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怖くて眠れなくなる科学
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雑学
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Part2 病にまつわる怖い話

『怖くて眠れなくなる科学』
[著]竹内薫 [発行]PHP研究所


読了目安時間:32分
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脳を切除するロボトミー手術

脳を切除して治療する?


 エガス・モニスという怖〜い医者がいました。ポルトガルの政治家、医者、神経科医。彼は悪名高いロボトミー手術の発案者で、なんと一九四九年度のノーベル生理学・医学賞の受賞者でもあります。授賞理由は「ある種の精神病に対する前頭部大脳神経切断の治療的意義の発見」でした。

 ロボトミーは、統合失調症の治療のために前頭葉の一部を切除する治療法でした。現在では、人格を完全に破壊してしまう手術として否定されていますが、むかしは非常に有効だとされていたので、ノーベル賞をもらったのですね。科学や医学の定説は、時間がたつと変わってしまうことがあります。ノーベル賞ですら、まちがうことがあるわけです。

 モニスは面白い経歴の持ち主です。生まれが一八七四年。一九〇三年から一七年までは国会議員を務めて外務大臣にもなっています。その後、一九四四年までは、リスボン大学で神経学の教授をやります。一九二七年にはX線を使った「脳血管造影法」を開発した、しっかりとした神経学者だったのです。

 モニスは、一九三六年に同僚と一緒にロボトミー手術を実際に行ない、これが(なぜか)アメリカに伝わって、広まりました。アメリカで、フリーマンとワッツという人がモニスの方法を「改良」して、誰でも簡単にロボトミー手術ができる方法を開発したのです。アイスピックみたいなものを使って、鼻の上あたりに(とが)った器具の先端を差し込んで、脳をグイグイとかき混ぜて「治療」します。

 手術を受けると、患者は暴れなくなりますが、そのかわりに人格が失われて無気力になり、感情の起伏もなくなり、まったくの別人格になる。これは本当に非人道的なものです。ロボトミー手術は、映画化もされて有名になったベストセラー小説『カッコーの巣の上で』(ケン・キージー著)で告発されたことなどもあり、一九七五年にはまったく行なわれなくなりました。

 モニスは、六十五歳のときに元患者に銃撃されて脊髄(せきずい)を損傷してしまいます。モニスは、マッド・サイエンティストの典型に思われますが、いまだにノーベル賞は取り消されていません。ノーベル賞のサイトに行くと、言い訳のような説明文が書かれていますが、歴代の受賞者の中にはしっかりと名前が並んでいます。当時の一流の医師や科学者が彼を褒め称え、表彰したわけです。

科学には限界がある


 一九四九年というと、第二次世界大戦が終わってまだまもない頃なので、こういう行為が平然と行なわれたのかもしれません。ただ、現代でも同様のことはおそらく起きているんです。いまは画期的な治療法と思われているものが、半世紀後には、マッド・サイエンティストの所業という評価を受けることもあるでしょう。残念ながら、科学技術も医学も、後世にならないとわからない場合があるんですね。

 人間は、近視眼的というか、自分の同世代、同時代の状況は見えません。「自分には見える」と思いがちですが、やはり誰にも見えないんです。実際、科学技術の「将来予測」の八割ははずれる、という統計もあるくらいです。まるで株価予想みたいですね。後から検証してみると、専門家であっても、二割しかあたらないんです。

 ロボトミーのような過去の悲惨な出来事を見ると「なぜ気がつかなかったのだろう」と思いますが、それは後付けの説明に過ぎません。それが科学の ―― そして人間の限界なんです。

 それにしても、エライお医者さんに、手術台に固定され、目にアイスピックが近づいてくる……なんとも怖い光景ですね ――。



人食いバクテリアの恐怖

致死率三〇パーセントの恐怖の細菌


 人食いバクテリアという怖〜い生物がいます。バクテリアは細菌のことですが、人食いバクテリアには多くの種類があります。たとえば連鎖球菌。A群連鎖球菌による「劇症型A群連鎖球菌感染症」は、一九九四年にイギリスの週刊誌が取り上げて話題になりました。

 このバクテリアに感染すると、最初は手足がうずくような痛みを感じるだけですが、数十時間たつと臓器不全や手足の壊死(えし)で死亡します。致死率は三〇パーセントです。一命をとりとめても、患部を大きく切除しなくてはならなかったりして、重度の後遺症が残ることが多いんです。

 球菌は、我々が普通に持っているものです。たとえばのどや皮膚。咽頭炎という子供がよくかかる病気の原因でもあります。デンマークの研究では、約二パーセントの人は、A群連鎖球菌のキャリア ―― つまり症状は出ていないけれど菌を持っているそうです。咽頭炎、扁桃炎、それから皮膚のおできの原因でもあるらしい。でも、ふだんは、「のどが痛い」とか「おできができちゃった」という程度で、重傷になることはありません。

 では、どういうときに劇症型になるか。それが、まだわかっていないんです! 我々のまわりにウジャウジャいて、ふだんはさしたる悪さもしないのに、あるとき突然、怒り狂ったかのように人を襲って殺してしまう。原因がわからないだけに、自分や家族が(かか)ったらどうしようと、背筋がゾッとします。

 どれくらいの頻度(ひんど)で発症するのか? なんと、日本だけでも、毎年五〇人ぐらいの人が発症しているというから驚きです。

 この菌が出す毒素が、我々ののどにいる連鎖球菌とは違う毒素を出して、それで体がやられるのだろうと推測されています。

 それから宿主である人の体質も関係している可能性があります。その毒素に対して弱い人と強い人がいるのです。でも、詳しいことはまだわかっていないのです。


ギロチンを科学する

ギロチンは人道的な処刑法?


 人類は、数多くの残酷な処刑法を開発してきました。なかでも一番有名なのはギロチンでしょう。

 十八世紀に起こったフランス革命では、大量に人の首を落とさなくてはいけなくなりました。
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