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中華料理進化論
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中国のご当地料理が日本にやってくる

『中華料理進化論』
[著]徐航明 [発行]イースト・プレス


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西安刀削麺と蘭州拉麵


 競争が激しい日本のラーメン業界で差別化が図られる中で、日本のご当地ラーメンの発掘だけではなく、海外からの麺文化を吸収することも重視されている。中国は麺食文化の発祥の地であり、全国に数え切れないほど多様な麺料理がある。1990年代以来、これまで知られていなかった中国のご当地麺類が日本へと伝播され、日本のラーメンビジネスの活性化に貢献している。


 中国北部・山西省のご当地麺料理である刀削麺は、中国で最も有名な麺料理のひとつだ。日本で刀削麺が看板料理として提供され始めたのが1999年前後。2018年5月現在、「食べログ」で「刀削麺」と検索すると全国で189軒、東京に限定すると69軒のお店がヒットする。


 文字通り、刀で削られる麺は通常のラーメンの麺より太く、中心部分が少し厚い。麺自体の食感も重視される日本において、表面がなめらかで、歯ごたえが特徴的な刀削麺は舌触りが新鮮として受け入れられた。また、生地のかたまりを抱え、はね上げるように削り出す独特な麺の作り方を見せる店頭での演出はこれまでの日本のラーメン店では見かけられなかった光景である。


 本場の味を忠実に再現しようとすると、香りの強い香菜などの調味料を多用することが必要となる。在日中国人の客には喜ばれるが日本人の客には馴染みがないため、好みに応じて量が調整されている。


 刀削麺は地域色が強い地方料理なので、実は中国の北京や上海などの大都市ではあまり見かけない。そんな料理が日本で人気を集めているのは日本人のラーメン好きとも無関係ではないだろう。なお、ネーミングに発祥地ではない「西安」を使うのは、日本では西安の知名度が高いこと、西安にもたくさんのご当地麺料理があることが関係しているかもしれない。


 一方、蘭州拉麵は中国・西北部の甘粛省蘭州が発祥の麺料理だ。10種類以上のスパイスと牛骨を煮込んだスパイシーな透明のスープと、生地を手で引っ張って伸ばした柔らかい麺のうえにラー油をかけ、パクチーなどを載せて食べる。「(イー)(チン)(アー)(バイ)(サン)(ホン)(スー)(リュウ)(ウー)(ゥア)」(透明なスープ、真っ白な大根、ラー油の赤色、パクチーの緑色、黄色い艶をおびた麺)といわれる鮮やかな5つの色が蘭州拉麵の特徴だ。日本のラーメンのようなこってり感はない。また、豚肉などが一切使われていないため、ハラル料理としてイスラム教徒の方々にも親しまれている。


 2017年、100年以上の伝統を誇るという老舗店「(マー)()(ルー)」が日本に初上陸を果たした。これまでも蘭州拉麵をメインに提供する店舗が国内に存在しなかったわけではないが、本場でも有名な店舗の進出は初めてのことだ。開店以来、大きな話題を呼んでいる。


 進出した「馬子禄」の日本人オーナーは中国に留学した際に蘭州ラーメンの虜になり、本場蘭州の「馬子禄」に弟子入りすることで腕を磨き、東京での開店にこぎつけたのだという。日本人に本場の味の蘭州ラーメンを食べてもらおうと意気込んでいる。

『ラーメンがなくなる日 新横浜ラーメン博物館館長が語るラーメンの未来』によれば日本のラーメンの発展に大きく寄与した「ご当地ラーメン」なくしてラーメンの進化はあり得ないという。しかし、そのご当地ラーメンも発掘され尽くした感がある。その中で、刀削麺と蘭州拉麵のような中国のご当地麺料理が日本のラーメンに新しい風を吹き込んでいくだろう。


餃子、小籠包、火鍋などのご当地料理専門店


 ラーメン以外にも、中国ご当地料理の味覚を新しく提供する店舗が相次いで登場している。中国の東北地方で有名な「(ロウ)(ベン)餃子」、蒸し餃子の「西安餃子」、天津発の小籠包「(ゴウ)()()」、上海の「(ナン)(ショウ)小籠包」、焼き小龍包(中国各地や香港・台湾などでは「(シェン)(ジェン)(パオ)」、「(シュイ)(ジェン)(パオ)」などと表されている)、台湾の「(ディン)(タイ)(フォン)」などがそれだ。


 中国の人気火鍋専門店「(シャオ)(フェイ)(ヤン)」と「(カイ)(テイ)(ロウ)」など、中国本土の人気店が日本でチェーン展開する例も出てきている。これらのお店では餃子や小籠包といった看板メニューとなる料理だけではなく、特色あるサイドメニューも豊富だ。


 中国四大料理(北京、上海、広東、四川)はすでに日本で知られているが、そこからさらに細かく分類される各地方にフォーカスした“特化型の中国料理店”も日本に続々と上陸している。一例を挙げると、(わい)(よう)料理(上海周辺の料理)の中では日本ではまったく知られていない「()(しゅう)料理」のお店が東京でオープンした。


 湖州は上海の西、杭州の北に位置し、中国の詩人、()(トウ)()も長年暮らした風光明媚な土地だ。あっさりとした味付けで素材の味を活かす調理法が特徴で、海産物での名物料理が多い。

「中国料理」とは多くの地域料理を集約した総称である。ひとくちに中国料理といえど、自然環境や土地柄に応じて調理方法や調味料は違ってくるため、地域料理を理解することこそ中国料理を知ることに繋がる。


 新しいタイプの本格派中国地方料理が日本に根付いていく流れは、今後も拡大していくだろう。また、過去の例から考えれば、これから時間が経つに従ってこれらの中国地方料理が、現在の「中華料理」や「中国料理」に吸収され、新たに現地化されることで新しい料理を生みだしていくはずだ。


 日本に居ながらにして、これまで口にできなかったさまざまな料理を味わえるのは私のような日本に滞在する中国人だけではなく、日本人にとっても喜ばしいことに違いない。


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