『あの偉人たちを育てた子供時代の習慣』
[著]木原武一
[発行]PHP研究所
幼いころの生活習慣がいかに人間のほとんどすべてを形成するかを如実に示しているのが、いまから約八十年前にインドで発見された、狼に育てられた少女の例である。狼の群れが住む洞穴から救出された少女は、姿かたちは人間ながら、その行動は狼そっくりだった。
カルカッタから一〇〇キロほどはなれた小さな村で、狼に育てられたふたりの少女が発見されたのは、一九二〇年十月のことだった。年長の少女はカマラ、年少の少女はアマラと名づけられ、シングという名の牧師の経営する孤児院に引き取られた。ふたりとも、乳飲み子のころ、畑仕事に出た母親に連れられ、切り株などのあいだに置かれたところを、母狼にくわえられて洞穴に運ばれたものと考えられる。赤ん坊の狼とともに、ふたりも狼の乳で育ったのであろう。