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戦争と人間
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歴史
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反乱 ユダヤの巻

『戦争と人間』
[著]森本哲郎 [発行]PHP研究所


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 途方もなく強力な相手に対し、なお、力をもって抵抗する戦い──それを反乱と呼ぶ。とうぜん、結果は目に見えている。鎮圧である。征服である。全滅である。玉砕である。

 にもかかわらず、激しい怒り、耐えがたい屈辱、抑えきれぬ自己主張は、前後の見境をなくさせ、冷静な見通し、現実的な判断、賢明な打算、すべてを放棄させてしまう。人間に主張があるかぎり、自尊心が失われぬかぎり、そして、それを傷つけて意にも介さぬ強大な力があるかぎり、反乱は人間社会からけっしてなくなることはないであろう。いや、今後、反乱の動機はいよいよ増えてゆくように思われる。

 反乱は、結果が見えている以上、ほとんどが悲劇に終るといってよい。壮絶なドラマというべきかもしれない。挑戦する相手が、あまりに強大だからだ。したがって、そこには交渉はなく、妥協もなく、駈引きもない。あるのは、ただ、むきだしの憎悪、直接のぶつかり合い、イチかバチかの運命のけだけである。それは傍観者には、“無益の抵抗”としか思われない。しかし、“無益の抵抗”こそ、反乱の本質なのである。人間はこれまで、いたるところで、どれほど数多くの反乱を試みてきたことか。

 だが、反乱というなら、紀元六六年から七三年にかけて、強大なローマ帝国を相手に戦いを挑んだユダヤ民族の抵抗は、そのすさまじさにおいて、支払った犠牲の大きさにおいて、ひとつの民族の運命を決めた結末において、最も悲惨な例といってよかろう。そして、そこに反乱の本質、反乱のすべてが見られるように思われる。

 その凄絶なドラマは、どのように展開されたのであろうか。


 二千年も前のこの反乱が、手にとるようにわれわれにわかるのは、じっさいにその戦いに加わったユダヤ人ヨセフスが克明な記録を残してくれているからである。

 とはいえ、『ユダヤ戦記』の名のもとに知られる詳細なその記述は、すべてが信頼できる史料というわけではない。なぜなら、ヨセフスはローマ軍と戦うために紀元六六年、ガリラヤに指揮官として派遣され、城壁を築いたり、軍隊を組織したりして大いに活躍するのだが、やがて進攻してきたウェスパシアヌス麾下(きか)のローマ軍に敗れ、追いつめられ、ついに降服し、そのあげく、以後ローマ側について実力者ウェスパシアヌス、およびその息子ティトゥスの庇護のもとに一生を終えているからである。
『ユダヤ戦記』は、のちにローマ皇帝となったウェスパシアヌスから与えられたローマの邸で、年金を受けながら執筆したものなのだ。
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