「イソップ物語」にありましたね。
親子で驢馬を市場に売りに行きます。まず、子どもを驢馬に乗せていたら、通りがかりの人が、「親を歩かせて平気でいるとは、親不孝な子だ」と評します。それで、子どもを驢馬から降ろし、親が驢馬に乗っていたら、「子どもがかわいそう。虐待だ」と言う人がいる。
次に親子が二人とも驢馬に乗ったら、「驢馬を疲れさせると、市場で高く売れないぞ」と忠告する人がいました。結局、親子は驢馬を棒に縛りつけ、二人で驢馬を担いで行きました。そういうお話です。
これが「世間」というものです。世間は勝手なことを言います。しかし、よく考えてみてください。世間の人が言うことは、完全にまちがいではありません。「親不孝」といえばその通りだし、「子どもがかわいそう」というのもまちがっていません。だから困るんです。
よく、世間の人の言うことなど気にする必要はない、無視すればいい、と主張する人がいますが、まちがいではないからなかなか無視なんかできません。それで困ってしまうのです。
では、どうすればよいでしょうか……?
そこで、「捨てちゃえ、捨てちゃえ」になります。わたしのほうから積極的に世間を捨てるのです。具体的には、世間を馬鹿にすること。喧嘩をしろと言うのではありませんが、心の中で世間を馬鹿にします。
それじゃあ、その馬鹿にする方法は……? いえ、これ以上のことは、どうか本書をお読みください。
※ 本書は、PHP研究所から刊行された『がんばらない、がんばらない、』に続くシリーズ第二弾になります。前著と同じく『まんだら人生論(上・下)』(読売新聞社、のちに新潮文庫)の中から選んだエッセイに加筆し、新たに解説を書き下ろして加えました。
本書をヒントに、読者が幸せな人生を送ってくださることができれば、著者にとってそれ以上の喜びはありません。
ひろさちや