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貧困を救えない国 日本
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政治・社会
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第五章 精神疾患が生み出す貧困

『貧困を救えない国 日本』
[著]阿部彩 [著] 鈴木大介 [発行]PHP研究所


読了目安時間:28分
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鈴木 第一章で、女性の貧困者は若い人ばかりが取り上げられる、それは統計的にも間違っている、っていう阿部先生からのご指摘があったじゃないですか。中高年の貧困女性の存在を無視している、と。


 それ、僕もその共犯者だと認めざるを得ないわけですが、じゃあ、なぜ中高年女性の貧困について書かないのかというと、難しいんです。

阿部 難しい?

鈴木 中高年女性の貧困者の取材をしていないわけじゃないんですけど、はっきり言いますと、中高年女性の貧困者の面倒くささが半端ない。ほんと面倒くさいんですよね。

阿部 どんなふうに?

鈴木 こじらせている。中高年女性の貧困には離別が絡んでいることが多いじゃないですか。それは離婚のダメージが、男性と女性で違うということですね。


 シングルマザーでセックスワーカー、しかもシングルマザーになったあとにセックスワーカーになった人の取材をしたときに思ったのは、精神疾患率の高さです。ほぼ全員にDV歴があり、ほぼ全員に精神科通院歴がある。離別がその人に与える経済的な影響のベースに、精神的ダメージの大きさが絶対あると思うんです。精神的にやられて、まともに働こうにも働けなくなる人が多いはずなんですよ。


 ただ、僕が記事にするにあたっては、そのような精神状況にあるということが入り口になるんだけれども、エビデンスがない。例えば離別して貧困に陥った女性の精神疾患率、個別のケースの説明にそうしたデータも加えると、おそらく見えてくると思うんですよ。貧困にとっていかに精神疾患が大きな問題かってことが。貧困の議論でも、そこのところがすっぽり抜けちゃっていますよね。同じ状況でも貧困に陥る人と陥らない人の差があるので難しいのかもしれませんが、それは性差とリンクしているかもしれない。差別を恐れて語られない部分もありますよね。そこが数字に出ているかもしれない。

阿部 それはやっぱり離別女性の多くがDVの被害者だからというところが大きいと思いますよ。

鈴木 そうですね。過去の被害経験と貧困リスクは、絶対に比例している。

阿部 ただ、暴力の部分ってほんとに記事になっていないですよね。離婚の中での暴力というのはとても大きな問題なんですが、あまり議題にされることがないんですよ。


阿部 母子世帯のお母さんの抑うつ傾向は、ふたり親世帯の母親より高いというデータもあります。

鈴木 貧困に陥っている母子世帯の精神疾患率ですか?

阿部 貧困であっても、なくても、母子世帯の母親の抑うつ傾向は三五%、対して、ふたり親世帯の母親は一六%という調査結果があります。

鈴木 そうなんですか。僕の取材したケースでは、DVを受けた女性の精神疾患率がほぼ一〇〇%なんですよ。取材前はDVをする夫と別れたら、その人はようやく自由を得てハッピーになると思っていました。ところが、そうじゃなくて。

阿部 じゃないのね。

鈴木 実はDVを受けて離婚したら、そのあとの心の病のほうがずっと長く強く続くんですよね。なので、暴力を受けた人間が精神疾患を患って、そのあと続く長い就業困難の時期というものがどのぐらいあるのかって考えた上で、医療的なケアを施す必要があると思うんです。離婚に至ったケースで、その理由にDVがある女性というものは、その段階で貧困の予備層として捕捉できるはずなんですよね。本当はそういうところからちゃんとケアしていかなきゃいけない。


 あと、常々思っているのは──精神疾患になった離婚後の女性が精神科なり心療内科なりに行きました。お医者さんが、(うつ)病の診断をしました。女性はその診断書を持って社会福祉事務所に行き、じゃあ、生活保護の手続きをしましょうね、となりました。まあ、自力で行けるケースのほうが少ないと思うのだけど、多くの場合、それではもう手遅れなんです。お医者さんが生活保護の認定ができます、と言った段階でもう遅い。なぜなら、すでに働けない状況になっちゃってるんで。なのでもっと早くに捕捉したほうがいいですよね。

阿部 まったくその通りです。離婚女性の多くはDVで相当精神的にまいっているはずだ、という認識が政策側にも足りないんですよ。


 それと社会福祉事務所も離婚届を受理する役所も、子どもがいれば児童扶養手当をもらいに役所に行かなきゃいけないんですけれども、そこで傷ついてしまう人も多い。非常に辛い状況にある人たちに対する接し方じゃないんですよ。しかも、毎年、役所に行って現況届を出さなきゃいけない。その精神的負担が考えられていないですよね。

鈴木 考えてないですね。メンタルを病んだ人にとって、手続きごとや交渉ごとや事務作業が何よりも辛いことなのに、それを自力でやらないと扶助が受けられないというのは、拷問です。


 そして、そのメンタルの回復を待たずして、働けコールの嵐です。

阿部 スタンスが、働け、働け、ですよね。

鈴木 とても働ける状況じゃないですよね。

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