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(2021/11/26 追記)

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第1章 大切な人がつらいときにあなたがしてあげられること

『素敵なご臨終』
[著]廣橋猛 [発行]PHP研究所


読了目安時間:31分
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緩和ケア六つの「誤解」をとく


 身近な人が病でつらい思いをしているとき、「何かしてあげたい」と願う方は多いことでしょう。とはいえ、病でつらい思いをしている人が何をしてほしいと思っているのか、どのような手助けが必要なのか、いざとなると分からず戸惑ってしまう方も、多くいらっしゃいます。さらに、さまざまな「誤解」から、望ましい手助けと異なることをしてしまうケースも多くみられます。


 この章では、私が緩和ケア医として三〇〇〇人以上の患者さんやそのご家族と接し、診察してきた経験から、ぜひ知っておいていただきたいことを紹介します。


 「安静」の誤解


×痛いときは休んでいなければならない

〇痛みがあるときは家事をさせた方が良い




【七十三歳女性・大腸がんのAさんの場合】


 Aさんは半年前に大腸がんの手術を受け、いまは残った(しゆ)(よう)に対する抗がん剤治療を通院して続けています。治療はうまくいっており、副作用も軽く、医師からも経過は順調であると言われています。


 Aさんは五年前に夫を亡くし、いまは長男夫婦と一緒に暮らしており、家のことはだいたい長男のお嫁さんがやってくれますが、少しでも自分でできることをやらなくてはと、簡単な家の掃除や買い物などは手伝いたいと思っています。しかし、「病気なのだから無理しないで」「休んでいてください」と家族からは言われます。



 Aさん「夕食の準備はしておくから、たまには外で気分転換してきたらどうだい?」


 お嫁さん「そんなに気を遣わないでください。お義母さんは治療しているのですから、身体(からだ)を休めてください。また無理をして、痛みが強くなったらどうするのですか!」


 Aさん「いろいろやっている方が、気がまぎれるのだけどな……」



 Aさんと家族の間ではこのような会話が繰り広げられています。実は家族が心配する理由の一つに、Aさんがよくお腹の痛みを訴えるということがありました。


 医師にお腹の痛みのことを訴えると、おそらく手術の傷による痛み、あとは腸が動くときの痛みだろうと言われ、特に問題はないので必要に応じて痛み止めを飲むようにと処方されました。しかし、Aさんは痛み止めを飲むほどの痛みではないと、ほとんど手をつけずにいます。


 そして、今日も家で特にやることもなく、お茶を飲みながらテレビを観ています。「お腹の調子はどうですか?」と聞かれると、「痛いけど大丈夫」と答えるAさんの表情は()えません。そんな様子をみて、家族はAさんに無理なことはさせられないと感じ、先ほどのような会話の繰り返しになるのでした。


【キーワード:痛みの閾値】


 さて、Aさんの痛みを和らげるために、ここで「痛みの(いき)()」について学んでいきたいと思います。痛がりの人や逆に我慢強い人がいるように、痛みは人によって感じ方が異なるというのはなんとなく分かるでしょうか。閾値とは痛みの感じやすさのことを言います。


 図1のように、同じ痛みであっても、閾値が高い人は痛みを感じにくく(痛みが気にならない)、閾値が低い人は痛みを訴えます(痛みが気になりやすい)。この閾値が低い人が、いわゆる痛がりの人と言われます。




 もちろんAさんは医師が処方した痛み止めを、もっとしっかり飲んだ方が良いかもしれません。痛み止めを飲めば、図2の左のように痛みの強さは一時的にでも弱まるはずです。ですが、痛み止めの効果は一時的です。ぜひ「痛みの閾値」にも着目し、図2の右のように閾値を高めることで痛みのつらさから解放できないかを考えてみましょう。



痛みを感じにくくする方法


 では、どうすればAさんの「痛みの閾値」を高めることができるでしょうか。ヒントは先ほどのお嫁さんとの会話の中に隠されています。家事を手伝おうとしても休んでいてくださいと言われるAさん。その反応で「いろいろやっている方が、気がまぎれるのだけどな……」というのがありました。この気がまぎれるという感情こそが、すなわち痛みを感じなくて済む閾値を高める要因であること、皆さんは理解いただけましたでしょうか。


 かつてAさんは家庭の主婦として、夫や子どもを支えるため、家のことを一人で一生懸命やってきました。しっかり家事をこなすことは、Aさんにとってライフワークと言っても過言ではないほど。しかし、いまは簡単な家事もほとんどさせてもらえず、「病気だから休んでいてください」と言われます。そして、休んでばかりいることで気も滅入ってしまうし、他にすることもないから、結果的にお腹の痛みが気になってしまうのでした。


 家の手伝いを少しぐらいしても身体にとって負担にならないこと、かえって家の手伝いをすることで気がまぎれて痛みにも良いかもしれないことを、医師はAさんや家族と話し合いました。その話を聞いたときのAさんはとても嬉しそうでした。それから、お嫁さんと家事の分担をするようになったAさんは、お腹を痛がることも減り、表情も明るくなり、治療も前向きに続けられています。


どうすれば、痛みが和らぐ?

本人の生活習慣から導き出せる


 さて、ここで学んだ「痛みの閾値」を高めるには、他にはどういったことをしたら良いのでしょうか。図3が示すように「痛みの閾値」を高めるために必要なことは、人によってさまざまです。




 Aさんにとっての家事のように、自分の役割を果たし、気晴らしとなることをするのが良い人もいれば、逆に忙しすぎる人にとっては休息が閾値を高めるのに必要な場合もあるでしょう。


 大切なのは、どうすれば「痛みの閾値」を高めることができるかを考えることです。

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