自分で自分を診断する愚かさ
無気力になるにはもうひとつ原因がある。何をやってもそれに集中しないということである。
すでに古代ローマ人も「常に何かしら引っ掛かる,何かがつきまとう」と言っている。何をやっていても,心に何かが引っ掛かっていてやっていることに集中できない。
以前僕に手紙をくれた人がこんなことを書いていた。
勉強の能率があがらないので庭に出てバットを振って気ばらしをして,それからまた勉強しようとしたというのだ。そして庭でバットを振っているあいだじゅう,
「もう勉強できるくらい気分がよくなったかな,まだかな」
とたえず自分の気分を自分で見つめている。
「いやもう少し気分がよくならないとダメだ」とまたバットを振り続ける。
つまり自分の気分に対する過度の注意集中なのである。*彼はあまりにも自分の気分に気を使いすぎる。だからバットを振っていてもなかなか気分が晴れない。
今度は勉強していても,「俺は今勉強に集中しているかな」と自分に過度の注意集中をしている。今自分はどのくらい勉強に集中しているか,たえず自分で自分を診断している。
たえず自分で自分を診断しているから,遊んでいるときも,もっと遊びに熱中できるはずだと思い,こんなに遊びに熱中できないのなら,いっそまた勉強しなければと思ったりする。