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歴史の鉄則
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政治・社会
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第二章 累進課税が日本を滅ぼす

『歴史の鉄則』
[著]渡部昇一 [解説]竹内靖雄 [発行]PHP研究所


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──国力粗鬆症を防ぐ税の鉄則──

(一) この世には「払う税金」と「取る税金」しかない
──どうして政府は取りたがるのか──

とにかく「巻き上げられるもの」が税金


 税金とは、本来国家や国王がその政府を維持するために、国民から強制的に徴収した歳入を言う。何にかけたかと言うと、人頭(じんとう)(つまり人間の数)、土地、収入、物品、取引、領内の通過、橋の通過などで、場所によっては、犬やウサギや窓の数にもかけた。

 英語で税金のことを普通tax(タクス)と言うが、「義務的な労働」を意味するtask(タスク)も、昔は税金を意味していた。つまり、tax(タクス)task(タスク)も同じ語源から発していて、それが時間が()つうちに、()()(おん)が入れ替わって、税そのものを意味する言葉と労役を意味する言葉に分かれたわけである。古代日本の税制で言えば、tax(タクス)は「()」、task(タスク)は「(よう)」ということになる。

 taxの語源をさかのぼると、tangere(タンゲレ)(触れる)という言葉と同じになる。つまり、「手で触れて査定し、それに基づいて税を取り立てる」ということだった。

 今でも高速道路や橋を渡る所に、toll(トル)と書いてあるが、これは「(高速)料金」「橋銭(はしせん)」のことで、ドイツ語のZoll(ツオル)(関税)と同じ語源である。ギリシャ語にはtelos(テロス)(目的、終わり)という言葉があって、「最終的に支払う」という意味を表わしている。

 その他に、下の者が上の者に「義務として差し出す」という意味のduty(デューティ)という言葉があるが、フランス語では逆に、上の者が下の者から「権利として巻き上げる」という意味のdroit(ドロワ)がある。

 一九八九年頃に日本で大騒ぎして導入した消費税があるが、これに近い英語はexcise(エクサイズ)である。excise(エクサイズ)には、「消費税」という意味と「(けず)り取る」という二つの違った意味があるが、元々は「売上げの中から削り取られる」という語感から来たと思われている。イギリスでは、一六四三年にオランダに真似て導入された。

 税金は、「上の方から割り当てられたもの」という感じが強いが、それに似たものは上に置くことから生じたラテン語のimpostus(インポストス)を語源とするimpost(インポスト)(英語)impot(アンポ)(フランス語)がある。ただ、今ではあまり使われていない。これに近い意味で、「(お上が人民より)召し上げるもの」という英語に、levy(レヴィ)(徴税、招集)がある。

「動かない人々」と「動く物」の衝突


 戦後の自由貿易体制を維持するのに大いに役だっているGATT(ガット)(関税及び貿易に関する一般協定)はGeneral Agreement on Tariffs and Tradeの略称で、ここに使われているTariffとは、同じ関税でも、「国際貿易に関する関税」である。tariffは、本来アラビア語源で、アラビア語からスペイン語へ入り、フランス語を通って英語に入っている。

 面白いことに、tariffがアラビア語から英語に入る経路は、そのまま中世の貿易通路の一つでもあった。かつてのヨーロッパにとって、イスラム圏こそが真の異文化圏であり、外国貿易でもあったからである。現在も、地中海の西の玄関口、アフリカとジブラルタル海峡をはさんだヨーロッパ南端の港町に、タリファという地名として残っている。tariffは今では、貿易品に対する公式の関税表という意味で使われることが多いが、一般的にはホテルなどの料金表にも使われる。

 以前、コメを本格的に自由化した場合、どれくらいの関税をかけるべきかという記事が新聞に出ていたが、これこそtariffである。コメの関税率は、今のところ七〇〇パーセントという数字が出されているらしい。とんでもない数字でいくら何でも高すぎるし、「ホーリー・スムート関税法」だってそんな関税をかけたりしなかった。かつてイギリスで大きな政治問題になった「穀物条例」という法律がある。イギリスは産業人口が伸びるに従って、十八世紀中頃からすでに穀物輸入国になっていたが、地主や農民の利益を守るために、輸入穀物に高い関税が課せられていた。

 都市住民はそのために、不当に高い食物を買わされていたのだが、地主階級は議会に強い影響力を持っていたから、なかなか廃止することができなかった。ところが、一八四六年、アイルランドで大飢饉が起こったことを機会に、時の首相R・ピール(一七八八〜一八五〇)がこれを廃止するという経緯(いきさつ)があった。

 土地や農業に関係する税金が取り扱い困難なのは、昭和十七年に制定された食糧管理法一つ見ても、どこの国でも同じだということがよくわかる。土地から動けない農民が生産する物が、国境を越えて動く時、必ず大問題になる。

 poll(ポル)-tax(タクス)というのがあるが、これは「人頭税」と訳される。簡単にpoll(ポル)と言う場合もある。一九九〇年、サッチャー政権が人頭税を課そうということになって、このためにサッチャー夫人は、政権の座を追われるようにして去ることになった。これについては第三章で述べる。

 イギリスで人頭税がかけられたのは、一三七七年が初めだが、これはフランスとの泥沼のような百年戦争(一三三七〜一四五三)の戦費調達の意味もあった。ところが、十四世紀に全ヨーロッパを襲った「黒死病(ペスト)」のために、人口が激減してしまった。ヨーロッパ人の十人に三人は死んだと言われる。ところが、人数の激減によって、農民の中でも自由のない人々農奴(のうど)が上層の地主階級に対しては、希少であるが故に発言力を増していた。

 そのような時に税金がかけられたので、ワット・タイラー(?〜一三八一)に率いられた農民反乱が起こった。ワット・タイラーの反乱がきっかけになって、イギリスの農奴制は廃止される方向に向かう。人頭税というのは、とかく評判がよろしくないもののようである。

「みつぐ」は「公共のものを支える」ということ


 漢字の「税」という字は、「禾」という穀物を示すのぎへんに「」を組み合わせたものだが、「」は「脱」であり、収穫された穀物から「お上が抜き取る」という意味である。

 学校の授業で習う租・庸・調の「租」も、「禾」に「且」を合わせたもので、これは「組む」という意味である。つまり、「上から積み重ねる、押しつける」ということで、英語のimpostに似た語感がある。

 田畑から取る税を「租」というのだが、日本語で税金を表わす言葉は、「(みつぎもの)」であり、動詞は「みつぐ」である。「み」は敬意を示す接頭辞で、中心の意味は「つぐ」にある。「つぐ」に漢字を当てると、「継」「続」「接」などであって、お(かみ)に対して人民が、「絶えず継ぎ継ぎ(次ぎ次ぎ)に供給する」というのが根本義であると言える。

 語感からすると、「運び込む」とか「与える」とか「支える」といったニュアンスがあるが、「支える」というのは、これと同じようなものにドイツ語のsteuer(シュトイア)がある。これによって、国や教会を支えるということなのだが、考えてみれば、税金についての理論が百千あろうとも、つまるところ「公共のものを支える」というところに帰一するなら、実に的確な言葉と言える。

 ただし税金という語には、東西どちらも、上から課する、巻き上げる、捧げる、削り取る、抜き取るといったイメージがつきまとうのは仕方のないことかもしれない。しいて言えば、日本語の「みつぎもの」やドイツ語のsteuer(シュトイア)などが、税の意義を肯定したような語感を少し持っているというところであろうか。


(二) 良い税金は一〇パーセントが限界
──戦争すれば必ず税金は高くなる──

パーキンソンの第二法則──金は入っただけ出る


 税金の考察は、たいてい節税の話か増税の細かい技術的な話に限られ、つまらぬものになってしまう。そこで誰も注目しないから、根本的な議論が起きない。税金は放置され、肥大化する。

 ところが、税金の限界について、誠に深い考察を行った人がいる。C・N・パーキンソン(一九〇九〜一九九三)である。パーキンソンは、イギリス海軍の組織を分析して、
「組織は、ひとたび成立すると、仕事の有無とは関係なく肥大化する」

 という、有名な法則を発見した人である。

 だがこれは、パーキンソンの「第一法則」であって、「第二法則」については、第一法則ほどは人口に膾炙(かいしや)していない。そしてこの「パーキンソンの第二法則」こそが、税金の本質を突いたものなのである。それは、

(政府というものは)お金は入っただけ、必ず使う」


 というもので、パーキンソンの考察は極めて優れたものと言える。これからしばらくはパーキンソンの考察に従って論を進めて行こう。

 パーキンソンは、“The Law and The Profits”(邦題『かねは入っただけ出る』福島正光訳・至誠堂・一九六二年)という本を、次のような笑い話で始めている。ちょっと長いが面白いので紹介しよう。


 あるおそろしく金持ちの男が、あるおそろしく有名な外科医に、あるおそろしく危険な手術をうけた。十日経って、外科医が患者の回復の具合をたずねたところ、看護婦は答えた。
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