熟年離婚が流行っているが、この点に関して私は、世の風潮に惑わされないで、慎重に事を運んだほうがいいと思っている。
なぜかというと、勢いで離婚しても、一人暮らしの現実は厳しいからである。二人で築いてきた財産を二分割すれば「それぞれ暮らしていける」との見通しが熟年離婚の背景にあるようだが、そんなに甘いものではない。
六十代の妻が、貯蓄が一〇〇〇万円あるからといって、離婚したいという人生相談があった。収入は月五、六万円の年金だけ。パートで働ければ何とかやっていけると本人はいうが、老後は決してラクではないはず。これでは行き詰まりが目に見えている。