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「瑞穂の国」の資本主義
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政治・社会
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第一章 金融主導のグローバル経済は終わった

『「瑞穂の国」の資本主義』
[著]渡邉哲也 [発行]PHP研究所


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アメリカの弱体化で懐古主義に向かう世界


 冒頭でも触れたが、二〇一四年二月下旬にウクライナの首都キエフや同国西部で大規模な反政府デモが起き、ウクライナ国会は親ロシア派のヤヌコビッチ大統領を解任した。これを受けて、ヤヌコビッチ大統領を支持するロシアは同二十六日、ウクライナとの国境周辺でロシア軍の大規模演習を行い、ロシア系住民やロシア軍人の保護を名目とした軍事介入の方針を決めた。

 これに対し、主要七カ国(G7)は三月二日に共同で、ロシアへの非難声明を発表。三月六日にアメリカのオバマ大統領は、ウクライナおよびロシアの一部当局者が所有する米国内の資産を凍結し、かつ米国への渡航を制限する制裁を指示した。同十七日、EUもウクライナおよびロシアの制裁対象者に対して、資産凍結およびEUへの渡航制限を発動。日本政府も十八日に、ロシアとのあいだで査証緩和に関する協議を停止するほか、新投資協定、宇宙協定および危険な軍事活動の防止に関する協定について、新たな国際約束の締結交渉開始を凍結するという措置を取ると発表している。

 だがロシアのプーチン大統領は同日、クリミア半島のロシアへの編入条約に調印し、クリミアを独立国家として承認。翌十九日には、イギリスのキャメロン首相がロシアに対し、これ以上の措置を取るならG8からの永久除名もあり得ると警告した。

 その後、三月二十八日にプーチン大統領は潘基文(パンギムン)・国連事務総長に対して、ロシアはクリミア半島の併合後、ウクライナに軍事介入はしないと明言。三月三十一日には、ロシア軍の一部部隊がウクライナ国境から撤退したとロシア国防省が発表したが、アメリカのヘーゲル国防長官は、撤退がまだ確認できていないとコメントしている。

 ロシアによるウクライナへの介入は、ソチオリンピックが二月二十三日に無事終了し、三月七日からのソチパラリンピック開催を控えるのみという絶妙のタイミングで行われた。かつて旧ソ連がアフガニスタンに侵攻し、日本をはじめとする約五〇カ国が参加をボイコットしたモスクワ五輪(一九八〇年)の悲劇を繰り返さないように、周到に計算された行動だったのかもしれない。

 一九八九年の「ベルリンの壁」崩壊以来、東西の対立および冷戦構造は過去のものと考えられてきたが、まだ完全には終焉していなかったのだろう。西側諸国と東側諸国の対立は、ある意味で歴史の必然という部分があるのかもしれない。

 いずれにしても、米国の弱体化がこの問題の根本にあり、ロシアは、レイムダック化したオバマは軍事介入できないと踏んでいるのだろう。ロシアで拡張政策が復活したとも見られる。ロシアにも東側諸国にも懐古主義的勢力が存在し、彼らが活動を復活させたことが、この問題の根本にあるのではないか。

 中国にも同様の動きが起きており、マオイストを中心とした懐古主義的勢力が拡大している。

 詳しくは後述するが、サブプライム問題で新自由主義は否定され、行き過ぎた自由主義を、多くの国の国民が否定している。その結果として、経済分野でも社会主義的政策が好まれ、日本においてもケインジアン的な政策が再評価されてきているのだ。

国際情勢の大きな動きの背景にあるもの


 冷戦構造の終焉後、米国、西側諸国にはある意味で敵のいない状況が続いてきた。その中で生まれた新たな敵がイスラム過激派だったわけだが、これは国家間の紛争というよりテロリズムという地域紛争であり、そうした「テロとの戦い」も不毛なものとなっている。西側諸国にも、ある意味出来レースでもあった冷戦構造を懐かしむ声があり、安易なワン・ワールド化に反発する声が大きいのも事実なのである。

 一方、アメリカFRB(米連邦準備制度理事会)によるテーパリング(中央銀行の量的緩和による金融資産買入の規模縮小)と、それにともなうキャピタルフライト(資本逃避)は新興国に大きな影響を与え始めている。

 そのため新興国では国内政治に対する不満が拡大しているが、これは一朝一夕には解決できない問題でもあり、国民の不満をどこかに向かわせないと、自身の政権が持たない状況になっている。その結果として、国家間の対立がますます悪化しているとも言えるのだ。

 先進国の扱いではあるが、韓国がその典型といえよう。

 各国が、混沌とした国際情勢下において自らの立ち位置を確認していくなかで、今後新たな対立構造が世界に構築されるかもしれない。

 こうした国際情勢の大きな動きについて、その背景にあるものは何かを読み解いていくことにしよう。

 ここで、いったん整理をしよう。世界は単純な二極で動いているわけではなく、複雑で三次元的なバランスで成り立っている。

 その主要な軸を挙げるならば、

 一、グローバル(ワン・ワールド)とインターナショナル(複合体)

 二、先進国と新興国

 三、民主主義と独裁体制

 四、官と民

 五、指導階級と国民

 六、自由と規制

 七、票と金

 となろう。

 サブプライム問題により、金融主導型社会が崩壊するなかで、米国の絶対的支配構造が弱体化し、同時に米国的価値観に基づく先進国の指導構造も弱体化している。これが世界的なレジームチェンジの引き金となり、世界を混乱に陥れていると言ってもよいのだろう。
「平和」というのは、「絶対的指導者の存在」と「力の均衡」により成立する。このバランスが崩れるとカオス(混乱)が発生し、次の指導者をめぐる権力闘争が引き起こされる。悲しいことではあるが、これが動物としての人間の(さが)なのだろう。

 国際問題とか外交とかいうと非常に難しいもののように考える人がいるが、要はそれを動かしているのは人であり、基本構造は「サル山の権力闘争」と大きくは違わない。人が群れをつくり、強いリーダーのもとで庇護される。そして、群れはその支配をめぐり対立し、力による政治が行われる。また、天変地異などにより飢餓に陥った場合、(えさ)をめぐる攻防が激化し、群のあいだの戦いも激化する。

 世界恐慌から第二次世界大戦までの歴史がこれを証明していると言える。世界恐慌により、世界の指導者は英国(欧州)から米国に移ることになった。この際にさまざまな権力闘争と枠組みをめぐる争いが発生し、植民地を含めた権益闘争は激化した。金融危機後のいま、世界で起きていることはこれに酷似している。

 しかし、大きな違いもある。その最大のものが大量破壊兵器の存在である。核などによる最終戦争は最終的に誰も勝者を生まない。だからこそ、争いのあり方も変貌していると言える。そして、現在の戦争はソフトパワーの戦争に形を変えたと言えるのだろう。

 ここで新たなリーダーの条件を考えてみよう。これは、それほど難しいものではない。政治は人がつくるもので、権威の皮を()いでしまえば、小学校の人気者争いと同じである。

 そのように考えると、

 一、力がある

 二、成績優秀(勉強ができる)

 三、金がある

 の三択となるのだと思う。そして、力による支配が弱体化した世界では、「二」と「三」が重要となる。つまり、世界の新たなリーダーになる資格を持っているのは日本なのである。

「強いロシア」の復活を望んだロシア国民


 ウクライナ情勢に話を戻すと、この背景には資源をめぐる問題とワン・ワールド化への逆行、という流れを見て取ることができる。

 もともとウクライナとロシアは、天然ガスをめぐってたびたび紛争を起こしてきた。にもかかわらず、ベルリンの壁の崩壊以降、ヨーロッパ諸国はロシアへの資源依存を強めてきたのである。冷戦終結により、西側諸国とロシアには再び対立関係は生じないという前提に立ってのことだろうが、現在、ヨーロッパの天然ガスおよび石油の三分の一はロシアの政府系ガス大手企業ガスプロムからの供給である。ロシアの石油や天然ガスが止まったら、ヨーロッパ経済は壊滅的なダメージを受けることになる。

 とくにパイプライン網によるエネルギー供給を受けているヨーロッパ諸国にとって、ロシアとの関係は非常に重要である。なぜなら彼らが現在使用しているエネルギーは、いまこの時点で、ロシアからパイプライン網を通じて供給されているものだからである。

 わかりやすく言えば、これはプロパンガスと都市ガスの違いで、ガスの元栓を止めれば即座にヨーロッパ諸国に対するエネルギー供給が止まる構造にあるわけだ。北欧諸国に至っては、ロシアからのエネルギー供給が七〇〜一〇〇%にのぼる国家もあり、その国にとってロシアとの関係悪化は即、「死」を意味する。

 そのような関係のなかで、現在のロシアの強気の姿勢があるのだと言える。ヨーロッパ諸国はエネルギーという生命の根幹をロシアに委ねてしまったがゆえに、ロシアに逆らえない状況に陥っているのである。

 そのロシアはいま、どのような状況にあるのだろうか。
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