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はじめて考えるときのように
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生き方・教養
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4.ことばがなければ考えられない

『はじめて考えるときのように』
[文]野矢茂樹 [絵]植田真 [発行]PHP研究所


読了目安時間:17分
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「ないもの」がある部屋
「ないもの」は「ある」のだろうか?

 いや、つまり――


 この絵は何の絵だか、わかりますか?

 何を聞かれてるのか、困っちゃったかもしれないけど、これは、いろんなものの絵でありうる。たとえば――

 これは、ぼくの気持ちとしては「この部屋にはパンダがいない」という絵なのだけれど、もちろん、「この部屋には噴水がない」という絵でもありうる。もちろん、「この部屋には金塊(きんかい)の山がない」という絵でもありうる。そしてもちろん――

 というわけで、いろんなものの絵でありうる。


 何の関心ももたないで世の中を見渡してみよう。ほら、否定なんて一個もない。ただそこにあるものが、そうあるようにして、あるだけだ。



「ない」を求める若者の話

 昔、「ない」ということがわからない若者がいた。

 彼は村の一人の僧侶に尋ねた。
「『ない』というのは、どういうことなのですか。教えてください」

 僧侶は答えた。
「明日、目覚めたらあたりをよく見なさい。そして『ない』を探してごらんなさい。あなたの家に見つからなければ村に出て探しなさい。そして日が暮れたら、私のところにもう一度いらっしゃい」

 翌日若者は言われるままに「ない」を探した。日が暮れて、何の成果も得られぬまま、若者は僧侶のもとにおもむいた。
「探しました。でも、『ない』はどこにもありませんでした。この村にはないのでしょうか」

 僧侶はにっこりして答えた。
「いま、ありました」

否定の不思議

 ぼくはうかつにもさっきこう言ってしまった。「何の関心ももたないで世の中を見渡してみよう。ほら、否定なんて一個も〈ない〉」。だけど、こう言ったとたんに「ない」が一個出てしまったわけだ。

 でも、あれ? そうすると否定はあったわけだから、そのとたんにまた「ない」がなくなってしまって、ありゃりゃ。

 いかん、こんがらがってしまった。


 否定の不思議。

 ないものが、ある。

 否定において、ぼくたちは、そこにないものを見てとることができる。


 たとえば書斎に入ったときにいつもある机がなかったとする。「なんか変だ」どころじゃない。「あれっ、机がない」。ぼくはそのとき推測したり推理したりすることなく、机がないことを「見る」だろう。

 机がないその部屋を写真にとることだってできる。でも、それが「机がない」写真だってことは、だれにでも伝わるわけじゃない。黙ってその写真をひとに見せる。そのひとは言うかもしれない。
「あれっ、パンダがいない」

 ――そうじゃないだろ。


 でも、写真にことばを添えればだれにでも伝わるようになる。「この部屋、机ないだろ」と言えば、だれでも「そうだね」と言ってくれる。あたりまえ? いや、そのあたりまえのことが、なかなか不思議な感じがしないだろうか。

 否定はことばで表わされる。そこでぼくはさらに、ことばがなければ否定はない、と言いたい。

 言いたいんだけどね、それはもっと大きい話の一部として話さなければならない。

 まあ、ゆっくり行こう。

人間以外の動物でも考えるのだろうか

 質問――人間以外の動物も考えるのですか?

 答え――わかりません。


 だって、人間以外の動物のことなんて、ぼくにはわからない。
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