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日本人の本能 歴史の「刷り込み」について
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文庫版のためのまえがき

『日本人の本能 歴史の「刷り込み」について』
[著]渡部昇一 [発行]PHP研究所


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 本書は今から二年半前にハードカバーで出されたものである。その際に収録された論文にはその成り立ちの背景などを説明してあるので、重ねて説明することも訂正することもない(「まえがき」参照)

 今、収録論文を読み返して見ると、いずれもすこぶる今日的問題である。主題によっては現在の方がかえって切実になっている感じのするものもある。

 たとえば今日(八月十五日)戦没者慰霊祭において、小渕首相は近隣諸国に迷惑をかけ、とか、何とか言っておられた。戦没者の慰霊に「近隣諸国へかけた迷惑」などを口にすること自体、戦没者の霊への冒涜行為であることが、首相にもわからなくなったのが今日の日本である(日本国民統合の象徴であられる天皇陛下のお言葉にはそのような近隣諸国云々の言及はなく、慰霊に徹しておられたのは嬉しいことであった)。戦争というのはたいてい近隣諸国とやるものである。アメリカの大統領が、アーリントン墓地で原爆や無差別爆撃を口にするわけがないではないか。

 さらに首相をはじめ閣僚の中には靖国神社を参拝しない人たちもいた。これも近隣諸国への遠慮である。自分の国の為になくなった方々の慰霊を他国に遠慮する首相の姿こそが、東京裁判のマインド・コントロールにかかった日本人の姿なのである。

 本書の出版後に顕著に変わったことと言えば、日本の歴史教育は日本人の品格と本質的に結びついているという認識が広まり、新しい教科書を作る運動も活発になってきた。これは喜ばしい傾向である。シナ事変はシナ側が起した戦争であること、大東亜戦争は侵略戦争でないことは、東京裁判をやらせた当のマッカーサー自身も後で公の場で認めていること、などなどの歴史的事実を国民みんなに知ってもらうことが今後の重要課題であろう。

 また今年は韓国独立五十周年記念がはじめて韓国で行なわれたという新聞記事を見た。戦後五十三年のはずではないか。事実は、当時の朝鮮総督の阿部大将も朝鮮軍司令官の上月中将も、日本政府のポツダム宣言受諾を聞いて、すぐに朝鮮の独立の手を打ちはじめていたが、後で進駐してきたアメリカ軍が、「朝鮮は独立の資格なし」として軍政を()いたのである。韓国が独立したのは日本からではなくてアメリカからだったのだ。

 つまり五十年前である。この事実を書いたり、講演で指摘したりしてから何年にもなる。ようやく韓国の歴史認識もまともな方に一歩進んだという感じで、嬉しいニュースであった。

 また最近、必要があってロバート・オウエンの伝記を読み返していたら、彼の「新しい村」の成功と失敗の原因がよく見えてきた。彼が大成功したニュー・ラナクの村の実験は、そこの村の住人や、子供たちがすべてオウエンの会社の繁栄に支えられていたからである。

 彼は天才的な事業家で、工場から上る利益は、五パーセントの株式配当をした後は、従業員の福祉に使ったのだった。それで会社にも村にも泥棒、泥酔、喧嘩、不品行はなくなり、子供たちは健康で明るく、行儀正しく、上品になるという奇跡的現象が起り、この南スコットランドの小村の名は全ヨーロッパに知られ、年間、二千人もの見物・視察の人が来るようになったのである。当時の交通状況など考えれば、二千人というのは途方もない数字であるが、来た人はみんな深い感銘を受けて帰ったのだ。

 ところがオウエンはこの会社を売り、巨大な資金を手にし、「新しい村」をスコットランドやアメリカに作るが、いずれも失敗する。その理由は明らかであろう。成功したニュー・ラナクの村は、彼の企業の繁栄を通じて実現されたものだった。そのほかの「新しい村」は、彼の資金と理想によってのみ作られたので、恒久的な経済的繁栄の基盤に欠けていたのである。ここで故・松下幸之助の偉大さが示される。PHPすなわちPeace and Happiness through Prosperityの理想に籠められた天才的洞察は、「繁栄を通じて」にあったのだ。オウエンの例と比較して本書の最終章の補足としたい。

 本文庫の出版に当たってはPHPの細矢節子さんのお世話になりました。厚く御礼申し上げる次第です。

平成十年 八月十五日
渡 部 昇 一
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