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学校では教えてくれない世界史の授業
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歴史
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第四章 巨大な衝撃!イスラム世界が突如出現する

『学校では教えてくれない世界史の授業』
[著]佐藤賢一 [発行]PHP研究所


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──「西・東・イスラム」という三世界の図式とは?




 西洋史の見方、西洋史観とでもいいますか、それでは、どうしても見落とされがちになる歴史があります。


 自分たちの歴史ばかり肯定したい、よくみせたい、偉くみせたいと思いますから、その都合で無視されたり、過小評価されたり、あるいは恣意的に位置づけられたりする歴史があるわけです。


 勝手にビザンツ帝国なんて呼ばれる、東ローマ帝国なんかも一例ですね。しかし、それ以上に正しく評価されていないのが、これから話すイスラム教の誕生、そしてイスラム帝国の興隆なんだと思います。


 西ローマ帝国が滅んだくらいで大騒ぎするなというくらい、物凄いインパクトがある出来事、まさしく世界を変えた、時代を大きく動かした大事件です。派手な言葉ばかり並べていても仕方ありませんね。論より証拠と、具体的な史実をみていくことにしましょう。


 まずはイスラム教の誕生から。創始したのが英語にいうマホメット、最近はアラビア語でムハンマドといわれるほうが多いですね。このムハンマドの生涯を辿ることから始めたいと思います。


 ムハンマドは五七〇年、メッカに生まれました。紅海沿岸のヒジャーズ地域、そこにある小都市ですね。今はサウジアラビアに含まれていますが、当時は実質的に国といえるようなものはなくて、人々は部族、部族で暮らしていました。


 ペルシアとか、東ローマとか、そういう大国はあったけれど、いずれも遠いんですね。二国はシリアやエジプトを巡って争いますから、軍隊が来るようなことはありました。しかし、常駐するわけではありませんから、ヒジャーズ地域はほとんど無政府状態ですね。やはり頼りは自分の部族だけ。部族、部族で暮らしていくしかない。そういう状況のアラビアに、ムハンマドは生まれたわけです。


 ほとんど砂漠というなかに、たまにオアシスがあってという土地ですから、農業が盛んにできるわけでもありません。無政府状態にもなるわけで、大国には手間をかけて支配する(うま)()はないとみえるんですね。


 こういう土地の(なり)(わい)といえば、商業です。砂漠というのは、ただ渡るだけで大変ですから、これを越えて商品を運んでいくという営為には、非常な付加価値がつくんですね。カルタゴ人、ユダヤ人、そしてアラビア人のようなセム系の人たち、おしなべて商業が得意なのも、この砂漠という故地の環境ゆえかもしれません。


 ムハンマドも商人になりました。ラクダの隊商を組んで、砂漠を渡り、商品を運んでいく。本当に普通の商人として生きたんですね。


 神の啓示を与えられたのは、六一〇年、四十歳のとき突然にです。それまでは土着の多神教ですね、これにムハンマドも普通に帰依していました。啓示が下りたのは、洞窟で瞑想しているときだとされますが、まったく関係ない宗教で瞑想していたわけです。


 そこに突如、神の啓示が来たと。実際には誰が来たかというと、大天使ガブリエルです。


 大天使ガブリエル──そう聞きますと、まず大天使、天使ですね、それはキリスト教のものじゃないかという気がします。さらにガブリエルという名前ですね。アラビア語ではジブリールですが、それももともとはキリスト教徒の名前じゃないのと思ってしまいます。


 どういうことなんだろうと首を(かし)げてしまいますが、つまるところは同じ神、同じ天使なんです。ユダヤ教、そこから生まれたキリスト教、そしてイスラム教、全て一神教です。その神は、ヤーウェ、エホバ、アッラーフと言語によって発音は変わるんですが、全て同じものを指しているんですね。


 さきほど神の啓示といいましたが、この啓示を受ける人、神さまからのメッセージを受け取る人を、預言者といいます。未来のことをいいあてる予言者じゃなく、神の言葉を預かる人という意味で預言者ですね。イスラム教の数え方では、全部で二十五人います。


 アブラハムとか、箱舟のノアとか、十戒のモーゼとかも預言者ですね。後に続いた預言者が、イエスです。キリスト教では、イエスは神の子、神と同質ですから、預言者ではなく神という位置づけなんですが、イスラム教では先行の預言者だとしています。最後の預言者が、ムハンマドなんだということです。


 いわれてみれば、さほど奇妙な話ではありませんね。三宗教とも発祥の地が、ほぼ同じエリアです。ウル(現イラク南部)にいたユダヤ人がカナン(現イスラエル)に移り、そこでキリスト教も起こります。イスラム教がメッカ(現サウジアラビア)ですので、全く同じ地域ではないものの、そんなに離れているわけではない。


 全て中近東ですね。このエリアにもともと一神教的な伝統があって、それを三宗教とも継いだと考えるのは、むしろ無理がない気がします。


 実際のところ、イスラム教徒はユダヤ教徒やキリスト教徒を「啓典の民」と呼ぶわけです。同じ神さまの教えを聞いている人なんだという意味ですね。ただ自分たちはムハンマドという最も新しい預言者に神さまの言葉を伝えられている、要するに自分たちの宗教は最新のアップ・グレード・ヴァージョンなんだということです。


 イスラム教徒の言い分としては最新というより最善、ユダヤ教やキリスト教の段階で間違えたものもあった、それをより純粋な一神教の形にした、アブラハムの宗旨に立ち返らせた、という風になりますが、いずれにせよ最も恵まれているんだと自負があるわけです。




 そのムハンマドが受けた啓示、神の言葉がクルアーンです。これも英語でコーランというより、アラビア語のほうが一般的になってきていますね。ムハンマドは最初に啓示を受けてから、死ぬまでに何度か預言の機会を与えられているんですが、それらがまとめられたということです。


 このクルアーンにハディース、ムハンマドの言行録みたいなものですね、これが加わって、イスラム教の経典になっています。キリスト教でも新約聖書はイエスの言行録ですね。それと同じです。


 同じといえば、ムハンマドが生きている間に弟子たちが集まる、イエスの十二使徒よろしく、メッカに一種の信仰共同体ができます。布教の開始が六一二年ですが、それから十年ほどで二百人ぐらいまで増えたとされます。


 イエスの場合はユダヤ教の社会、一神教の世界があって、そのなかで過激派とか、()み出し者とかみなされました。ムハンマドの場合は多神教が普通という社会のなかです。それを全否定しながら、一神教を打ち出したんです。


 当然の成り行きといいますか、とんでもない連中だと、メッカで嫌がられることになります。ユダヤ教徒やキリスト教徒の存在は知っていて、そういう人たちの信仰なんだという感覚もあったようです。先祖伝来の宗教を捨てて、どうして()()(もの)の信心に打ちこんでいるんだと、ますます非難されるばかりになります。


 やはり迫害が起こります。五千人規模の小さな町なのに、ムハンマドに従う者たちとは結婚を許さないとか、最終的には食料を売らないということまであって、もう生死にかかわるような迫害ですね。


 ムハンマドたちは困りました。全体どうしたらいいのか。そのときメッカの北三百キロのところに、メディナという町がありました。

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