『中村天風 折れないこころをつくる言葉』
[著]池田光
[発行]イースト・プレス
読むだけで、元気が出る!──人生哲学の大家・中村天風(一八七六~一九六八)の名言を、いつでも、気が向いたページから開けるようにまとめました。
「おかしくも何ともないときに、嘘でもいいから笑ってごらん」→本書13
「運命のよくないとき、運命にこだわれば、運命に負けてしまう」→本書27
「生まれながらこうだと思えば、何でもねえじゃねえか」→本書36
「生き方ひとつで楽園になる」→本書56
「暗かったら窓を開けろ。光がさしてくる」→本書57
「欲を捨てろなんて、そんな消極的な、できないことは大嫌いだ」→本書77
「金儲けするつもりになるな、損をしないつもりでやれ」→本書98
「あわてふためくから、ふり回されちまうんだ」→本書106
勇気を与えてくれる、これら天風の言葉は、どれも本文で紹介しているものです。一つひとつの言葉が、あなたを癒やし、勇気を授け、輝く人生にしてくれることでしょう。
本書では、150の言葉をとりあげ、わかりやすく解説しました。それだけでなく、全編を通して読んでいただくと、天風哲学がわかるよう工夫しました。
では、どのような内容なのか、章ごとに見ておきましょう。
第一章 くよくよしない。──宇宙エネルギーを味方につけて、「幸せ」を呼びこむ。
第二章 とらわれない。──感情にとらわれず、運命にとらわれず、堂々と生きる。
第三章 おそれない。──降りかかるマイナスを払い、秘法の「クンバハカ法」で身を守る。
第四章 あきらめない。──閉じこもりがちな心を解放して、前を向く。
第五章 ふりむかない。──眠ったままの「内なる力」を自覚し、積極精神で生き抜く。
第六章 くすぶらない。──欲望を肯定し、願望を実現して、人生をくすぶらせない。
第七章 おちこまない。──ビジネスで成功し、最上の「問題解決法」で壁を越える。
第八章 ふりまわされない。──天風の最高の教え「安定打坐法」「真理瞑想行」を修得する。
第九章 まよわない。──天風の悟りが凝集した「天風誦句」を味読する。
第十章 くるしまない。──病を克服し、健康と長寿をわがものにする。
さらに、巻末の「解説」では、天風哲学の学び方を紹介し、心身統一法のポイントを虎の巻の要領でまとめました。必要に応じてごらんいただければ、本文の言葉集に縦糸が通ることでしょう。
じつは、筆者も中村天風の言葉から勇気を与えられたひとりです。神戸に住む筆者が、一九九五年に阪神・淡路大震災に遭ったとき、ふと口をついて出たのは、
「私は 力だ。力の結晶だ」(本書67)
という天風の誦句でした。何度も唱えました。このフレーズが、どれだけ筆者に生きる力を与えてくれたことか、はかり知れません。
天風の教えを「天風哲学」と呼ぶことがあります。では、天風哲学とは、どのようなものでしょうか。
◎天風哲学とは、ヨーガの里での悟りを、心身統一法として体系化したものである。
◎天風哲学とは、進化と向上に向かって力を発揮すべく、潜勢力(生命の内奥深くに潜在している巨大な力)を顕在化させる方法である。
◎天風哲学とは、霊性を顕現し、絶対積極で生きる人生論である。
◎天風哲学とは、本当の自己(真我)のもとに、心身をコントロールする技術である。
◎天風哲学とは、気と観念の哲学である。
このように、いろいろな角度から説くことができます。たとえば、最後の「気と観念の哲学である」という観点から、天風哲学を見ておきましょう。
天風は、インド東北部(ネパールという説もある)のカンチェンジュンガの山のふもとにあったと推定されるヨーガの里で、恩師の聖者カリアッパ師から、気で生き抜くことを学びました。それまでの天風は、肉体の力によって生きる小さな存在でしかありませんでした。
この大宇宙に満ちている無限の気のエネルギーは、進化向上へと運動を続けていると天風は言います。これと同調して生きようというのが、気によって生きる生き方です。
また、天風哲学は観念の哲学です。マイナスでいっぱいになっている潜在意識をプラスへと変えて、積極精神で生きるとき、人生は好転し、健康や長寿も、成功や幸福も、すべてがこの手に入ります。
そんな天風の世界が、手軽に、どこからでも読めるのが本書です。苦しいときや、腹が立つときや、悲しいときに、いつでも本書を開いてください。きっと、答えが見つかることでしょう。
なお、中村天風の言葉は原文どおりの引用ですが、意味を損なわない範囲で、わずかに文章を再編集した部分があります。あらかじめご了承ください。
本書は、旧版(『中村天風 打たれ強く生きる100の言葉』)を全面的に改稿し、新たに50の言葉を加えたもので、改訂版というよりも、まったく新しい本になりました。
また、本書は、二〇一七年に刊行された『安岡正篤 運命を思いどおりに変える言葉』の姉妹本でもあります。中村天風と安岡正篤は、ともに昭和を代表する精神的支柱であり、「日本が生んだ最高峰の人生哲学」として両書がそろったことは、大きな喜びです。きっと、読者のみなさまに益するところがあるでしょう。この一冊がお役に立つことを祈っています。
池田 光