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日本転覆テロの怖すぎる手口 スリーパー・セルからローンウルフまで
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政治・社会
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第一章「テロ」はいかに進化しているのか ──気づかれずに埋伏し、突如火を噴く

『日本転覆テロの怖すぎる手口 スリーパー・セルからローンウルフまで』
[著]兵頭二十八 [発行]PHP研究所


読了目安時間:25分
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 二〇一七年四月、(ピヨン)(ヤン)にある海外向けの短波ラジオ局が、いかにも在米のスリーパー・セルを一斉にアクティヴェイト(活性化)させる指令であるかのような、数字をたくさん混ぜた、思わせぶりなアナウンス原稿を読み上げた。


 IS系のスリーパー・セルの暗躍やその捜査のニュースが欧州各地からコンスタントに届けられていた当時、米国人も一瞬、身構えたものだった。


 しかし、インターネットで、暗号や()(ちよう)を織り込んだ音楽でも動画でもニュースのテキストでも随意に「放送」ができ、それを個人のスマートフォンで随時に何度でも確認視聴することができるようになって久しい今日、他国公安機関が注意してモニターしているに決まっている海外向けの国営短波ラジオ放送の電波にわざわざ乗せて、ことさら人の耳をそばだたしめる「乱数」の読み上げによってスリーパー向けの「秘密の指令」を伝えるような古色蒼然たる特務機関が、あってたまるものではない。




 今日、本物のスリーパーが街中でイヤホンつきのスマホをいじっていても、それを()(とが)める警察官はいないであろう。が、大きなアンテナや短波受信機を部屋に置いている北朝鮮系スリーパーは、いったい近隣住民や現地公安当局の疑いの目をふだんから無理なく()らしてやるため、どんな「職業人」や「趣味人」に偽装していたらよいものだろうか? 留守中にこっそりと家宅捜索された場合、その正体は発覚せずに済むものだろうか?


 ちょっと常識を働かせればわかる話だ。が、「いや、あいつらなら、やるかもしれん」と思わせる余地も、ややあるのは事実。北朝鮮の特務機関には、ベタながらも渾身の自虐で外国人を釣ってしまう才覚がある。自己も他者も客観視しうる宣伝の達人が仕切っているとしたら、これは(あなど)れない。


 ともあれ、この二〇一七年の平壌発の冗談めいたスリーパー・ブラフが空振りに終わったことで、米国内の「対テロ」関係諸官庁では、口にこそ出さないが一つの心証を強めた。

「いまや《9・11》式の、すなわち多人数を一斉に動かす大規模テロは、米国内に関しては封殺できている」という自信である。


 欧州でみられるような非同化的なイスラム・コミュニティが普通に街中に存在したりせず、なおかつ戦前のFBI以来の「通信傍受」ノウハウと、重厚なテロリスト・データベースを国土安全保障省が活用できる体制も整えられたため、合衆国内では「セル」の見逃しがなくなったのだ。






 米国の話を二〇〇〇年頃までさかのぼらせたい。


 カナダに隣接するエリー湖畔、ニューヨーク州バッファロー市に近いラッカワナ郡には、米国としては珍しい、三〇〇〇人規模のイエメン系イスラム教住民のコミュニティがある。その近傍でイエメン人の両親から生まれたカマル・ダーウィッシュという米国籍を有する若者が、一九九〇年代半ばにスンニ派の原理主義に共感した。彼はみずからアルカイダの手下のリクルーターとなり、ラッカワナ郡の中東系コミュニティの若者たちを説伏し始めた。


 二〇〇〇年の十月には、イエメンのアデン港で、米海軍のイージス駆逐艦『コール』が、アルカイダの決死テロリスト二名の操縦する小型ボートサイズの自爆艇によって舷側に大穴をあけられてしまい、水兵一七人が死亡する事件が報じられている。そのような時節であった。


 やがてダーウィッシュは、ビンラディンも臨場することのあるアフガニスタン内の武器訓練キャンプへ、青年たちを引率するミッションを反復。FBIとCIAは二〇〇一年に家族からの通報によりこの「ラッカワナ・セル」の存在に気づかされ、その年に起きた「9・11」騒動後は「全米一危険な細胞」だと認定したのである。


 二〇〇二年の十一月、CIAは、イエメン沙漠の路上で、ダーウィッシュら七人が乗った車両に、「プレデター」無人機からヘルファイア・ミサイルを命中させて爆殺を図った。イエメン官憲は、ダーウィッシュを含む六名の死体を現場で確認した(一名が逃亡)。


 このケースは、テロリストを志願してはいるが、生まれながらのレッキとした米国市民権も有する米国人を、裁判抜きで「処刑」したのは合法なのか──という憲法論争も(じやつ)()している。


 だが米国G・W・ブッシュ(子)政権は全精力を傾けて「第二の9・11テロ」の(ぼう)(あつ)に邁往した。


 二〇〇三年六月に連邦司法省は、〈二〇〇二年にディズニーランドの爆破を準備した〉との容疑で、「デトロイト・スリーパー・セル」の二名を起訴した。

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