読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン

12/21に全サービスをRenta!に統合します

(2021/12/6 追記)

犬耳書店は2021年12月21日に、姉妹店「Renta!(レンタ)」へ、全サービスを統合いたします。
詳しくはこちらでご確認ください。

0
-2
kiji
0
0
1238723
0
「日本の神様」がよくわかる本
2
0
0
0
0
0
0
エンタメ
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
第八章 生活・文化・芸能に関する神々――日本の文化に豊かな表情を与える神様

『「日本の神様」がよくわかる本』
[著]戸部民夫 [発行]PHP研究所


読了目安時間:1時間0分
この記事が役に立った
0
| |
文字サイズ


天石門別命
(あめのいわとわけのみこと)

     別称櫛石窓命(くしいわまどのみこと)豊石窓命(とよいわまどのみこと)

     神格‥門の神



悪霊の侵入を防ぐ門の神


 アメノイワトワケ(のみこと)は、天孫降臨(てんそんこうりん)随伴(ずいはん)して地上に降った門の神で、『古事記』には「またの名をクシイワマド命、またの名をトヨイワマド命という」とある。

 出入り口である門は、内と外の境界であり、この神はそういう場所をつかさどる神霊ということになる。そこから、境界の外(異境、他界)から侵入しようとするあらゆる災厄を防ぎ、人間の平穏(へいおん)な生活を守護する神さまと考えられているのだ。

 古代には、立派な門がある建物といえば、宮殿や社殿などの特別な建物に限られていた。門は堅固な石でつくられ神霊が宿った。本来の性格としては、石の堅固さを象徴する精霊(せいれい)だったのだろう。やがて石造であるかどうかにかかわらず、どこの門にもこの神が宿ると考えられるようになったということである。

 今日でも、堅固に悪鬼、悪霊(あくりよう)を防ぐ門の神として信仰されている。

天上界の入り口にある門

『古事記』には、アメノイワトワケ命は「宮殿の門を守護(しゆご)する神なり」とある。

 神名のイワトは、岩でできた門(戸)の意味で、これに「天」がついた場合は、天上界の入り口にある堅固な門というふうに解釈される。

 天孫ニニギ(のみこと)が地上に降臨するときに、アマテラス大神(おおみかみ)は、まず随伴する主だった神々を指名したあとで、知恵の神のヤゴコロオモイカネ神、天岩戸(あめのいわと)を開けたタジカラオ命とともに、アメノフトダマ命の子のアメノイワトワケ命を加えた。その役割は、アマテラス大神の霊魂の()(しろ)である鏡を大事に(まつ)り、天孫が地上を統治するときに、その宮殿の出入り口の門にあって天孫に奉仕し、悪霊の侵入を防ぐというものであった。

 古来、宮廷には宮中八神殿をはじめとしてさまざまな神が祀られていた。そうした主だった神とは別に、宮殿に付属する井戸の神や(かまど)の神などとともに、宮殿の四方の門に御門の守護神として祀られていたのが、クシイワマド神・トヨイワマド神である。クシは(くし)(霊妙な)で(とよ)と同じく美称であり、イワマドは石真門(いわまと)で宮殿の門の神を表わしている。

神秘的な異界への出入り口


 古くからイワトには、神秘的な異界(いかい)への出入り口という観念があったようである。
『万葉集』に「豊国の鏡の山の岩戸立て(かく)りにけらし」(巻三の四百十七番)という歌があるが、これには「河内王(かわちのきみ)豊前国(ぶぜんのくに)(大分県)の鏡山に(ほうむ)る時」という題がつけられている。鏡山とは『豊前国風土記(ふどき)』に、神功(じんぐう)皇后が天神地祇(てんじんちぎ)を祀って鏡を奉納したとある伝説の山で、現在も山頂に鏡山神社、麓に伝河内王墓がある。

 歌の意味は、河内王が鏡山を墓として埋葬(まいそう)されたということであるが、問題はここにいうイワトの意味で、これは死者が他界に行く入口を指している。この場合のイワトは、生と死(現世と他界)の境を意味しているのである。

 神徳は、異界から侵入してくる災厄・疫病などを防除する門の神であることから、家内安全、無病息災などである。

   ●神社ガイド

   櫛岩窓神社:兵庫県多紀郡篠山町福井

   天乃石立(あめのいわたち)神社:奈良県添上郡柳生町

   天岩門別神社:広島県山県郡大朝町

   天岩門別神社:岡山県英田郡英田町滝宮

   天岩門別神社:高知県高岡郡越知町

   大祭天石門彦(おおまつりあめのいわとひこ)神社:島根県浜田市相生町

奥津彦命・奥津姫命
(おきつひこのみこと・おきつひめのみこと)

     別称大戸比売神(おおべひめのかみ)

     神格‥竈の神、火の神



民間信仰のカマド神と同神


 オキツヒコ(のみこと)・オキツヒメ命は、二神を併せたまたの名を、オオベヒメ神といい、日常の食べ物を煮炊(にた)きする命をつなぐ大事な(かまど)をつかさどる神である。昔は朝廷にも(あつ)崇敬(すうけい)され、民間でも各家の台所(家)の守護神(しゆごしん)として大切に(まつ)られていた。

 最近の家庭の台所は、すべて電化製品に支配されて、火の気といえばガス器具くらいのものになっている。当然、「かまど」「へっつい」などといっても、若い世代にはどんなものやら分からない人がほとんどだろう。オキツヒコ命とオキツヒメ命は、(まき)を燃やして煮炊きをする台所が主流だった時代に、その台所で使う火に宿る神霊で、一般にはカマド神として知られている。

 古来、日本では家のなかにさまざまな神がいると考えられ、それぞれが家の守り神と信じられてきた。

 それらは水神(すいじん)(井戸神)、(かわや)神、納戸(なんど)神、(ほうき)神といったものだが、そのなかでももっとも代表的な神さまがカマド神である。昔は、竈の煙が、家の盛衰の象徴でもあった。いまでも地方の町や農村の旧家などには、台所に神棚が設けられていたり、お札が貼ってあったりする。

 カマド神は大変に古い神で、われわれの祖先が土間(どま)で火を使う生活を始めたときから信仰されてきた。台所の火をつかさどるカマド神は、その火を使って調理される食物を通して、家族の生活のすべてを支配する力を発揮する存在だった。だから、火伏(ひぶ)せの神としての機能はもちろんのこと、作神(豊穣(ほうじよう)神)、家族の守護神として信仰されたのである。
『古事記』には父神が穀物の守護神・稲の実りの神であるオオトシ神とあり、本来この二神は、豊穣神的な性格を強くもっているのである。

清浄を尊び不浄を嫌う潔癖な荒神


 民間信仰のカマド神は、(けが)れに敏感で、人がその意に反した行ないをすると激怒して恐ろしい(たた)りをなすと信じられ、そこから荒神(こうじん)と呼ばれている場合も多い。

 荒神というのは、火所を守護する神聖な神である三宝荒神(さんぽうこうじん)のことで、主に修験道(しゆげんどう)日蓮宗(にちれんしゆう)が祀った神仏習合(しんぶつしゆうごう)の神である。ふつう如来荒神(によらいこうじん)鹿乱荒神(からんこうじん)忿怒荒神(ふんぬこうじん)のこととされ、仏教信仰の柱である仏・法・僧の「三宝」を守るのが役目である。

 清浄を尊び、不浄を嫌うという非常に潔癖(けつペき)な性質をもつカマド神である荒神は、基本的に家つきの土着的な神さまであるから、火伏せ、農作の守護から結婚、育児、家族の健康や旅行の安全、家畜の守護といったことまで、家族の生活にかかわるあらゆることを支配し守護する機能をもっている。要するに、家族の生死や寿命、幸福、家の盛衰を左右する力があるというわけである。

 なお、オキツヒコ命・オキツヒメ命の基本的な性格は火の神であるから、神道ではこの二神に火の神カグツチを加えた三神を一座として、カマド神としている。その意味では、たとえば火の神を祀る愛宕(あたご)神社や秋葉神社などのお札をいただいて、家の台所に祀っても同じ神徳が発揮されるということである。もともとが家の台所に宿る精霊として発生したきわめて土着的な性格の強い神霊であるためか、他の神道系の神さまのように神社に祀られている例は、ほとんどないようだ。

 神徳は、家内安全、家族・家畜守護、豊作、招福、防火など。

   ●神社ガイド

   カマド神は屋内の台所や大黒柱、屋外の屋敷地内に祀られる。

矢乃波波木神
(やのははきのかみ)

     別称箒神(ほうきがみ)波比伎神(はひきのかみ)、屋乃波比伎神

     神格産神(うぶがみ)、屋敷神



掃き出す機能が安産に通じる


 ヤノハハキ(のかみ)は、民間信仰では(ほうき)神として知られる神で、文字通りゴミを()くホウキというごく日常的な道具から発した、生活に身近な屋敷神(家の神)である。

 箒神は、人間の生と死、とくに出産に深く関係する神さまである。理由は諸説あるが、一般には「()く」の名詞形はハハキで、その音は「母木」に通じることから「生命を生む木」と考えられ、お産のときに妊婦(にんぷ)と赤ん坊を守護(しゆご)してくれる神さまとされたという説が有力である。さらに、ゴミを掃き出し清掃する力は、(けが)れを(はら)呪術(じじゅじゆつ)に通じ、それは容易に胎児を掃き出す安産守護の霊力として発揮される。

 また、俗信では、ホウキが霊魂をかき集める呪物と信じられ、ホウキで妊婦の腹を()でて安産を願ったり、座敷ボウキを逆さに立て手ぬぐいをかぶせ、長居の客を早く掃き出したいと願う呪的行為に用いられたりする。

アマテラス大神の宮の敷地を守る


 ヤノハハキ神は、アマテラス大神(おおみかみ)鎮座(ちんざ)する伊勢(いせ)神宮内宮(皇大(こうたい)神宮)の板垣(いたがき)の外側、東南隅に(まつ)られている。古来、朝廷が伊勢の宮地の敷地の神霊として(あが)めたといい、本来、屋敷神・土地神の性格をもつ神格だったことがうかがえる。

 この神の原像は産土神(うぶすなかみ)に近いと考えられる。産土神は土地に宿る神霊で、土地に住む人々の生活を支配する。

 だからヤノハハキ神(箒神)が産土神と同じかというと、そう単純でもない。むしろ、産土神のもつ人の生と死を支配する機能のうち、とくに生命を産み出す霊力の独立形態である産神とホウキの掃き出す呪力が結びついて、ヤノハハキ神(箒神)という神格が生まれたと考えるほうがより正確である。

 神徳は、家屋敷の守護、助産婦・乳母の神として安産・育児守護のほか家内安全、招福などがある。

   ●神社ガイド

   伊勢神宮・内宮域内:三重県伊勢市宇治館町

   徳井神社:兵庫県神戸市灘区大和町

   高忍日売(たかおしひめ)神社:愛媛県伊予郡松前町

八意思兼命
(やごころおもいかねのみこと)

     別称‥思兼命、天八意思兼命(あめのやごころおもいかねのみこと)

     神格‥知恵の神、文神



万人の知恵の結晶の神格化


 ヤゴコロオモイカネ(のみこと)は、高天原(たかまがはら)の最高司令神であるタカミムスビ神の子で、天岩戸(あめのいわと)神話や国譲(くにゆず)り神話で持ち前の能力を発揮して活躍する知恵の神である。

 名前のヤゴコロは、いろいろな立場から考えるという意味であり、カネは兼務・兼任などと使う場合の兼で、一人で二つ以上のことをこなすという意味である。本居宣長は『古事記伝』で「思兼」の語について、「数人(あまたびと)思慮(おもいはか)(さとり)(ひとり)の心に兼持(かねもて)る意なり」と解釈している。要するにヤゴコロオモイカネ命は、数多くの人間がもつ思慮分別(しりよふんべつ)の知恵を一身に結晶させているということだ。
「三人寄れば文殊(もんじゆ)の知恵」という(ことわざ)がある。
この記事は役に立ちましたか?

役に立った
0
残り:25325文字/本文:29854文字
この記事を買った人はこれも買っています
      この記事を収録している本
      この本で最も売れている記事
      レビューを書くレビューを書く

      レビューを書いてポイントゲット!【詳細はこちら】

      この本の目次