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(2021/11/26 追記)

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中国、敗れたり
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政治・社会
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第六章 アジアの新秩序を日米でつくる

『中国、敗れたり』
[著]日高義樹 [発行]PHP研究所


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第一部 日本の核装備をアメリカと話し合う


 私がこの本の中で述べてきたように、世界はこれから混乱が続く。中国は海軍力を増強し、日本を脅かしてはいるものの、技術的に遅れている。短いあいだにアジアで圧倒的な力を持つことは難しい。

 キッシンジャー博士が最新の著書『ワールド・オーダー』で指摘しているように、世界には複数の地域大国が並び立つ時代になる。ヨーロッパ式の秩序の時代は終わりを告げ、中東はイスラム勢力の目覚ましい台頭で、不安定が続く。しかもイランが核兵器を持つことは避けられないと見られる。アメリカとイランの軍事的な力関係は当分、曖昧なまま続くと思われる。
『ワールド・オーダー』の中でキッシンジャー博士が指摘しているように、アメリカの超大国としての力はますます不明確なものになっていくと思われる。こうした世界の新しい情勢を見ると、世界はまさに群雄割拠の時代に入ろうとしている。

 こうした混乱した状況のなかで不可解なのは、アメリカが中国の力に怯えすぎていることである。私がテレビの番組でインタビューしたり、著作の日本での出版を世話したりなどして、長い付き合いのキッシンジャー博士は、世界最高の国際学者で歴史家だが、中国の力を過大評価しているように思われる。

 キッシンジャー博士は現在の中国の共産党政権を歴史上の王朝になぞらえ、現在の中国の指導者を中国の皇帝たちと比べている。私はキッシンジャー博士に異論を唱えるわけではないが、幾多の王朝は栄え、滅びてきた。ローマ帝国、スペイン帝国、オーストリア=ハンガリー帝国やトルコといった大国が興隆し、世界を支配し、そして滅びた。そのローマやスペイン、オーストリア=ハンガリー帝国、トルコが再び歴史を動かすことになるとは考えられない。

 なぜ、「中国だけが昔の王朝と同じ権威と力を持つ」とキッシンジャー博士はじめアメリカの政治家は考えているのだろうか。アメリカの人々は巨大な物や長い歴史に憧れ、恐れるが、中国は確かにアメリカから見ればとてつもなく大きく、長い歴史を有している。そうした恐れや畏敬の念で中国を見ているのだろう。

 現実には、これまで私が指摘してきたように、中国は特別の国ではない。かつて栄えた王朝のように世界を支配する能力には欠けている。その最も明確な証拠は、エネルギー資源の不足で、現在の経済拡大を続けられない兆候が出ていることだ。

 キッシンジャー博士は、中国に対する恐れを含め、「アメリカの超大国としての立場が明確でないことが、世界の混乱を助長している」と主張しているが、確かに国際社会の現実を見ると、アメリカの核兵器が決定的な力ではなくなっている。我々はこの現実を直視する必要がある。

 一九四五年以来、アメリカはその強大な核兵器の力によって世界を支配してきた。核爆弾を二発日本に投下し、その力を世界中に示すことによって、世界で最も強い国として地球に君臨してきた。そうしたアメリカの核の力によって統制されてきた地球上の力関係が混乱しているのは、アメリカの核に対する絶対的な信頼が揺らいでしまった結果である。

 ロシアのプーチン大統領は核兵器を抱えて、独立国家ウクライナを侵略した。ソビエト連邦崩壊後、核兵器をロシアに渡してしまったウクライナから、プーチンは易々とクリミア半島を奪い取り、世界の国々にロシアが依然として膨大な数の核兵器を持っていることを思い起こさせた。

 中国は技術的に見て優れているとは言えない海軍力や空軍力で、アジアにおける独占的な立場を築こうとしているが、その軍事力の実態は莫大な数の核爆弾と、それを搭載して他国を攻撃することのできる長距離および中距離ミサイルである。

 インドが中国と対立し、毅然とした姿勢をとることができるのは、核兵器を持っているからである。中東で周囲をすべて敵国に囲まれながら小国イスラエルが独立を保っているのも、核兵器を保有しているからだ。

 世界は、複数の国家が対立する新たな群雄割拠の時代に入ろうとしているが、その原因は、アメリカの核の独占体制が崩れ、多くの国々が核兵器を持つようになったことである。

 ここまでやや前置きが長くなったが、こうした新しい核の時代とも言える状況のなかで、日本はこれまでのように完全にアメリカに頼る姿勢を改め、核兵器体制を検討しなくてはならなくなっている。

 日本が核兵器の保有を実際に検討する前に必要なのは、アメリカ政府と徹底的に話し合うことである。これまで日本はアメリカの核兵器のもとで平和と繁栄を享受してきた。だが日本は、この平和と繁栄をアメリカの国家的な利害、損得に任せて得ている。つまりアメリカの意向で、いつ失うかもしれない平和と繁栄なのである。

 日本は第二次大戦後、憲法の前文にあるように「国際社会の善意に基づいて」国家を運営することを決め、日本の安全をアメリカの核戦力を中心とする軍事力に委ねた。だが国際社会は無法なジャングルで、善意に基づいて存続できるほど甘い場所ではない。

 アメリカが第二次大戦で軍事的に屈服させた日本に対し、独自の核戦力に基づく安全と、その結果の繁栄を与えたのは、それがアメリカにとって得になったからである。

 アメリカはソビエトや中国と比べれば、人道的な民主主義国家で、平和を理念としていることは紛れもない。アメリカは莫大な経費をかけ、努力してつくりあげた核戦力によって日本を守ってきたが、国際常識から見ても、善意だけでなかったのは当然である。

 第二次大戦後、アメリカが日本に平和条約と憲法を与えた後、独立させたときには、中国や朝鮮半島を日本が再び侵略するのを防ぐ必要があった。そしてソビエトおよび共産中国との冷戦が激化するなかでは、日本人の優れた経済力を共産勢力側に取られてはならないという意志が働いた。

 アメリカは、アメリカのために日本の存在が大切であった、得になったから、日本を守ってきた。そして現在、中国経済が拡大するとともにオバマ大統領は、日本よりも中国が大切であるという考えのもとに外交政策を進めている。

 アメリカがこの先ずっとオバマ大統領の政策を続けるか否かは、明らかではない。だが中国が日本以上の経済大国になり、アメリカの役に立つという情勢のもとで、これまでのように核による絶対的な力で日本を守りつづけるかどうかは不明である。

 世界の国々はアメリカの核の力に対する絶対的な信頼を失い、自らを守るために核兵器を持つようになった。そうした状況のもとで、核兵器を持つ中国や北朝鮮に対する抑止力として、日本が核兵器を持つことは当然の成り行きである。だがその前に必要なのは、核装備についてアメリカともう一度話し合うことである。

 アメリカがいわば善意の形で日本に核の傘を提供するという事態がなくなろうとしているとき、アメリカが国家戦略として核の力で日本を守りつづける意図があるかどうかを明確にする必要がある。

 私は長いあいだアメリカの政治を見てきているが、アメリカの指導者は日本が核装備をするのは、現在の国際情勢のなかでは当然であると考えはじめている。ヘンリー・キッシンジャー元国務長官や、ジェームス・シュレジンジャー元国防長官、ジョージ・ブッシュ四十一代大統領は、私とのインタビューのなかで核兵器を日本が持つかどうかは日本人が決めることであり、アメリカが口を挟む問題ではないと明確に述べている。

 多くの国が核兵器を持ちはじめているなかで、アメリカがどこまで日本に核の傘を提供しつづけるのかを話し合う時期に来ている。その話し合いのなかでは、これまでのように、アメリカが善意に基づいて日本を守るのではなく、核の傘による安全を日本に保障するという条約を、新しくつくる意図があるかどうか確認しなければならない。
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