読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン

12/21に全サービスをRenta!に統合します

(2021/12/6 追記)

犬耳書店は2021年12月21日に、姉妹店「Renta!(レンタ)」へ、全サービスを統合いたします。
詳しくはこちらでご確認ください。

0
-1
kiji
0
1
1245972
0
歴史の鉄則
2
0
0
0
0
0
0
政治・社会
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
文庫版のためのまえがき

『歴史の鉄則』
[著]渡部昇一 [解説]竹内靖雄 [発行]PHP研究所


読了目安時間:4分
この記事が役に立った
0
| |
文字サイズ


 毎年、一月頃から節税を教える税金の本が駅の売店などによく出る。また専門書でも税制の立派な本は書店に沢山並んでいる。相続税の解説書もよく目につく。そういう本に私は関心がない。それは税理士などの専門家のためであろう。第一、そんな数字づくめの本を読む(ひま)もないし、読んでも解らないだろうし、解ったとしても頭に残らないだろう。

 言うまでもなく私は税金に関するずぶの素人である。しかしだ、毎年八桁の税金を納めている当事者であることには違いないから、税金について日頃自分が考えていることをまとめてみたいと思った。その際に自分の税金についての考えの出発点になっているのは二人の人の思想であることに気がついている。一人はパーキンソンである。この軍事史家であるイギリス人は、チェスタトン張りのユーモア溢れる文章で、高い税金は必ず国を衰亡に導くことを説得力を以て述べている。パーキンソンにして見れば、世界に冠絶した英国の繁栄を潰したのは高率の税金にほかならなかった。ついでに言っておけば同じくイギリス生れの軍事史家のポール・ケネディは、イギリスの勃興は主として税金が安かったからにほかならぬことを、その著『大国の興亡』の中で述べている。パーキンソンにして見れば低率税で繁栄していたイギリスが、高率税で衰退していったプロセスは自分の眼前に見たことであったのだ。いくらユーモラスに叙述してもその書物に異様な迫力があることに不思議はない。

 もう一人はハイエクである。このノーベル経済学賞に輝く大学者について廻って講演の通訳をさせていただいたことは、若い私には啓示的体験の連続であった。そしてここ約半世紀の間に世界で出版された本のうちで最も重要な一冊である先生の『隷従への道』を繰り返し精読したことは、私の人生観の基本にかかわることであった。そして社会主義の極である共産主義国家では税率が極大になった状態、つまり私有財産が没収された状況であることもよく解った。

 税というから、学問や数字の世界のように思われる。年貢(ねんぐ)と言い直したら誰にでも解る。いい年貢とか合理的な年貢などを議論する必要は全くない。安い年貢以外はすべて悪い年貢である。百千の税金論があろうと、この鉄則は動かない。そして年貢を高くした国が必ず衰亡することは昔のシナで孟子も言っていることである。年貢を極大にしたために──財産私有制を廃止したために──超大国ソ連も解体し東ヨーロッパの旧先進国群も崩壊した。

 日本でもバブル潰しと称して一連の新税を導入したり、税率を上げたために、一千兆円とも二千兆円とも言われる国富が失われ、世界一の資金量を誇る日本の銀行群もゆらぎ、株価は低迷し、不況も長い。ようやくそれに反省が出て、税率を下げようという案も現われた。それに反対しているのは誰かよく見るがよい。社会党、さきがけ、共産党……など、その正体は今述べたような社会主義ヴィールスに感染している集団である。
『歴史の鉄則』では税率は一割でよいこと、その根拠は現在では富の性質が変質してきていることを柱にして述べている。所得の大小にかかわらず一律一割、つまりフラット税制ということは、はじめのうち、PHP総合研究所の世界を考える京都座会のメンバーのような進んだ人たちの間でもあまり反応がなかった。しかし私はハイエク先生の教訓にしたがった。その教訓とは「社会主義に学ぶことはないが、ただ社会主義者に学ぶべきことが一つある。それは()くことなく、いつでもどこでもその主張を繰り返すことである」というのであった。その教えを私も拳々服膺(けんけんふくよう)して、機会があれば、いつでもどこでも一律一割税を主張し続けた。最近では政府税調委員長の加藤寛氏も、消費税を高くすれば一律一割も不要だと言っておられるし、同じく税調委員の堺屋太一氏も同じ意見のようである。

 つまり一律一割税の主張は、本書が出版された頃は、まだ奇嬌な意見と思われ勝ちであったが、今や、政府税調委員長の言うように消費税を十数パーセントか二十パーセントにして無税国家にするのもいいが、まずは一律一割税にし、それで足りないところを消費税で補うのでよいのではなかろうか。

 本書を読んで下さって一律一割税の理念とその合理性に賛成できると思われる方は、勇気を以て、いつでもどこでも機会があったらその主張を繰り返していただきたい。そして日本を繁栄させるのは、沢山の税金を納めることでなく、少ない税金でやっていけるようにすること、このことのみによって長い繁栄を達成させることができるのだということを主張していただきたい。高率の税金は必ず国を衰亡させるのであるから。

平成七年 十二月
渡部昇一
この記事は役に立ちましたか?

役に立った
0
残り:0文字/本文:1936文字
この記事を買った人はこれも買っています
      この記事を収録している本
      この本で最も売れている記事
      レビューを書くレビューを書く

      レビューを書いてポイントゲット!【詳細はこちら】

      この本の目次