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暗号に敗れた日本
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歴史
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第二章 日本外交暗号と日本海軍暗号の被解読

『暗号に敗れた日本』
[著]原勝洋 [著] 北村新三 [発行]PHP研究所


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 ここでは開戦前からの日本の外交暗号の代表である紫暗号(パープル)と海軍暗号の代表であるD暗号について紹介する。


二・一 機械式暗号機の種類と変遷



 日本海軍最初の暗号機は、築地海軍造兵廠内の電気研究所で製作された。一九二七(昭和二)年、田邊一雄海軍技師・柿本権一郎海軍少佐(後に少将)を主務担当とする電機研究部は暗号機の試製研究を始め、翌年二月、和文タイプライターの試製訓令に接して同年三月に「欧文タイプライター式暗号機」(第一回試製品)を完成させた。暗号機の用途は、艦船用として原文を暗号文または暗号文を原文に作成・翻訳を行いかつ双方の印字を行うもので、機構、暗号内容および性能の機密保持を確保するものであった。


 本暗号機の要目は、欧文タイプライターの機構を使用して原文を打つごとに電気的回路を経て機械的複雑な組み合わせ変更を自動的に行うもので、その原動力は発条(バネ、ぜんまい)を用いていた。


 一九二九(昭和四)年度に完成した暗号作成および翻訳を自動的に行う装置に関する講習(六月二〇日「欧文タイプライター式暗号機」試製研究報告・田邊一雄技師著)が海軍造兵廠で行われ、一九三一(昭和六年)五月、第二艦隊において暗号機五台を使用した。七月三日午前一〇時、海軍省第一会議室で「試製暗号機械」現物に関する説明が行われ、服部正計大佐(同時送受無線電話装置の特許を持つ)が来訪、柿本少佐が原理、田邊技師が機構および取り扱い法、伊藤利三郎中佐が実用的価値に関し担当した。聴講者は高等官以上であった。その後、通信学校に練習用として保転された。


 この経験により同一原理をもって、主務者田邊一雄技師・柿本権一郎海軍少佐・鈴木恵吉技手は、昭和五年五月、機械的故障の多い原動力発条式を全部電磁式に、その他部分的に大改良を施し上段下段各単独に変化する「試製電気式暗号機」(欧文タイプライター式暗号機の改良)を完成させ、九台製造した。これは、二年後に制定される九一式印字機の源となるものであった。


 一〇月二五日「欧文タイプライター式暗号機・改良型試製研究報告」が田邊一雄技師と鈴木恵吉技手により試作された。本暗号機は至急製作され、一九三〇(昭和五)年のロンドン海軍軍縮会議において海軍省、陸軍省そして外務省の重要通信に使用され、暗号通信上、多大な便宜を得ることとなった。一九三四(昭和九)年の公文備考「本土建築巻一八」によれば海軍省用三二台、陸軍省用二台、外務省用一二台と記録された。同年七月には、邦文タイプライター応用暗号機で、一字打つごとに位置を変更する構造である原動力が発条を用いた「暗号構成機」(昭和六年一月秘密特許第89855号)も完成させた。


 一九三一(昭和六)年九月、主務者田邊一雄技師・鈴木恵吉技手による暗号機は引き続き改良され、外務省用と陸軍省から委託、海軍の注文により「羅馬(ローマ)字式暗号機」(欧文タイプライター式暗号機第二改良)が計画され、総計二四組を製造してジュネーブ軍縮会議で大いに重用された。本暗号機は、試製電気式暗号機の安全装置をとくに改良、これをローマ字式としたものであった。


 一九三二(昭和七)年三月一七日、田邊一雄技師により「羅馬字暗号機研究報告」が作成された。六月一五日、軍令部田部明・田邊一雄発明の「活字選択式暗号装置」(第96260号)が特許を得た。同年七月四日「九一式印字機型実験報告書」が田邊技師・鈴木技手により作成された。逐次改良研究が続けられた暗号機は、だいたい一段落がついたところで三種類の九一式印字機型、型、型として制定された。米軍無線諜報文書32‐Aには一九三二年の暗号機をJN111「IKA Machine Cipher」と記録している。


 公文備考によれば昭和七年度に海軍省五〇台、外務省一台、昭和八年度に海軍省一三八台、外務省二五台が製造され、昭和九年度には海軍省四二台を、外務省が三〇台前後を製造したと記録されている。米軍記録には、JN141「M‐1 Machine Cipher」と記録されている。


 また、「陸機密大日記」(昭和九年五月)には、ワシントン一般軍縮会議用として製作された暗号機二二台は陸軍二台、海軍八台、外務省一二台にそれぞれ配分されたと記録がある。陸軍側は、軍縮会議に使用する暗号機械六台の製作を依頼したが、海軍省用一〇台と外務省用一二台をすでに製作中のため、製作能力の理由でこれらから二台融通するとされた。しかし、二台では不足として外務省用一二台中の一台(外務省特別番号TYPE・A 9)だけを軍縮会議継続中に外在ワシントン陸軍で使用した。本暗号機は、返還の際にはフランス大使館で保管する予定とされた。


 陸軍技術本部第二部長は、「電気式特種計算機」の製造を三菱造船研究所長に依頼した。陸軍工兵大尉倉橋四郎と三菱造船の技師松本英一の発明による乱律式暗号印字装置、電気式暗号印字装置、暗号印字機の電気回路保安装置、複群式暗号印字装置の特許が陸軍大臣に譲渡された。日本の暗号機:昭和三年欧文タイプライター式暗号機(暗号作成および翻訳を自動的に行う装置)第一回試製品。

 暗号構成機、欧文タイプライター応用暗号機。日本の暗号機は、一九二九(昭和四)年に海軍少佐柿本権一郎(後に海軍少将)、海軍技師田邊一雄と鈴木恵吉技手によって完成された。

 ジュネーブ軍縮会議には、九一式印字機改良暗号機(欧文タイプライター式暗号機の改名)。米側呼称レッド暗号機陸上用(一型)二二台、艦船用(二型)五台、海外用一般用(三型)八台。昭和六年度海軍用三二台、外務省用一二台、陸軍用二台、昭和七年度海軍用五〇台、外務省用一台、陸軍用零台、昭和八年度海軍用一三八台、外務省用二五台、陸軍用零台、昭和九年度海軍用四二台、外務省用未定、陸軍用未定(注:五九公文備考「本土建築巻一八」)、九一式印字機=欧文タイプライター式暗号機第二回改良。

二・二 九七式欧文印字機とパープル暗号



 わが国における代表的な換字(かえじ)式の機械暗号機は九七式と呼ばれるもので、外務省用の暗号機B型と海軍の一型、二型、三型が知られている。ただ、既存の資料の記述では、名称や特性についての混乱もあるので、ここではそれを整理し、とくに暗号機B型を取り上げて、暗号の技法、その解読について説明する。この暗号は、一九四一年一二月の日米開戦に至るまでの日米交渉に際し、外務省とワシントン日本大使館の間、あるいは戦中のドイツ大使館との通信に使われたが、それは米国側にほとんど解読されていた。

外務省用暗号機B型の概要

 これは海軍技術研究所の田邉一雄技師らが開発したものである(文献K‐1、N‐1、Y‐1)。

 外務省用暗号機B型ではアルファベットの二六文字を換字する時、六文字(母音組)と二〇文字(子音組)に分けた。この暗号機はワシントン、ベルリン、ローマなどの大使館に配置された。現在、暗号機の残存は確認されていないが、戦中にそれを実見した加藤正隆による概観図が残されている。それによると機械は卓上の打鍵部、印字部、接続板、別コンソールの変更輪窓、調定部、電源部からなり、相当の大型である。また、ドイツ敗戦時にベルリンの日本大使館の廃墟から回収されたといわれているロータリースイッチ部分が、米国立暗号博物館に展示されている(文献H‐1の口絵)。

 米陸軍SISのフリードマン、ロウレットのグループにより、この機械による暗号は「パープル(紫)」と命名され、日米開戦前の一九四〇年一〇月ごろには解読され、模造機(Purple)も製作された(文献F‐1、R‐1)。

ロータリースイッチによる換字機構の原理

 暗号化の一形式に換字がある。その際、ただ一通りの換字表を使う時は単表式、二つ以上の換字表を使う時は多表式という。

 九七式印字機の暗号生成方式は、多表式換字である。ロータリースイッチ(電話交換機に使用された。後述)とは、回転により、入力と出力の間の接続を切り替える機器である。このようなスイッチを用いて換字を行う方法を示す。簡単にして、図2‐1の三文字について二つの換字表を考える(小文字は原字、大文字は暗字とする)。


 この場合には文字数は三であるから、スイッチとしては三回路のものが必要である。その接続例を図2‐2に示す。数字は接点番号を、a、b、c、A、B、Cは各文字に対応する電気信号である。矢印で示した三つのワイパーは時計回りに連動して1→2の方向に回転するとする。


 まずワイパーが1の位置にある時は、入力である原字aは暗字Bに、bはCに、cはAにつながる。この時、換字表1である。ワイパーが一接点回転すると、原字aは暗字Cに、bはAに、cはBにつながる。この時、換字表2である。そこで、信号a、b、c、A、B、Cを電気信号とすれば、ワイパーが接点1にある時には、aと名づけた電気信号入力はBと名づけた接点に達し、これは文字aがBに換えられたと見てよい。このように電気信号をスイッチで切り替えれば、図2‐1のような換字が可能である。電気信号としてはパルス状のものを想定すればわかりやすい。これが暗号化である。

 図2‐2で左上に書いたA、B、Cの端子は暗号作成時の出力信号である。暗号を元に戻す(翻訳という)時には、この端子が入力となり、a、b、cの端子が出力となる。すなわち、暗字Aの端子に電気信号が来れば、ワイパーの位置が1にある時にはその電気信号はcの端子に出力される。これは図2‐1の換字表を逆にたどったことになり、翻訳になる。

 ここで、スイッチの数(すなわち、回路数)は文字の数に、接点の数は換字表の数に対応することに注意しよう。
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