府の措置はこういった中国の公式な政策が破綻したことを示している。

 中国は、実質的に金融を緩和し金利を下げなければ、七・五パーセントの拡大を維持できなくなっている。七・五パーセントというのは政治的に見ると最低限の拡大で、それ以下の数字であれば、人口比率から見てマイナス成長ということになる。二〇一四年初め、アメリカ財務省の専門家や中国専門家は中国経済の拡大が七・五パーセント以下に落ち込み、政治的な危機がやってくるのではないかと予測していたが、事実その通りになりつつある。

 歴史学者にして戦略家、いまでは中国専門家になったヘンリー・キッシンジャー博士は、これまで中国の経済政策を高く評価し、中国経済の将来についても楽観していた。ハドソン研究所の経済専門家も私にこう言っていた。
「中国が世界的景気後退のなかで、依然として経済を拡大しているのは、人民元安を維持しながら輸出を増やしつづけているからだ」

 中国は政治的にうまく立ち回って人民元を安く保ち、輸出を増やしつづけることによって、経済拡大を達成してきたが、そのやり方を続けることが難しくなってきている。
「中国政府は賢く対応するから急激な景気後退やバブルの崩壊といったような事態を避けるだろう」

 キッシンジャー博士がこう言ったことがある。地方における住宅の急速な値下がりやシャドーバンクの不正な貸し出しなどが、中国の経済活動全体に影を投げかけていることは間違いないが、中国政府はアメリカ政府の連邦債を巧妙に買い受け、ドルの下落によって人民元が高くなるのを防いでいる。

 だがこうした状況は表面的なもので、中国は食糧や資源の不足に悩まされている。とくに資源の不足は今後、中国経済に重大な影響を与える危険がある。つまり中国政府はリーマン・ブラザーズの倒産に端を発したアメリカの経済危機という打撃をうまくすり抜けたものの、今後は資源不足という深刻な危機に直面しようとしている。

 中国経済はもともと資源の輸入によって成り立ってきた。中国は広大な国土と豊かな労働力という有利な経済的条件を持っているが、その一方で、国内で採れる資源が限られているという欠点に悩まされてきた。

 中国の地図を見れば明らかであるが、海岸線から一〇〇〇キロも入れば土壌や天候に恵まれない砂漠地帯につながっていく。膨大な地域を占めるゴビ砂漠やトルファン盆地、さらにはタクラマカン砂漠があり、その南はチベット高原である。こういった砂漠や土漠地帯が農業に適していないのは当然のことで、かつて満州と呼ばれた東北部にも、西方に連なるシンアンリン山系や内モンゴルなど農業には適さない地域が広がっている。だが毛沢東は共産党革命を進める一方で、農民を動員して食糧の増産に成功した。

 中国の共産党革命の成功は、毛沢東の農業政策に大きくあずかっている。この毛沢東の成功と対照的だったのがソビエトのスターリンである。スターリンはソビエトの農業を盛んにすることができず、結果的に産業政策に失敗した。この失敗がやがて冷戦の敗北につながっていった。

 歴史的な話はさておくとして、これまでのところ、うまく進められてきた中国の経済開発も今後は資源不足によって頓挫する可能性が強くなっている。この点についてアメリカの専門家はあまり強く指摘していないが、常識的に見て中国の、海外からの食糧や資源に対する依存度は異常だと言わざるをえない。いくつかの例を挙げてみよう。

 中国の一三億とも一四億とも言われる国民は、世界の大豆の六〇パーセントを消費しているが、その八〇パーセントを輸入に頼っている。小麦など穀物の輸入では世界第六位で、そのほとんどをアメリカ、カナダ、アルゼンチンに依存している。

 食糧だけでなく、天然資源もその多くを輸入に頼っている。中国は二〇一三年、一日六二〇万バレルの原油を輸入している。中国の原油の消費量は一日一〇〇〇万バレルあまりであるから、六〇パーセント以上を輸入していることになる。

 工業製品の重要な材料になる銅については世界の総生産の二五パーセントを消費しているが、そのほとんどを輸入に頼っている。中国は世界のアルミニウムの生産量の二〇パーセントを消費しているが、一〇〇パーセントが輸入である。

 石炭も世界の生産量の一七パーセントを輸入し、消費している。ニッケル鉱は世界の生産量の三四パーセント、鉄鉱石や鉄は、世界の生産量の三〇パーセントを消費している。また西暦二〇〇〇年から二〇一二年までの十二年間に、世界のボーキサイトのほとんどを中国が輸入している。

 中国の外国からの資源に対する依存度は今後さらに高くなると見られている。アメリカ政府の推定によると中国は、二〇三〇年には原油の一日の国内消費量のうち、実に七五パーセントを輸入に頼ることになる。天然ガスについても三〇パーセントを輸入に頼らなければならなくなってくる。

 現在、中国の原油事情はきわめて窮屈な状態になっている。備蓄量はわずか五十日分に過ぎない。中国政府はこれを倍に近い九十日に増やそうとしているが、なかなかうまくいかない。

 中国は安い製品を大量に製造し、貿易によって莫大な稼ぎを上げていると考えられているが、食糧をはじめ、あらゆる資源を外国に頼っているため、その稼ぎを輸入に使わなければならない立場に置かれている。

 世界ではこれまでも時おり資源不足に注目が集まり、石油危機や食糧危機が叫ばれてきたが、中国ではこれから深刻な資源問題に悩まされることになる。その理由は世界的に資源が窮屈になり、商品の貿易よりも資源の貿易に政治的な関心が集まるようになっているからである。

 アメリカは中国の倍、一日二〇〇〇万バレルの石油を消費している。「アメリカ人は石油をばら撒いて生きている」と言われてきたが、二〇〇〇万バレルの消費に対してアメリカは、国内の資源が豊かである。

 アメリカはこれまで中国と同じ一日六〇〇万バレルを輸入してきた。だが消費の比率からすると中国の半分、三〇パーセントに過ぎない。そのうえアメリカでは、シェールオイルやシェールガスなどの天然ガスの増産が急速に進んでいる。シェールオイルは一日三〇〇万バレルを掘り出すようになっている。

 アメリカの原油の輸入は三〇〇万バレルに低下したが、それだけでなくアメリカではこれまで人々が見向きもせず、使ってこなかった天然ガスがエネルギー源として急速に使われるようになってきている。
「地面の下が砂地のフロリダを除いて、アメリカは地面のどこを掘っても天然ガスが出てくる。
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