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(2021/11/26 追記)

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金持ちゾウさん、貧乏ゾウさん
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第6章 お金はどこに消えた?

『金持ちゾウさん、貧乏ゾウさん』
[著]本田健 [発行]PHP研究所


読了目安時間:26分
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トルーゾ、裁判にかけられる


 トルーゾが捕まったというニュースは、一瞬にしてカネー村に広まった。
「全員、お祭り広場に集まるように」という緊急放送が村に流れた。この広場が使われるのは、新年と、春、夏、秋のお祭りの4回だけだ。そこに村の全員が集まるのだから、何か特別なことが起きるにちがいないとみんな緊張した。

 ナイーゾも、家族で広場に行った。集まってきた村のゾウたちの顔は、一様に暗かった。「トルーゾを絶対に許さない!」と言わんばかりに鬼の形相をしたゾウもいた。

 3日前までとは、えらい違いだ。もうだれも「イェーイ」なんてハイタッチはしていない。もし、そんなゾウがいたら、袋だたきにあっただろう。

 舞台には、疲れ切ったトルーゾが、ヨレヨレの姿で立っていた。老けた顔のメイクもまだらに残っていて、今にも死にそうなおじいさんに見えた。

 ヤルーゾは舞台の前に進み出て、集まったゾウたちに語りかけた。
「カネー村のみんな、集まってくれてありがとう。おれはなんでもヤルーゾ。今回のヘッジホントで、大金を預けていたゾウもたくさんいたと思う。みんな自分のお金がどうなったか、心配しているにちがいない。実際にどうなったのか、彼自身に聞いてみようじゃないか。さあ、トルーゾ、正直に話すんだ」

 トルーゾはビクビクしながら、消え入りそうな声で話しはじめた。
「本当に申し訳ございません。村のみなさんには多大なご迷惑をかけてしまいました。ヘッジホントの生みの親であるイェーイ大学の教授は、とんでもないゾウでした。みなさんのお金は、最初は適正に運用されていたのですが、途中から約束していた配当を出せなくなってしまったようです。そこで教授はやけっぱちになって、アンティークのバービーゾウに、みなさんから集めたお金をつぎ込んでしまったというのが真相です。その事実を知って、あまりのショックに怖くなって逃げ出したんです。ごめんなさい」

 みんなは、にらみつけるようにして聞いていたが、口々にさけびだした。
「おれたちのお金はどこに消えたんだ?」
「私のお金を返してよ!」
「あのお金がないと、困るんだよ!」

 頭を下げたままのトルーゾは、唇をかんで真っ青になっていた。
「みなさんから集めたお金は、ナニシタイン教授にすでに送ってしまっています。口座に残っているお金は、ここ数日のあいだに入金していただいた分だけです。まさか、こんなことになるなんて……。返せない分は、ぼくの自宅を売って弁済します。足りない分は、一生かかってもお返しします。本当に申し訳ございません」


 その言葉を聞いて、怒るゾウ、泣き出すゾウ、ガックリ力を落とすゾウたち……。

 エンゾーは、そんなおとなたちの姿を見て、お金のことでこうも変わるものかと怖くなった。アルーゾはお金の授業のなかで、お金にはすばらしい力と心の闇を引き出す力があると言っていた。これがお金のダークサイドのパワーなんだとエンゾーは理解した。

 一部のゾウたちが興奮し、おたけびをあげながら、トルーゾに向かって突進してきた。危ない! このままだと、大暴動になるかもしれない。

 エンゾーは、さっと壇上に駆け上がると大声で叫んだ。
「みんな、どうかしてるよ!」

 なだれ込んできたゾウたちは、ハッとしてその場で足を止めた。

 エンゾーは前をしっかり見ながら話しはじめた。
「カネー村のみなさん、ぼくは、まだ11歳で難しいことはわかりません。でも、ヘッジホントがすごいって言ったのは、ここにいるみんなじゃなかったんですか? タネーゾおじさんは、トルーゾは神様だ、おれは一生ついていくって言ってました。あれは、なんだったの?」

 トルーゾめがけて駆けてきた靴屋のタネーゾは、ばつが悪そうに横を向いた。

「学校でも、いじめはよくないって言っているよ。トルーゾおじさんも悪かったけど、こんなのおかしいよ」

 会場はシーンと静まりかえった。沈黙を破るように、ヤルーゾが演台に上がった。
「エンゾー、おまえの言うとおりだ。ヤメルカ国の教授やトルーゾも悪いが、おれたちにも落ち度はある」

 ヤルーゾは、会場をすみからすみまで見回しながら言った。
「おれも、ヘッジホントは、ちょっとあやしいと思っていた。働かないでお金が増えていくなんて、信じられなかったからね。でも、最後は欲に負けてお金を預けてしまった。この会場にいるみんなに聞きたい。おれと同じように、最初のころ、疑問を持っていたやつは正直に手をあげてくれ」

 すると、ほとんどのゾウが、ばつの悪そうな顔をしながら、ゆっくり手をあげた。
「ほら、そうだろ。最初のころは、みんなどこかで疑っていたんだ。だけど、何もしないでも増えていく計算書の数字を見せられたら、いたたまれない気分になった。一生懸命、汗水たらして働いた稼ぎの何倍ものお金が、毎週、自動的に増えていく。
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