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帝国の終焉
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政治・社会
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第四章 日本は核抑止力を持つべきか

『帝国の終焉』
[著]日高義樹 [発行]PHP研究所


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第一部 日本列島周辺が世界でいま最も危険である


 ワシントンの軍事消息筋によると、二〇一二年から一三年にかけて起きると懸念される最も危険な戦いは、中国による台湾攻撃である。この予測は、「経済が悪化して中国国民が反政府的になった時、中国軍が何か大きなことをやるのではないか」と心配していた私の中国の友人の予測にぴったり適合する。

 二〇一二年、アメリカでは大統領選挙が行われるが、中国でも胡錦濤主席に代わって新しい指導者が出現する。
「中国軍に近い習近平が胡錦濤の後を継げば、軍主導型の何かが起きる」

 ワシントンの軍事専門家がこう言っているが、この「何か」で最もありうることが台湾攻撃であることは、中国軍の態勢からも明らかである。中国軍は予想を上回る早さでアメリカに対抗できる実戦態勢を整えている。

 中国軍はここ数年、莫大な費用を注ぎ込んで近代化に力を入れ、二〇一一年にはJ20と呼ばれるステルス戦闘機の開発に成功しただけでなく、アメリカの多くの専門家の予想に反して、ソビエトから買い受けた空母の実戦航海も開始している。台湾の対岸には台湾海峡を越えて攻撃できるミサイルを大量に配備し、在日米軍基地を攻撃できるミサイルや、アメリカ本土を攻撃できる長距離ミサイルも実戦配備を終えている。

 中国軍は二〇一〇年に第一一次五カ年計画を完了して、実戦態勢を完全に整備し終わっている。これまでアメリカの中国専門家は、中国がこの五カ年計画を完成させたあと、さらに二〇二〇年までにステルス戦闘機の増産態勢を整えてアメリカに追いつくまでは、台湾をめぐって軍事行動を起こすことはないと予想してきた。「中国と台湾の関係が安定しているので、二〇一二年、一三年に、台湾海峡で緊急事態が勃発することはない」という見方も強かった。だが世界的な不況で中国の経済の拡大が止まり、国内が混乱に陥ることがあれば、中国軍部はその実力を内外に示すことによって政治的安定を図るというのが、ワシントンの私の友人の見方だ。

 中国が大方の予測を裏切って、二〇一一年、早々と空母の実戦航海を始めたのは、アメリカ海軍に対する対抗措置を早期につくりあげるためであるといわれるが、これと並行して、小型艦艇にミサイルを搭載してアメリカ艦艇を攻撃する態勢を急速に充実させている。アメリカの艦艇を近寄らせず、中国の周辺を安全にしておく態勢とミサイル態勢を完備した以上、中国は必要とあらば、いつでも台湾を軍事的に占領できると考えている。

 中国政府はむろん、その考えをオクビにも出していない。アメリカ政府の首脳も、中国が台湾周辺で危険な軍事行動を始めれば、世界中から非難され資源の輸入に支障が出ると見ている。したがって、中国は台湾を攻撃することはないと思っている。だが考えてみる必要があるのは、これから中国の指導者が代わり、国内の政治情勢も大きく変化すると予想されることである。
「中国が軍事的な圧力を強化し、台湾を戦わずして占領するか、あるいは短い時間内で軍事的に制圧すれば、日本はもとより東南アジア諸国、そしてアメリカも中国の軍事力の前にひれ伏して、南シナ海も、東シナ海、尖閣諸島も中国の影響下におさまる」

 中国がこう考えてもおかしくはない。中国側が最も懸念しているのは、戦闘が長引き、西太平洋から極東にかけての海上輸送に支障が出た場合、中国経済に重大な危険が及ぶだけでなく、世界中から批判されて輸出に大きな支障が出ることである。中国の台湾制圧が成功するかどうかは、短期間にやれるかどうかにかかっているが、中国はいま述べた第一一次軍事力整備計画の完成によって自信を強めているはずだ。

 中国が、南シナ海から東シナ海、そして日本周辺での軍事力を強化していることは、冷戦が終わった現在、世界で最も危険な地域が日本周辺であることをはっきりと示している。中国が大量に配備しているクルージングミサイルや中距離弾道ミサイルは、日本を簡単に攻撃できる。ミサイルの多くは、在日米軍基地を標的にしている。

 中国の急激な軍事力増強に対抗してアメリカは、すでに述べたように、巨大な戦略ミサイルを使って中国の重要拠点を攻撃できる態勢を整えている。だが中国側もDF31など、射程一万キロ以上の長距離弾道ミサイルを保有し、スパイ衛星や通信衛星などを配備する一方では、サイバー兵器によるアメリカの電子兵器体系に攻撃を加える態勢をつくりあげている。

 中国の核戦力や新しい兵器体系は、アメリカに比べれば程度がかなり低い。兵器体系としては弱いが、アメリカ本土を攻撃できる能力を持っている現在、中国が日本を核で脅しつけたり、実際に攻撃する姿勢を示したりした時、アメリカは「日本を助ける」という理由だけで核抑止力を発動するかどうか分からない。日米間でこの問題に関する話し合いは全く行われていないと私は見ているが、中国の核戦略と海上兵力が、日本を守るためのアメリカ軍の動きを封じ込めているのは確かである。

 日本では、アメリカの軍事力が中国を封じ込めているので日本は安全だと信じられてきたが、情勢は逆転しつつある。中国国内の政治が不安定になれば、中国の新しい戦略が発動されて、日本を脅かす危険は十分にある。しかも中国だけでなく、北朝鮮も軍事力を強化している。ワシントンの軍事消息筋は、北朝鮮がすでに数十発の核弾頭を保有し、地対地ミサイルや小型艦艇に装備したミサイルで日本を攻撃する能力を持ったと見ている。

 北朝鮮の核戦力は、アメリカやNATOに比べればはるかに弱く、日本のイージスミサイル防衛網によって食い止めることができると信じられている。二〇〇八年、アメリカ第七艦隊のバード司令官が、旗艦ブルーリッジの戦闘司令室につくられたイージスミサイルの防衛システムを表示したパネルを使いながら、北朝鮮程度のミサイルであれば簡単に撃ち落とすことができると、私に説明したことがある。だが小型の水上艦艇に搭載された北朝鮮のミサイルが日本各地を攻撃することになれば、第七艦隊や自衛隊のイージスミサイルでも完全に撃ち落とすことは難しい。何発かは確実に日本本土に飛んでくる可能性がある。

 北朝鮮はすでに述べたように、世界各国にノドン、テポドンといったミサイルを売り、核爆弾の材料である濃縮ウランの製造にも協力をしている。北朝鮮は、軍事技術の輸出国として莫大な資金を稼ぎ始めているが、その北朝鮮の仮想敵国はまぎれもなく日本である。北朝鮮は中国の政治的な支援を背景に、日本を攻撃できる能力を着実に高めている。

 中国と北朝鮮だけではない。いったんは崩壊したと見られるロシアが再びプーチン大統領(当時)のもとで軍事力を増強し、極東の軍事体制を強化している。一九八九年十月、ロシアが予想より早く崩壊したあと、キッシンジャー博士が私にこう言ったことがある。
「ソビエトはモノづくりの能力が欠けている。宇宙兵器の開発や、ミサイル防衛能力の開発でアメリカとの競争に敗れた結果、冷戦に敗北した。ソビエトがあまりにも突然崩壊したのでアメリカの指導者はとまどっている。これからソビエトが何をやるのかまるで分からない」

 ソビエトは共和国を手放し、ロシアと名を変えたが、冷戦が終わって資源争奪戦の時代に入るや、国内に大量に保有している石油や地下資源を売って経済力を手にし、それによって軍事力を強化し始めている。プーチンによるロシアの戦略は、長い国境を持つ中国に対抗し、宗教的にロシアに反発する中央アジアのイスラムの国々を抑え、冷戦に敗れて手放した旧ソビエト帝国の共和国を再び統合することである。

 ロシアは現在、石油や地下資源で稼いだ資金をもとに、新しい潜水艦やミサイルの開発に力を入れ、ヨーロッパではNATO軍に対抗する姿勢を取り始めている。二〇〇九年と一〇年には、日本海で新しい潜水艦の試験航海を行ったのをはじめ、偵察機や爆撃機を日本周辺に飛ばしている。

 ロシアもまた、極東における新たな軍事的脅威になりつつある。ロシアの究極の敵は国境をはさんだ中国といわれているが、海軍力では中国に勝るロシアが、日本列島を越えて中国と海軍力で対立を強めていくのは当然のことと思われる。

 中国の軍事的な脅威について見る時、わが国が最も注意すべきは、海軍力の増強と核戦略である。中国はアメリカに対抗するため、大陸間弾道弾や核兵器の開発に力を入れている。すでに五五発から六五発の大陸間弾道弾による態勢を確立している。この大陸間弾道弾のなかには、固形燃料で地上での移動が可能な長距離ミサイルや、液体燃料を使う中距離ミサイルなどがある。

 中国は潜水艦から発射するミサイルの開発も終わっている。これは中国の核戦略の対象がアメリカであることを示しているが、日本を攻撃できる射程三〇〇〇キロのミサイルの開発にも力を入れている。日本が中国の核ミサイルの照準になっていることに、十分注意する必要がある。

 中国がアメリカに対抗できる核戦略を持ち、アメリカの核抑止力が日本を守るために発動されるかどうか分からなくなっている以上、日本も核兵器を持つ必要がある。
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