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(2021/11/26 追記)

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“異色”創業者の発想
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ルポ・エッセイ
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職人芸から寿司を解放せよ

『“異色”創業者の発想』
[著]田原総一郎 [発行]PHP研究所


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今や売上げが自動車業界を追い抜いた外食産業。トップに立つ“小僧寿し”の驚異的な伸長のナゾを探る


 山木益次 小僧寿し社長



 売上げ、七年間で七十六倍

 わたしは、職業柄、全国、さまざまの町を飛びまわっているが、近頃、どの町でも“小僧寿し”という、寿司屋を目にする。

 どこも小さな店で、店内で客に食べさせるのではなく、いわゆる店頭売り専門である。

 どの店にも、江戸時代風の小僧が、おじぎをしているトレードマークが出ている。

 だから、“小僧寿し”の店がふえているようだ、とは思っていたが、編集部に集めて貰った資料の数字を見て驚いた。

       店舗数    売上額

 七二年    二七店    七億円

 七五年   二五〇店   七三億円

 七六年   六〇〇店  一五一億円

 七七年  一〇〇〇店  二五〇億円

 七八年  一六〇〇店  三七一億円

 七九年  一七六五店  五三一億円
“小僧寿し”の創業は、七二年だから、七年間に、店舗の数にして六十五倍、売上額にして、実に七十六倍という急成長ぶりである。

 こういうときに“驚異的な”という言葉を使うのだろう。

 そして、売上額五百三十一億円とは、いかなる数字か、といえば、日本最大の規模を誇り、常に、第一位の外食企業として君臨してきた日本食堂を、九十八億円も差をつけて抜いているのである。

 つまり、いまや、“小僧寿し”とは、日本で最大の外食企業なのだ。
“小僧寿し”の会社案内に、「経営理念」として、次のような言葉が記してある。
「小僧寿しは、『お寿しを通じて、お客様に満足を売る』ことを目的としております。『満足』を売ることによって利益を得ることを『商い』にしているのであります。

 もし『満足』を売ることができなかったら、利益を得てはいけないことになっており、『満足』を売れるようになるため、小僧の修業をしているのが私たちです」

 だが、この言葉は、わたしには、どうも、すんなりとは納得できなかった。もっとはっきりいえば、反発を感じたのである。

 わたしは、職業柄、というべきか、立派すぎる理念に出会うと、つい、その裏側にどんな思惑が潜んでいるのか、と疑ってしまう。われながら、いやらしいとは思うが仕方がない。

 だが、“小僧寿し”の理念に反発を覚えたのはこうした習性のため、だけではない。
“小僧寿し”とは、いわゆるフランチャイズ・システムを採っており、全国に千七百六十五もある店舗の殆どは、実は、“小僧寿し”の直営店ではなく、本部に、金五十万円也と、毎月、売上額の五パーセントをロイヤリティーとして支払うことで、“小僧寿し”の看板を掲げているのである。

 フランチャイズ・システム。これが、わたしに反発を抱かせた最大の理由なのだ。

 私ごとになるが、わたしの父親が、実は、この、フランチャイズ・システムとやらで、幾度も苦い体験をしているのである。

 プラスチックの容器を、ある地域に売る権利を取るために、親戚から、金をかき集めたことがあった。

 本部からやってきた指導員の話では、権利金や、容器を売るための、いってみれば小道具の購入費などは、二〜三カ月で取り戻せる、ということだったが、五カ月後には、出費が取り戻せるどころか、父親は、プラスチックの容器の山を抱えて、身動きがとれなくなってしまったのである。

 父親は二年前に死んだが、いまでも、田舎の家には、先払いのかたちで買わされたプラスチックの容器が、おびただしくある。

 何やら、有難そうな解説づきの飲料のフランチャイジー(店舗)になったこともあった。

 東京の本部が、コンピューター・システムによる、マニュアル(手引き)をくれるので、どんな素人、どんなに商売の下手な人間でも、いやおうなく、売れる、というのが、うたい文句だった。

 だが、父親は、「どんな素人、どんなに商売の下手な人間」以下だったのか、やはり、五カ月ばかりで、借金だけを残して、ダウンした。

 だから、フランチャイズ・システムと聞くと、条件反射のように、うさんくさく思ってしまい、内実のいかんにかかわらず、反発を覚えてしまうのである。

 もう一つ、記しておかねばならない。

 父親がひっかかったのは、いずれの場合も、ただ、金になりそうだ、と判断したからではなく、本部からの説明書なるものに、立派な経営理念が記されており、どの経営者も、さだめし、すばらしい、高潔な人物だろうと思えた、少なくとも、父親には、そう思えたからなのである。
「社会に奉仕する」「金を儲けるために商品を売るのではなく、お客様のニーズにこたえて、お客様に喜んでいただくための商品を売る」「ニーズとは、あるものではなく、つくるべきものである」

 こうした、いかにも立派そうな理念を掲げた、インチキ企業と“小僧寿し”とは、いったい、ちがうのか、ちがわないのか。ちがうとすれば、どこが、どうちがうのか。


 寿司をつくらない“小僧寿し”本社

 内容を、全く知らない人間にも、少なくとも、一つだけは差異がわかる。
“小僧寿し”のフランチャイジーが、全国に、千七百以上もあること。しかも、七二年以後、七年間、恐るべき勢いでふえつづけてきたことだ。

 わたしの父親は、いずれの場合も、六カ月以内でダウンした。少なくとも、一年間やってみれば、その商売の可能性があるか、ないかとの見極めはつく。

 だから、インチキ商売の場合、半年や一年間で、どっと、フランチャイジーをふやし、一時的に大金を得ることは可能だろうが、長つづきはしない。逆にいえば、長つづきしている、年とともに、フランチャイジーの店舗がふえつづけている、ということは、わたしの父親が幾度もひっかかった、フランチャイズ・システムとは、どこかが違うということになる。

 はやい話が、わたしの父親がひっかかったフランチャイズ・システムの企業で、現存しているものは一つもない。
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