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江戸の智恵
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政治・社会
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まえがき

『江戸の智恵』
[著]養老孟司 [著] 徳川恒孝 [発行]PHP研究所


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 世が世なら将軍家と対談をしたわけだが、たいへん良い時間を過ごさせていただいた。私は庶民で、いってみれば育ちが悪い。だから、育ちが良く、品の良い人にお目にかかると、なんとなく安心する。だまされる心配はあるまい。そう思うからかもしれない。そもそもそんなことを思うこと自体が、育ちが悪い証拠である。

 対談の中身は難しいことではなく、いうなれば世間話だが、まあこんなところか、という範囲に落ち着いたと思う。これも川さんが品がいいからで、こちらもつい乱暴なことはいえなくなる。中庸というが、世間がズレているときは、中庸のほうがズレて見える。結局は私たち二人が生きてきた戦後の日本社会で、何が中庸からズレたのか、そこを論じた結果になったと思う。そうしたズレについては、川さんと意見が合うところが多かった。

 戦前は要するにダメ。早い話が、そういう時代に育ってしまったから、それをあれこれ訂正するのに七十歳までかかっている。戦後はいわば典型的な進歩史観で、それが経済の右肩上がりと一致したから、さして疑問が生じなかったのだと思う。しかし経済の右肩上がりとは、モノでいうなら、エネルギーの消費量が増えるということで、エネルギー消費を無限に増やすことはできない。だからそれがいまではエネルギー問題、炭酸ガスによる温暖化問題として、全世界的に表面化しているのである。

 後の時代ほど良くなることは確かにある。いま北朝鮮に住んでいるとしたら、希望は大きい。将来は良くなるに決まっているからである。しかし後の時代のほうが悪くなることもかなりあるらしい。とくに日本の世間はそうなったのではないか。以前からそう疑っていた。川さんのお話を聞いて、やっぱりそうじゃないかと、意を強くした。

 インターネットが普及して、小学生がケータイをもつ時代に、昔の話なんかしたって、しょうがないだろうが。技術の進歩という面は、どうにもしょうがない。手のつけようがない。しばらく待って、人と世間がどうなるか、見るしかない。でも日常の人間生活に関わることは、昔もいまもそうは変わらない。いまの時代だって、赤ん坊がパソコンやケータイを握って生まれてくるわけではない。

 フツーの日常がもうちょっとなんとかなりませんかねえ。そういう対談になった。日常だから、あまり肩肘を張っても続かない。テキトーとか、ボチボチということで収めるしかない。気勢は上がらないかもしれないが、いまさらカラ元気を出す歳でもない。肩肘張った結果がひどいことになった。その時代を知っている年寄りの反省と思って読んでいただければ幸いである。

養老孟司 
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