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夫への詫び状
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ルポ・エッセイ
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第VII章 語り継がれる周の人柄

『夫への詫び状』
[著]金美齢 [発行]PHP研究所


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 包容力の人


 ――日本で最も影響力を持つ台湾人、金美齢さん。

 台湾独立建国連盟の大物、黄昭堂氏がそういって冷やかすのはいつものことだから、私も堂々と、
「はい、その通りでございます」

 と、受けて立つ。

 そんな私を、夫の周は笑顔で見守ってくれていた。私は、この態度こそ彼の偉いところであり、優しさだと思い、その懐に安心して身をゆだねていた。これはまた、彼がいかに自分の家族を愛しているかということの証拠でもあったと思う。

 国籍を剥奪された台湾人の私たちが、この日本で社会的にもそれなりに高い地位に恵まれて暮らしてこられたことは、周という夫が家族の(かなめ)だったからにほかならない。

 私たち家族の()し方行く末を見つめたとき、家族の誰かが心身に何らかの傷を負ったり、問題を起こしたり、思い悩んだり、あるいは親子の関係がねじれるとか、嫁姑の問題が起こるとか、そういうくだらない小さな愚かしいいさかいは一切なかったと、私は自信を持っていえる。それもやはり彼が家族の要であったからのことなのだ。根底に彼の優しさと家族に対する深い愛情があった。

 それにひきかえ、私はわがままで、個性の強い人間だ。けれども、そういう私を彼はよくわかってくれ、大きな包容力で受け入れてくれたのだ。

 彼は私に対して、「自由に羽ばたいていいよ。好きに仕事していいよ。活動していいよ」といっただけではなかった。彼は、私が好き勝手にやっていることを、自分の喜びとして見守ってくれていたのだ。だからこそ長続きしたのだ。

 私はどれほど周囲からいわれたかしれない。
「よく周さんが許してくれるね」
「周さんはよく我慢してるね」

 その人たちに私はいってきた。「違うわよ」と。
「我慢なら長続きしませんよ。許す、許さないの問題じゃないのよ。私はこれ以外の生き方はできないの。夫となる人は、この生き方を喜んでサポートしてくれる人間じゃなきゃ、私たちの夫婦関係は続かない。でも、それができた。つまり、そこらへんが周が普通の男と違うところなの。私が外に出て活躍しているのを見るのをすごく喜ぶのよ。それは彼が絶対に自分に自信があるから。やっかむことを知らない人なのよ」

 周は本当にやっかむということを知らない人だった。私に対してだけではなくて、自分の同僚に対してもだ。かつて同じ研究室にいた優秀な人に対しては、無条件に尊敬していた。主任教授のことも、同僚のことも、「東大ってやっぱりすごい人がいる。尊敬しちゃうなあ」と無条件に尊敬していた。彼のこうした性格を、「真にラディカルな人間。嘘偽りのないラディカル」と私は評するのだ。

 家庭にあっても変わらずにこのラディカルを通していた人だ。この場合のラディカルの意味を正しく伝えるのは難しいが、要するになにものにもとらわれず、自分の(たの)むところに正直に生きた人だ。

 あの年代の大多数の日本の夫とは違って、家事もよくした。料理は下手だからあまりしなかったが、洗濯、掃除は平気。子どもの面倒も普通にみていた。

 そもそもは結婚したときに、私から提案した。
「私たちは普通の夫婦とは違って二人とも学生であり、二人ともほどほどにアルバイトをしているのだから家事も分担しましょう。あなたは料理ができないから、私がします。食器は洗ってください。お掃除は週に一回はやりましょう。洗濯は私がするから、干すのはあなたね」
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