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(2021/11/26 追記)

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「日本の神様」がよくわかる本
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エンタメ
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第七章 諸産業に関する神々――衣食・商売・職人などを守護する神様

『「日本の神様」がよくわかる本』
[著]戸部民夫 [発行]PHP研究所


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少彦名命
(すくなひこなのみこと)

     別称少毘古那神(すくなびこなのかみ)

     神格‥穀物神・医薬神・酒造の神・温泉神



常世の国からやって来た小人神


 スクナヒコナ(のみこと)は、海の彼方(かなた)常世(とこよ)の国から光り輝きながらやって来た小人(こびと)神である。『古事記』では、天の羅摩船(かがみぶね)(ガガイモの殻の船)に乗り、()の皮を着てオオクニヌシ命の前に現われる。そのとき、造化三神(ぞうかのさんしん)の一神のカミムスビ(のかみ)が「私の手指の間から漏れこぼれ落ちた子です」といい、わが子のスクナヒコナ命にオオクニヌシ命と義兄弟となって一緒に国づくりするように命じたという。

 今日、われわれになじみの深いスクナヒコナ命の姿といえば、やはり医薬の神としての活躍だろう。薬神と書いて昔はクスシノカミと読んでいるが、薬師(くすし)崇敬(すうけい)した守護神(しゆごしん)という意味合いがあるのだろう。その薬神の代表的な存在といえるのがスクナヒコナ命で、古くから医薬神(医業・薬業の守護神)として知られている。

 スクナヒコナ命には、ほかに酒造の神や温泉の神としての信仰もあり、いずれにせよ身体健康に関わる霊力を発揮する神さまである。また、病気平癒(へいゆ)という薬師信仰との共通性から、神仏習合(しゆうごう)の際にはその本位が薬師如来とされたりしている。

一寸法師などの「小さ子」のルーツ


 スクナヒコナ命は、日本神話のなかの人気者であり、中世の『日本霊異記(にほんりよういき)』の道場法師や近世の「御伽草子(おとぎぞうし)」の一寸法師(いつすんぼうし)などの「(ちい)()」のルーツとされている。

 その人気の秘密は、小人神でありながらオオクニヌシ命とコンビを組んで、国づくりの大事業を成し遂げるという、サイズとスケールの関係の飛躍性にある。さらにその性格は明るく、いたずら者でユーモラス。しかも豊かな技術や知識を備えている。力ではなく、持ち前の知恵を働かせて困難をみごとに克服してみせるというヒーロー性も見逃せない。

 多くの仕事をやり終えたスクナヒコナ命は、最後に淡島(あわしま)(あわ)の茎にのぼり、その弾力ではじき飛ばされるようにして常世の国に渡ったとも、あるいは熊野(くまの)御崎(みさき)から海を渡って常世の国に帰ったともいわれる。海の彼方からこちらの世界にやって来て技術や文化を伝え、また常世の国に帰って行くという行動のパターンは、他界から豊穣(ほうじよう)や富を運んでくる来訪神と重なる性格を示している。

酒や温泉の利用など医療技術の普及


 スクナヒコナ命が、オオクニヌシ命とやった国づくりの一番の仕事は、国土開発事業と農業技術や医療などの指導普及である。

 とりわけ、スクナヒコナ命の中心的な業績は、その信仰にも反映されているように、文化的事業の一環(いつかん)として人々や家畜のために病気治療の方法を定めたことだ。酒造技術の普及もその一環である。「酒は百薬の長」というように、古来、酒の消毒力や肉体を興奮させて生命力を高めるはたらきは薬効として大変重視された。その霊妙なはたらきを人々に教えた神さまというわけで、今日も製薬会社や北海道のビール会社などに大事に(まつ)られている。

 また、温泉を初めて医療に用いたというエピソードが『伊予国風土記(いよのくにふどき)逸文(いつぶん)にある。それによると、あるときオオナムチ命(オオクニヌシ命)が病気になったので、スクナヒコナ命が大分(おおいた)速見(はやみ)の湯を地下(とい)を海底に通して運んで湯浴みさせると、やがて病状は回復して健康になった。このときに開いた湯が伊予国温郡(ゆのぐん)の温泉(現在の愛媛県松山市の道後(どうご)温泉)のもととなったという。昔から温泉は、「常世よりきたる水」と考えられていたのである。

中国の薬祖・神農神と合体


 スクナヒコナ命は、中国の薬祖神(やくそしん)である神農神(しんのうしん)と一緒に祀られて、医薬業関係者の厚い信仰を集めている。

 薬問屋が軒を連ねる大阪市中央区道修(どしよう)町の一角に少彦名神社がある。同社は、京都の五条天神の祭神のスクナヒコナ命を勧請(かんじよう)して神農神を併せて祀ったもので、薬屋や香具師(やし)の守護神とされている。祭日(十一月二十二、二十三日)には、疫病(えきびよう)除けのお守りの張り子の虎の(ささ)飾りが頒布(はんぷ)され、多くの参拝者でにぎわう。

 スクナヒコナ命と神農神の結びつきは、比較的新しく江戸時代である。そもそも神農神が薬祖神として日本で広く信仰されるようになったきっかけは、幕府の御薬園(薬草園(やくそうえん))に祀られたことに始まる。それが民間の薬草問屋などに広がるなかで、古くからの日本の医薬神スクナヒコナ命と一緒に祀られるようになったのである。

原像は穢れを吸い取る人形か?


 スクナヒコナ命の人気の秘密でもある“小人”の原像とはどういうものか? それに関してはいろいろな説があるが、一つには、人間の罪や(けが)れを一身に引き受けてくれる人形(ひとがた)形代(かたしろ)と結びつける説。もう一つは、昔は朝廷や貴族の使用人に“生きた人形”ともいえる小人(侏儒(ひきうど)(ちい)()矮人(わいじん))がいたらしい。こういう小人が天皇や貴族の側に控えてどんな役割をしたかというと、穢れを吸い取ることである。これはスクナヒコナ命の身体健康守護の霊力に通じている。

 以上のような考え方からすれば、小さいものの神秘性=小さいものが穢れを吸い取るという信仰に、この神の原像をみることも可能である。

 神徳は、医薬・酒・温泉などに関わるところから、万民の病難を救う霊力が中心になり、国土安穏、産業開発、漁業・航海守護、病難排除、縁結び、安産・育児守護などである。
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