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イソップ寓話の経済倫理学
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経済・金融
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第三章 利己主義と利他主義

『イソップ寓話の経済倫理学』
[著]竹内靖雄 [発行]PHP研究所


読了目安時間:19分
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百姓と木




 ある百姓の土地に一本の木があった。その木には実はならず、ただスズメややかましいセミどもの避難場所になっているだけだった。そこで百姓はこの木を切り倒そうとして(おの)で一撃すると、スズメやセミは、「切り倒さないでそのままにしておいて下さい。そうしたらここで楽しい歌を歌ってあげますから」と頼んだ。しかし百姓は耳をかさず、斧を打ちおろした。そして木に穴を開けた時、ミツバチの巣と蜜を見つけた。百姓は蜜をなめると、斧を投げ出し、この木を神聖なものであるかのように言って大事にすることにした。
(イソップ)



◇人は、当たり前のことながら善行よりも利益を愛する。
◇他人を助けることは善行であるが、実際にその善行をするには、それが自分にとっても利益でなければならない。他人に対する善行が自分にとって損になり、大きな犠牲をともなうような場合は、善行をなすことにはならない。ただ利他主義を実行せよといわれても、それに従うわけにはいかないのである。
◇逆に自分の利益になることがたまたま他人にも利益になるような場合には、人は喜んで他人のために善行を施す気にもなる。ただし、これは本当は自分の利益のためにやっているにすぎない。何かを神聖だといって崇拝するのも、それが自分の得になるからである。
◇自分の利益になることをしようとするのが人間の生き方の基本原則であるから、これを利己主義だといって非難しても始まらない。人間が他人のために何かをするのも、それが利己主義の原則に反しない限りにおいてであり、極端な自己犠牲をともなう利他主義や献身や社会貢献といったものはありえないし、それを人に要求するのも間違っている。


狐と役人




 ある家の書斎に狐が住みついていた。狐は人と会話を交わしたり、瓦や石を投げつけたりするが、姿は見えない。この話を耳にしたある役人が狐を追い払ってやろうと思ってやってきた。そして人間と妖怪とでは住むべき世界が異なるので、互いに領分を侵してはならない、といった理屈を滔々(とうとう)と述べていると、朗々とした声が聞こえた。
「あんたはたしかに役人としてはましな方だ。人民を可愛がっているし、賄賂も取らない。しかし、あんたが人民を可愛がるのは実は名声がほしいからだし、賄賂を取らないのはあとの災難が怖いだけのことだ。だから私はあんたから逃げない。もうご託をならべるのはやめた方がいいね。余計なおしゃべりをしてひどい目に遭わないことだ」

 こう言われた役人は返す言葉もなく引き下がった。
(聊斎志異)



◇役人も政治家も、公共の利益のために自分を捨てて奉仕しているのではなく、すべて自分の利益を第一にして行動している。役人は業績をあげて出世したいのだし、政治家も同様である。また両者ともチャンスがあれば私腹を肥やす。ただ、そうやって自分の利益をはかることが、時に公共の利益の増進と一致していることもある、というだけの話である。自分を犠牲にしてまで公共の利益に奉仕することはできない相談であるし、役人や政治家にそれを期待してもムダである。そこで狐は「お前の立派なお役人ぶりも所詮は利己主義以外の何物でもないではないか」と喝破(かつぱ)した。
◇この話には続きがある。この家の持ち主の下男の女房は山出しで頭も悪かったが、この女だけは狐を恐れず、狐の方でも手を出さなかった。
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