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新渡戸稲造の人間道
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生き方・教養
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序章 新渡戸稲造と「人間学」

『新渡戸稲造の人間道』
[著]岬龍一郎 [発行]PHP研究所


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かつて日本は「美しい国」であった


 日本人が、その昔いかに“美しい国民”であったか、それを紹介するとき、私が好んで使っている話がある。

 いまや多くの人が忘れてしまったが、それは、あの相対性理論で有名なアインシュタイン博士が、大正十一年(一九二二年)十一月、「桜の花咲く(あこが)れの国」として日本を訪れ、そのとき各地で行なった講演のなかでの話である。全部を紹介できないので、その一部分をランダムに掲げる。
「日本人は、これまで知りあったどの国の人よりも、うわべだけでなく、すべての物事に対して物静かで、控えめで、知的で、芸術好きで、思いやりがあってひじょうに感じがよい人たちです」
「日本人のすばらしさは、きちんとした(しつけ)や心のやさしさにある」
「この地球という星の上に今もなお、こんな優美な芸術的伝統を持ち、あのような素朴(そぼく)さと心の美しさをそなえている国民が存在している……」(以上、波田野毅著『世界の偉人たちが贈る日本賛辞の至言33撰』ごま書房)

 アインシュタインが見た日本という国は大正時代のことであるが、かつての日本はこのような“美しい国”であったのだ。だが、不幸なことに、その翌年、日本は関東大震災に見舞われ、数年後に世界恐慌に巻き込まれたことから、太平洋戦争への道を突き進むのである。

 アインシュタインが来日してから今日(こんにち)まで八十余年……。日本および日本人はあの戦禍(せんか)から高度成長を()げたというものの、美しい国は保たれているだろうか。純粋で静かな心は保たれているだろうか。そして、いま再びアインシュタインが訪れたとして、はたして同様の賛辞を贈ってくれるだろうか。

 残念ながら、それらはすべて「ノー」であろう。それは連日のようにマスコミを騒がせている残酷な事件や、企業ならびに公務員による不正事件を見ればわかるとおりだ。とくに「人の上に立つ者」、すなわち政治家・官僚・企業経営者・教育者たちの倫理道徳観のなさは最低の部類といわざるをえなくなった。

 たしかに、現在の日本は経済大国になった。だが、アインシュタインが訪れたころの、「きちんとした躾や心のやさしさ」「物事に対して物静かで、控えめで、知的で、芸術好きで……」といった品性は、いまやどこかに置き忘れられ、世界からは「エコノミック・アニマル」としての評価しか与えられていない。いうなれば戦後の日本は“守銭奴(しゆせんど)の国”になってしまったのである。

 なぜ、かつての日本は貧しいながらも、これほどまでに「美しい日本人」でありえたのか。逆にいえば、なぜわれわれ現代人は経済大国のなかにあって、自由と豊かさを享受(きようじゆ)しながら「醜い日本人」になってしまったのか。
「かつて」と「いま」とではなにが変わったのだろうか。いまさらながら、そのギャップに驚くばかりである。

自分を高からしめる教育がなくなった


 健全な社会をつくり、美しい自己を確立しようとするとき、もっとも必要とされるものはなにか。それは「自分を磨く」という人間学であり、それを裏付ける伝統的精神である。

 かつてはこれを「修養」「修身」といって、人が人として保たなければならない「道徳」とか「躾」とかを、家庭や学校できびしく教えていた。だが戦後、日本を改造したGHQ(連合国軍総司令部)は、日本を軍国主義へ駆り立てた元凶をこの「修身教育」と考え、民主主義教育の美名のもとに排除してしまったのである。

 日本人のほうも、豊かなアメリカに負けたことから、「精神」より「物質」だということで、修身教育で(つちか)われた倫理道徳観を唾棄(だき)し、物質主義こそ幸福への道と、国をあげて邁進(まいしん)することになった。それが今日の状況である。
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