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若者の「心の病」がわかる本
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第1章 「ひきこもり」と「いらだち」の病理

『若者の「心の病」がわかる本』
[著]町沢静夫 [発行]PHP研究所


読了目安時間:28分
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衝動発散型とひきこもり型


 現代青少年を心の病理から考えてみると、大きく二つに分けられると思われる。一つは衝動(欲望)発散型であり、もう一つはひきこもり型と私は名づけている。

 衝動発散型は、自分の欲望をまるで台風のように発散し、時には非行に、時には家庭での暴力に走っていくものである。彼らは現代の消費社会を思うがままに利用して、自分を見失ってしまう青少年たちである。専門的にいえばボーダーライン(境界性人格障害)が中心となっている。

 他方、ひきこもっている青少年たちはこの騒々しい消費社会から閉じこもり、対人関係で傷つくことを恐れ、自分の部屋に閉じこもり出てこないのである。それは高校生であれ大学生であれ予備校生であれ、また本来はサラリーマンであるべき青年であれ、現在極めて多くなりつつある。これも専門的には回避性人格障害や分裂病質人格障害、依存性人格障害が含まれている。

 ひきこもりは、特に男性のほうに多く見られる。彼らはひきこもるからといって、おそるべき孤独の中にいるというのではない。ひきこもっても、自分の部屋の中には多くの情報をキャッチする道具を備えている。テレビをはじめラジオ、ビデオ、電話、テレビゲーム、パソコンといったものを自由に操る。彼らは、食べ物の心配さえしないですむなら、居ながらにして全世界の情報を手に入れることができ、そこでは王子様であり、王女様という存在になりうるのである。

 このようなひきこもりのケースでは、どちらかというと親が一人で私のところに相談に来る。「このままでは働けない人間になる。私たちが死んだ後には、この子はどうやって生きてゆけるのでしょうか?」と心配して、外来に来ることが多い。本人は概して親ほど深刻に考えていない。しかし全く考えていないのではなく、自分の将来に関して、漠とした不安を感じているのである。

 衝動発散型の青少年とは、消費社会にうってつけの人間である。なぜならば消費社会とは、人の欲望をそそり、たくさん消費してもらおうとする社会であり、それを抑制し、モノを倹約している人ばかりいては、消費社会は成り立たないのである。

 この消費社会を成り立たせながら、それが行き過ぎてしまった一群の青少年が、衝動発散型の人間であるといってもいいであろう。彼らは現代の消費社会に踊らされ、社会は、彼らをますます衝動発散型に導いてしまうという、相互循環的な関係になっている。

幻想的な自尊心


 また一方で、ひきこもり型も、情報化社会と密接に結びついていることはいうまでもない。彼らは人と人との直接的接触を避け、おびえている。彼らの多くは自尊心が傷つきやすいタイプである。なぜ傷つきやすいかという理由は、彼らは非現実的なまでに高い自尊心を保っているからである。そのため現実との接触によって、自分の自尊心が試されるとなるとおびえてしまうのである。

 彼らの高い自尊心は、家の中で保てるものであり、社会にあってはむしろ劣等感が強いのである。彼らはほどよい自尊心におさまらず、非現実的なまでに、幻想的な自尊心に閉じこもっている人たちともいえる。

 さらに別の言葉でいうならば、小さい時から母親によって自己万能感をいつまでも持たされ続けており、そのために自己万能感を発揮できないまま、外の社会におびえ、ひきこもってしまうのである。つまり彼らは自尊心のほどよい調節ができないのである。

 衝動発散型、あるいはひきこもり型に共通しているのは、ともに対人関係が不得手であると言える。どちらかというと、ひきこもり型のほうが、当然対人関係が苦手ではあるが、衝動発散型の若者たちも、決して対人関係は得意ではない。いかに外向的に振る舞っていても、彼らの訴えは、親しい友だちがいない、何でも話せる固定した友人がいない、という深刻な状況であることが多い。

 したがってひきこもる若者も、衝動発散型の若者も両者ともに対人関係が学びきれず、それゆえ心と心を結びつける仕草がわからない。よっていつも孤独に陥りがちになり、また虚無感に陥りやすい状況になっているのである。昨今、衝動発散型の若者よりもひきこもる若者のほうがより増加しつつあるようだ。若者は衝動的になるエネルギーすら失い、アパシー(無気力)のままひきこもる方向に向かっているのであろうか。

衝動発散型 お金でしか女性と付き合えない医学部志望生


 ある大学生が私の外来に通ってきた。彼は月に四〇万円の仕送りを受けていた。その四〇万円を一体何に使うのかというと、バーやキャバレー、スナックといったところの、要するに女遊びに蕩尽(とうじん)してしまうという。そのため借金がかさみ、カード破産ということになって、実家の母親に知られてしまい、大問題となった。その後、そのストレスから身体的な不調を訴えて、病院に来るという結果になったのである。

 彼の場合は衝動発散とはいえ、対人関係がうまく学べなかったため、結局お金で女性と付き合うことしかできなかったという側面がみられた。彼はもともと医学部志望であり、すでに四浪もしていたのである。
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