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シェール革命の正体
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政治・社会
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第4章 中東の異変、危険が増すシーレーン防衛

『シェール革命の正体』
[著]藤和彦 [発行]PHP研究所


読了目安時間:27分
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▼シェール革命では中東の地政学リスクをカバーできない


 二〇一三年夏以降、シリア情勢等の緊迫化を受けて原油価格が高止まっている。原油市場ではしばしば中東情勢が相場乱高下の材料となるが、その理由としてまず挙げられるのは、需要量・供給能力ともに価格変動に対して硬直的であることである。このことは需要・供給曲線がともに勾配が急であることと同義であるが、原油供給能力への不安が生じると供給曲線が左へシフトし新たな均衡点を目指して価格が急上昇することを意味する。

 さらに、他の財・サービス市場に比べて価格が不安定になりやすい需給構造を有している原油市場にとって中東情勢が重要なのは、同地域が供給のバッファーになっているからである。

 オイルショック後の一九八〇年代の世界的な需要減に対してOPECが価格維持を目的とする供給削減を実施したことを皮切りに、一九九〇年代の旧ソ連崩壊、二〇〇〇年代以降の世界の需要拡大などの変化に中東地域が主導的な役割を果たしてきた。この地域は域内の消費量に比べ生産量が圧倒的に大きく、輸出余力があることが魅力的である。

 シェール革命が原油価格下落を促すとの期待があるが、いわゆる地政学的なリスクに対する脆弱(ぜいじやく)性を解決するのは難しい。米国でのシェールオイル増産を前提としても、石油の生産量は消費量に及ばず、当分の間、米国は純輸入国のままとなる見通しだからだ。

 原油市場では一物一価が成り立っているため、純輸出国に転じなくてもシェールオイルの供給能力が増大することは原油価格の下落圧力となりうるだろう。

 今後地政学的リスクが高まっても油価の上限は一バレル=一二〇ドル程度で収まる見方があるが、一方、シェールオイル自体の生産コストが高いため(一バレル=八〇ドルのコストがかかる例がある)、その限界生産コストが原油価格の下限を形成する可能性がある。

▼シェール革命への対応に苦慮するOPEC諸国


 世界の原油の三分の一以上を供給しているOPECは二〇一三年三月、世界の石油需要について、「景気低迷のため予想された増加量を下回る可能性があるとともに、米国からの供給が二十八年ぶりの高水準となり、OPEC産原油の必要性が低下する」との見通しを示した。

 米国のシェールオイルについて、OPECは今のところ冷静な態度を崩していない。大油田地帯である中東地域の動きは緩慢である。サウジアラビアにも巨大なシェールオイルがあるとの観測があるが、政府はコストの安い在来型の石油生産が先であるとの方針のようである。クウェート石油相も「米国のシェールオイルは生産量が増加してもコストが高いため、クウェートの脅威にはならない。原油市場に影響が出るには長い時間がかかるだろう」との考えを示している。

 しかしシェールオイルの生産によって、米国の中東への依存度が低下することは間違いない。二〇一三年七月、OPECは「二〇一四年のOPEC産原油の需要は日量三〇万バレル減少し二九六〇万バレルになる」との見通しを示した。世界の原油需要は日量一〇四万バレル増の九〇七〇万バレルになるが(二〇一三年は七七万バレル増)、その増加分は米国とカナダのシェールオイルが対応することになるとみている。

 OPECの事実上のリーダーであるサウジアラビアの石油相は、二〇一三年四月の講演であえてシェール革命に言及し、「米国の生産拡大は世界の原油価格の安定に貢献している」と歓迎したが、それから二週間も経たないうちに、ナイジェリアの石油相は「シェール革命はOPECにとって最も重大な脅威の一つだ」と述べた。

 OPEC内では、シェールオイルに懸念を示していないペルシャ湾岸の産油国とその他諸国との間に溝があるのだ。

 二〇一三年に入り、世界最大の石油消費国である米国のOPECからの輸入量は一九九四年以来初めて日量三〇〇万バレルを下回ったが、湾岸諸国はナイジェリア、アルジェリア、アンゴラほど打撃を受けていない。米国の精製業者は西アフリカ産の低硫黄原油の代わりに、よく似た高品質の米国産シェールオイルを使うようになっているが、粘着性のあるサウジアラビア産高硫黄原油の代替品は見当たらないからだ。二〇一二年のサウジアラビアの米国向けの原油輸出は日量平均一三五万バレルとなり、二〇〇八年の金融危機以来最高を記録したが、ナイジェリア、アルジェリア、アンゴラの対米原油輸出は前年比四一%減で、二十五年ぶりの低水準となった。

 ナイジェリア石油相は、「米国のシェールオイルはアフリカの原油収入を二五%減少させる」と警告を発しているが、ナイジェリアのような資金の蓄えのない国々では原油収入が減少すると財政に悪影響が及ぶため、中国とインドに対する売り込みに躍起になっている(インドは二〇一三年五月ナイジェリア産原油の最大の輸出先になった)。
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