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努力しだいで知性は磨かれる
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生き方・教養
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第III部 ことばの法

『努力しだいで知性は磨かれる』
[著]渡部昇一 [発行]PHP研究所


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英語をいかに学ぶか


106 英語教育の基本は正確な英文和訳だ


 私の英語教育論は、たいへん保守的な、新味のないものである。

 先生は正しい発音を教えるように心がけること。あいさつぐらいの会話はやってもよい。しかし中学上級から高校にかけては、ともかく正確に、自覚的に英文和訳をやり、できる生徒には英作文をやらせる。知力が飛躍的に増大することはまちがいなしである。

 さて会話であるが、これは外人がいる環境でないとまあ駄目である。日本のなかにもそういう環境がないわけではないが、いちばんいいのは留学だ。博士や修士とまではいわなくても、学士ぐらい取るつもりで行くと、本当に英語が身につく。
(『レトリックの時代』)

*会話重視の英語教育は、まともな英語を理解不能にさせるだけでなく、真の日本文化豊饒化の基礎となる日本語の発育を阻害する。会話重視の主張は、多く、会話が通じなかったエリートのルサンチマンからくる。


107 学校英文法、受験英語の威力を考えてみよ


 戦後私は比較的短期間にかなり難しい英語を読めるようにもなり、何とか英語の手紙も書けるようになった。これは何と言っても受験参考書のおかげである。いわゆる「学校英文法」のおかげである。私の体験に関する限り、これについて一点の疑問もない。また、私の同級生で英語を読み書きできるようになった者は例外なしに受験英語を「あげた」者ばかりである。

 もっとも近頃では、受験英語をあげる知力も根気もない若者が、金のある親を持ったおかげでアメリカなどに行き、一見ペラペラに英語ができるようになって帰ってくる例もある。しかしそういう若者がアメリカに行ったからと言って、まともな文章を正確に読み書きすることが急にできるようになるわけはあるまいと私の「常識」はささやく。

 ともかく、学校文法をあげることのできない高校生には英文解釈や英文和訳を教えることがほとんど不可能であるということは、実際、教えてみたことのある人たちにとっては、コモン・ノレジという意味での「常識」になっていると思うし、そのように外国語を読み書きする能力を一ぺんに開発する学校文法の中に“何”あるだろうと考えるのはコモン・センスの意味での「常識」ではないだろうか。
(『秘術としての文法』)


108 英文法を学べば、ゼロから出発して二年後にはベーコンを読むことができる


 日本語から何らの類推も許さぬ異質の言語である英語を、ゼロから出発して二年後にはちゃんとしたものを読めるようにし、手紙程度の英語を書けるようにしてくれたのは、ほかならぬ英文法であった。

 語彙が少ないから辞書を引く時間が多く、速読できなかったのは仕方がないとして、ゆっくり読んでもよいという条件のもとでなら、同じ年齢のアメリカ人の青年とくらべて、ベーコンをより不正確に読んだということはなかったと断言する。
(『秘術としての文法』)

*ベーコン、フランシス(1561─1626)。イギリスの哲学者。名門の生まれで、近代的学問の創始者といわれる。法曹界でも重きをなす。主著に『ノヴム・オルガヌム(新機関)(1620)がある。私がここで読んだのはベーコンの『随筆集』。


109 自国語(英語)に対する劣等感が消えたとき


 十八世紀の前半にイギリス人の間から急に英語に対する劣等感が消えていったことは注目すべきことである。では何故に急激にそういうことが起こったのであろうか。誰か偉大な作家が出たのであろうか。

 この理由は私の見るところでは、非言語的な理由からである。つまりウォルポールの穏健な長期安定政権と無原則とも見える巧妙な外交政策により、イギリスはヨーロッパ大陸のごたごたに巻きこまれず、十分休養した民力と蓄積された厖大な富を持つに至った。

 軍事に消耗されることのなかったエネルギーは通商に向けられ、海洋大国、経済大国の基盤が固まったのである。そうすると「フランス何するものぞ」という気風が出てくる。つまりフランスはもう手本にならないという実感が生じてきたらしい。
(『国語のイデオロギー』)

*ウォルポール、サー・ロバート(1676─1745)。イギリスの政治家。一七二〇年から四二年まで、大蔵大臣兼財務長官をつとめ、実際上の首相として長期安定政権を敷いて大英帝国の基を築く。


110 学者は、新しい学説を批判しにくいものだ


 私は若造のくせに構造言語学批判を活字にして雑誌に出した。当時、新言語学と呼ばれていた構造言語学を批判する蛮勇のある英語学者はまずいなかったから、私の批判は今になってみると貴重なる青春の足跡となっていると言える。

 今から考えると、私がそんな生意気なことができたのは、日本の大学における私の恩師には英語学者がいないので勝手なことを言っても身辺に面倒が起きる心配がなかったからだと思う。
(『英文法を撫でる』)

*戦後主流となった構造言語学は、「各言語は構造上一つの体系をなす。だから、その体系外のことを考慮する必要はない」と主張した。もし一言語の体系外を顧慮することなく正しくテキストの意味解釈ができれば、こんな簡便なことはない。言語学者や哲学者を惹きつけさせるに十分であった。

 しかし、現在、構造言語学をやる英語学者はほとんどいなくなった。書物を正確に理解する能力を増進させることには関係がないからであろう。


111 「簡約オックスフォード辞典」(C.O.D.)の威力


 確かにC.O.D.は大した辞書で、ベーコンの問題の個所の解釈に都合のよい同意語が必ずあげてあるのだ。同年齢の少年としては、当時の私は世界で一番よくC.O.D.をひいていたのではないかと思う。そして文法と単語の両方がしっくりした時、そこでベーコンが述べている内容については、もはや疑問をさし挟む余地はないという気がしたものだった。
(『英文法を撫でる』)

*C.O.D.(Concise Oxford Dictionary)を引くようになったのは、恩師の佐藤順太先生の影響であった。

 授業での順太先生は、ベーコンの文章にある単語をどう訳すべきか、と考えさせ、私を指名して、C.O.D.にはどんな解釈が載っているか、と聞かれる。私が単語帳に抜き出してきた同意語をあげると、「それそれ、それがいい」と言われる。このように、私は英文法とボキャブラリイ(語彙)をもとに、英語の世界を開いていった。


語学を身につけるコツ


112 外国語との格闘は、母国語との格闘なのだ


 単なる実用手段としての外国語教育は母国語との格闘にならない。
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