読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン
0
-2
kiji
0
0
1235101
0
がんばることに疲れてしまったとき読む本
2
0
0
0
0
0
0
生き方・教養
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
第3章 「上手ながんばり方」を身につける

『がんばることに疲れてしまったとき読む本』
[著]下園壮太 [発行]PHP研究所


読了目安時間:1時間35分
この記事が役に立った
0
| |
文字サイズ


「自己嫌悪」と「休まない(休めない)」は、がんばり癖による苦しさの主要部分です。

 しかしそれ以外にも、がんばり癖はさまざまな「生きにくさ」を持っています。

 これらは、ただ人生を難しくしているだけでなく、第2章で紹介したように過労に結びつきやすい要素でもあります。

 本章では、そんながんばり屋さんの「生きにくさ」をいくつか取り上げ、そのメカニズムと、私なりのアドバイスを紹介したいと思います。


 本章で紹介する「生きにくさ」は、端的に言うとがんばり屋さんの持つ、思考や行動パターンのことです。

 その思考や行動パターンは、これまでのがんばり屋さんを支えてきた実績もあります。

 そうなると、その思考や行動パターンは、単に本を読んだり、誰かにアドバイスされたりしただけで、すぐに変わるようなものではなく、いわゆる「こうあるべき」という信念(価値観)にまでなっていることがあります。

 第1章でも触れましたが、そのような無意識レベルで確定している思考・行動のパターンを変えていくには、単なる理解だけでなく、日常生活での行動(経験)を積むことが必要です。

 7〜3バランスの目標を立て、7:3の行動評価で自分を励ましながら実生活で試してみます。それも最低四十回、四百回は続ける。つまり、その回数は失敗することも覚悟するのです。


 しかし、失敗するのは、誰でも嫌です。そこでぜひ思い出してほしいのが、第2章で紹介した疲労が深まっていくメカニズムです。

 あなたはすぐにでも、気楽に生きられる思考や行動パターンを身につけたいと思うでしょうが、もしあなたが疲労の第二段階や第三段階にいるのなら、それは、風邪をひいている人が、体力増強のためにジョギングするようなものです。うまくいくはずがない。すると自信を得るための試みが、逆に自信を低下させる経験になってしまうのです。

 がんばり屋さんは、努力とかトレーニングが大好きです。すぐに価値観を変えるトレーニングに飛びつくかもしれませんが、疲れているときは、トレーニングが逆効果になる場合があることに十分注意してください。

短期目標依存のスイッチを切ってみる


本当にやりたかった方向を見失っているCさんのケース


 Cさんはがんばり屋さんです。アパレル会社で働くバリバリのキャリアウーマン(三十二歳)です。

 洋服のデザインやファッションイベントのディレクターをやりたくて、この会社に入社しました。新人研修でも積極的に発言し、多くの部署に顔を出し、社内に仲間もたくさん作りました。

 彼女のそんな積極性や頭の良さはすぐに上司の目にとまり、彼女は会社の企画部に配置されたのです。イベントを企画できると思って最初は喜んだのですが、実際は、経営に関わる業務が主体です。毎日、法律と書類と、会議に追われる日々……。

 ただ、何でも一生懸命に取り組む彼女は、子会社の統合などの重要な案件に関わらせてもらうようになりました。長期に渡り調整してきた事業が成立し、社長などから直接ほめてもらうと、とてもうれしく感じるのも事実です。

 毎日の仕事を一生懸命やっていると、あっという間に一年が経っています。でも、そうやって、入社して十年。三十二歳の今ふと振り返ると、このままでいいのかな……という疑問というか不安を感じてしまうのです。

 仕事も楽しい、人間関係も良好。同期の男性と比べてもトップクラスのポストにもついています。

 一方、結婚したいという気持ちはあるのに、実際に恋愛する時間も余裕もない。将来これをやりたいと思っていた目標の方向に進んでいるかというと、決してそうでもない。

 日々は充実しているのに、何かむなしい。このまま年をとっていって本当に幸せになれるかという不安もある。でも、人生ってそんなものなのかな……とそれ以上考えるのをやめて、毎日の仕事に取り組んでいます。


短期目標依存型は疲れるし、方向性を見誤りやすい


 がんばり屋さんに、多く見られる一つの癖があります。それは短期目標依存型であるということです。目の前の目標に集中してがんばる癖です。

 子供の頃は、大人が課題をコントロールしてくれました。学校の先生がちゃんとカリキュラムに従って一つずつ課題を示してくれるので、集中して、その一つの課題をこなせばよかったのです。

 短期目標に集中していれば、成果も出やすくなります。

 疲労の第二段階で自信がなくなってきたときも、目の前の仕事に集中して、それをこなすことで自信を補強することができます。

 また、目の前の仕事をやると、多くの人に評価され、感謝されます。仲間と一緒にやっている、仲間の一員であるという安心感を得られるのです。これまた自信を高めるばかりでなく、社会的な責任を果たしているという実感も得られやすいのです。

 さらに目の前の仕事は通常切羽詰まっている案件が多いので、集中力が自然に高まります。ということは、不安が入り込む隙間も少なくなるのです。

 このように短期目標は、私たちに多くの満足を与えてくれます。
「競走馬の鼻の先にニンジンをぶら下げる」という比喩がありますが、たしかに私たちは短期目標で高いパフォーマンスをあげ、社会からの評価を得ることができるのです。


 ところが、短期目標には二つの欠点があるのです。

 一つ目は、長期的な目標がおろそかになるということです。

 例えば、自分のキャリアの成長とか、家族との交流や結婚・出産などの私生活の充実に関する目標は、とても大切な目標なのですが、短期目標で日々を過ごしているうちに、どうしても忘れ去られてしまう傾向があります。

 すると、Cさんのように「忙しくて充実しているけれど、どうも自分の描いている人生を進んでいない」という不全感に陥りがちです。

 二つ目の欠点は、疲労の悪化に気がつきにくいということです。先に紹介した仕事へのしがみつきに陥りやすいのです。疲れているのに、仕事の短期的な目標の充実感でそれを(まぎ)らわせてしまう。しかしながら結果的にそれは疲労をためることになって、ジリ貧で自分のパフォーマンスが低下してしまうのです。

 疲労への対処は先に触れたので、ここでは一つ目の欠点「長期目標を見失いがち」への対処法を紹介しましょう。

「今日の目標」で長期目標を明確にイメージする

「今日の目標」というのは、朝、仕事前に、長期目標に向けて、今日何をするかをイメージするという方法です。

 短期目標に目を奪われがちながんばり屋さんのあなたは、つい長期目標をおろそかにしがちです。でも、目の前に長期目標をデカデカと書いてある紙が貼ってあるとしたらどうでしょう。嫌でも長期目標を意識する機会が増えるので、その方向の行動をとる確率が高くなります。昔から、受験生がよくやる手法ですよね。

 基本的にはそれと同じことをすればいいのです。

 毎朝、長期目標をイメージします。それも、できるだけリアルに。


 初心者には、まず次の五つの長期目標を意識してもらうことを勧めています。
●一つ目は、仕事上の長期目標です。

 今日はこれをやり遂げるぞ、とある仕事をイメージするのです。

 やりたい、やらなければと思う作業があったのに、ついメールの返信や、上司に言われたことをやっているうちに、結局手が付けられなかった、などという経験があるはずです。冷静に優先順位を考えて、大切なことをしっかりこなせるようにしたいものです。

 やるべき仕事を決めたら、できるだけ具体的にそれを行っているときの映像を思い浮かべるように練習してみてください。自分から見える風景(自分目線)と、自分が映り込んでいる映像(他人目線)の二つをイメージします。この二つの映像を自分の脳に見せることによって、より鮮明に意識に訴えることができるのです。
●二つ目は、健康に関することです。

 健康は大切なことだと誰もが思っているのに、どうしても後回しになりがちです。

 例えば、今日はランニングをするとか、今日の昼食は健康的な和食にするぞ、今日は血圧を測る、定期健康診断に行くなどとイメージしてみてください。
●三つ目は、成長に関することです。

 成長とは自分の夢の追求やキャリアアップだと考えてみてください。

 例えば資格のための勉強であるとか、人脈作りだとか、英語の勉強などでもいいでしょう。これも自分目線と他人目線の二つで鮮明なイメージを作ってみてください。
●四つ目は、人間関係です。

 人間関係は健康と並んでとても重要な要素です。ところが人間関係は面倒くさいので、つい目の前の仕事にかまけて、必要な努力を怠りがちです。

 今日は、例えば両親に電話をするとか、子供の宿題を見てやるとか、恋人にメールをするなど具体的なイメージを作ってください。
●五つ目は、楽しみに関することです。

 私たちは動物なので、ストレスを我慢するばかりでは破綻してしまいます。生活の中に上手に楽しみを加えることで、結果的には良いパフォーマンスを維持できるのです。

 ところががんばり屋さんの多くは、自分に楽しみを与えることを禁じるか、後回しにしてしまいます。今日一日がんばるのですから、自分にも楽しみを与えてあげてください。

 晩酌をする、恋人に電話をする、フィットネスクラブに行って汗を流す、買い物をするなど、これまた具体的なイメージを描きます。


 この五つを思い出しやすくするために、私は手の指に関連させてイメージしています。

 親指はお父さんで仕事、人差し指はお母さんで健康、中指は一番長いので成長、薬指は結婚指輪をはめる指なので人間関係、小指は末っ子で楽しみ、と覚えています。記憶法としての、私個人のステレオタイプなイメージなので、これにこだわる必要はまったくありませんし、ジェンダーハラスメントだなんて突っ込まないでくださいね。

 また、この五つとは別のジャンルで、自分自身の長期目標を持っている方は、どこかの指に置き換えてもいいし、手のひらでイメージしてもいいでしょう。

 毎朝イメージすると、不思議にそのことを日中に思い出す機会が多くなり、結果的に長期目標に向かって、ゆっくりですが、歩んでいけるようになります。

できる人(一番になりたい)のスイッチを切ってみる


いつも一番でないと落ち着かないDさんのケース


 Dさんはがんばり屋さんです。大手保険会社で働く五十歳の女性。

 これまで結婚もせず、ひたすら仕事にがんばってきました。実際彼女は、仕事では業績もあげ、一目(いちもく)置かれる存在です。

 ところが今まで六回ほど転勤してきましたが、どんなに人よりがんばって仕事をしても、思ったように評価してもらえず、そればかりか職場で孤立してしまいます。

 はじめのうちはみんなとうまくやれるのですが、二年目ぐらいになると自分だけ浮いてしまうのです。

 その理由は自分でもうすうす気がついています。

 少しでも自分の立場を脅かす人、例えば仕事ができる人、人気がある人がいると、ついその人の陰口を言ってしまうのです。自分でも悪いと思っているのですが、どうしてもその人の悪いところの情報を集め、それをオーバーに言い触らしてしまいます。だから、彼女の直近の部下は、常に調子を崩すのです。

 周囲も次第にその癖に気がついて、Dさんから距離をとるようになります。するとDさんは、仲間を作ろうと必死になるあまり、悪口を使って親しい人々の仲を壊して、そのどちらかと親しくしようとしてしまうのです。

 そういうことが上司の耳に入ると、上司は彼女に注意しますが、するとDさんは、その上司をターゲットにして、ネガティブキャンペーンをしてしまう。

 結局どの職場でも、いづらくなってしまうというわけです。

 すでに何度も同じことを経験しているので、Dさんは、自分でこのパターンをやめたいと思うのです。しかし、職場でストレスや孤立を感じると、どうしてもイライラが先に立ち、悪口や噂話を言う癖が出てしまうのです。


一番になれない不安から攻撃的になり孤立してしまう


 がんばり屋さんは、心のどこかで負けず嫌いの気持ちを持っていることが多いものです。

 そもそも、負けず嫌いは、日本人にとって矛盾しやすい概念。

 できる、一番になる、完全にやるなど、原始人の心や子供の心は、勝つことを私たちの心にデフォルト(初期設定)として仕組んでいます。だからこそ快感も大きい。

 一方で日本人的には、「自分だけ得をする」のは、和を乱す行為として位置づけられています。一番の快も、露骨に表すと、はしたないとみなされます。

 だからこそ、大人社会では、TPO(時期、場所、場面)に応じた使い分け、つまりバランス感覚が必要になるのです。

「できる」や「一番になる」にこだわる癖が、しがみつきになる典型的なケースを二つほど紹介しましょう。

 一つ目は、「ライバル叩き」、Dさんのようなタイプです。誰かをライバルだ、あるいは自分を正当に評価してくれない人だと見ると、その人をこき下ろします。それも、直接的に行うなら、子供っぽくてまだわかりやすいのですが、大人が行うときは、もっと陰湿で周到になります。

 少しでも相手の悪いところを見つけたら、それを非常に大きく、しかも悪意の解釈をつけて、他人に触れ回るのです。

 しかも、ライバルだけでなく、自分を評価してくれなかった(本来味方である)周囲の人々や、上司に対しても、同じ行動をとってしまうことがあります。

 ここで、注目してほしいのは、その行動の動機です。相手を(おとしい)れるというのが主な目的ではないのです。相手を落とす反動を利用して、自分が浮かび上がる、つまり自分の優位を感じたいために、それを繰り返すのです。

 しかし、そのような会話は、必ずと言っていいほど、相手の耳に入ります。相手のあなたに対する評価は、一気に下がってしまうでしょう。それだけでなく、悪口を聞いた人々も、「この人と付き合うと、いつか私もこのように悪い噂を吹聴されてしまう」と感じ、警戒しながら付き合うようになります。

 すると本人はそのような周囲の雰囲気に孤立感を深め、いっそう不安になり、また、誰かの悪口を言うという悪循環に陥るのです。

 実は、このパターンは、マスコミやインターネットなどでも、よく見かける事象です。人は、すべてを一〇〇パーセント正しく、道徳的に、ルールを完全に守って生きているわけではありません。

 しかし、ある人(有名人なら特に)の小さなミス、不注意な発言をクローズアップし、正義の名目でとことん叩く傾向があります。それを楽しんでいるように見えることもあります。日本人全体が、プライバシーがなくなり、自分で自分の首を絞め始めているのかもしれません。背景には、日本人全体の自信の低下があるのではないかと感じています。

つい「隠れた自慢話、自分話」をしてしまう


 二つ目のパターンは、「隠れた自慢話、自分話」です。

 自分に自信がなくなると、どうしても誰かに、自分がいかに優秀か、いかに配慮しているか、いかにがんばっているかを、訴えたくなります。

 直接言うのは、はしたないので、何らかの問題を解決する悩み相談として、自分が陰でいかにうまくフォローしたかという話を差し込みながら、話すのです。

 あるいは、いつの間にか、話の主題を自分のほうに持ってきてしまう人もいます。「そうだよね。私もさぁ〜」が一つの口癖です。

 自分の話題が中心になるのは、うれしいことです。自分の話に、皆が目を輝かせて聞いてくれると、まさにその場で「一番」を感じます。

 しかし、目を輝かせて聞いてくれているのは、多くの場合、周囲が「大人」だからです。いつも自分のことばかり話したがる人は、次第に避けられるようになります。すると、さびしくなってまた誰かを捕まえます。当然、話すのは自分のこと。するとまたまた避けられるという悪循環です。


 さて、このような「しがみつき」にならないようにするにはどうすればいいでしょうか。

 がんばり屋さんの最初の心の整理は、他のテーマと同じように、一番になりたい気持ちを完全に否定しないということです。それも「あり」。むしろこの気持ちは、これまでのあなたの人生を築きあげてきた貴重なパワーです。

 変えようとしないで、認めたうえで、それをどうコントロールするかを考えます。

 三つの考え方を紹介しましょう。

隙間で一番を目指す


 一番は、どの民族にとっても、魅力的なのです。

 狩猟型の民族では、一匹の獲物を捕るとき、最初に捕まえた人以外は、食べられませんでした。二番では、ダメなのです。一番は、圧倒的な優位を得て、その人の考え次第で、他の人に肉がふるまわれました。いわゆる施しやボランティアという思想です。そのため、強いリーダーが生まれます。

 これに対し、農耕民族である日本人は、それぞれががんばって、村一番になり、さまざまな特技を寄せ集めて、より良い生活を作りあげてきました。

 つまり、全勝のリーダーではなく、部分的な一番で、幸せを感じられる民族なのです。

 現代社会は、競争社会になってきました。狩猟型に近づいているのです。この社会では、自分以外の人はすべて競争相手、つまり「敵」となってしまいます。敵が多ければ、安心して生活できません。日本人は、まだこの社会に十分に慣れていません。だから、苦しいのです。

 例えば、自分の成功を本当に一緒に喜んでくれる人がいないと、たとえ成功しても、うれしさが半減します。
この記事は役に立ちましたか?

役に立った
0
残り:39987文字/本文:47067文字
      この記事を収録している本
      レビューを書くレビューを書く

      今レビューすると30ポイントプレゼント! 今レビューすると15ポイントプレゼント! 犬耳書店で初めてのレビューはさらに30ポイント! ポイント詳細はこちら

      この本の目次