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神の旅人
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魂の果て

『神の旅人』
[著]森本哲郎 [発行]PHP研究所


読了目安時間:10分
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 パウロがふたたびエペソに姿を現わしたのは、紀元五二年(ごろ)であった。クラウディウス帝の治世である。このころのローマは、暗殺すなわち即位式という世も末の時代だった。前帝カリグラが劇場の廊下で殺されると、親衛隊はカリグラの叔父にあたるクラウディウスを皇帝に据えた。思うままに操ろうと思ったのだ。が、案に相違して、彼は賢明な政治を行い──といっても、前帝カリグラや、つぎのネロにくらべての話であるが──官僚機構を整備し、植民市を建設し、ローマの市民権を気前よく与えて「ローマによる平和(パツクス・ロマーナ)」を確固たるものにした。

 だが、そうした業績と皇帝個人の生きざまとは別問題である。クラウディウスは他の皇帝なみに放縦な生活を送り、五度も妻をかえる始末だった。そして、その五度目の妻アグリッピーナに毒殺されてしまうのである。この悪女は前夫とのあいだにもうけた息子ネロを帝位につける。ローマは外へ向かって勢力を伸ばしていったが、同時に、内から腐り始めていた。想像を絶する殺人、痴情、倒錯、ありとあらゆる人間の悪が花を咲かせていた。パウロがエペソで伝道に命をしていたときの世界は、そのような“悪の華”の最盛期だったのである。


 では、人びとはどのような思いで生活していたのだろう。エペソ、アレクサンドリア、アンティオキアといったローマ支配下の大都市では、むろん、何より商売が第一であった。そういった点で、これら都市の住人たちの毎日は、現代の都会人と、さしてちがわなかったろう。だが、ひとつだけ重要な相違がある。当時の都市民は現代人よりもずっと魂の不安に(さいな)まれていたということだ。だから彼らは宗教にすがった。自分たちを守ってくれる神、ご利益(りやく)を授けてくれる神、豊饒を約束してくれる神。
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