読みたいトコだけ買える本。
犬耳書店
初めての方へ 記事一覧 無料登録 ログイン

犬耳書店はRenta!へ統合いたします

(2021/11/26 追記)

犬耳書店の作品をRenta!に順次移行します。
詳しくはこちらでご確認いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

0
-2
kiji
0
0
1254204
0
人口減少の経済学
2
0
0
0
0
0
0
経済・金融
お気に入りとは?

お気に入りボタンを押すとお気に入りリストにこのページが追加されます。興味のあるページ・気になったページを後から確認するのに便利です。

お気に入り お気に入り
第3章 働きたい女性・高齢者の参加で、日本経済は一層発展する

『人口減少の経済学』
[著]原田泰 [発行]PHP研究所


読了目安時間:28分
この記事が役に立った
0
| |
文字サイズ

本章では働きたい女性・高齢者が仕事を続けられる社会をつくるために何が必要かを考える


働きたい女性の労働参加を支援する


 人口が減少しても、一人当たりの生産性を高めることができれば、人口減少社会を豊かな社会にできる。また、現在は働いていない女性や高齢者が働けば、さらに豊かにできる。

 そうするためには、働く意欲を持つ女性や高齢者が、様々な理由から働けないという問題を解決していく必要がある。女性にとっては、家事・育児と仕事を両立できる社会環境、高齢者にとっては、いつまでも働ける雇用環境をつくることが必要だ。

 ただし、そのような環境の整備が、社会に過大なコストを強いるものであっては本末転倒だ。女性や高齢者が働くために過大な社会的コストをかけると、社会全体では非効率になりかねない。

 日本の女性は、現実に働いている以上に働くことを望んでいる。働きたい女性が働けるような環境を整えることは、女性自身の希望に沿うことであり、かつ人口減少社会に向かう日本にとっても望ましいことである。

 日本の女性の有業率(労働力人口から失業者を引いた有業者数を、生産年齢人口で除したもの)を年齢階級別にみると、図3―1のように、二五〜三九歳の部分が大きく落ち込むM字形カーブを描く。これは働いている若い女性が、結婚や出産・育児を契機に仕事から離れ、子育てを終えた後、再び仕事に戻るという女性のライフコースを示している。






 しかし、このM字形カーブは、女性の希望とは異なっている。女性の現実の有業率に、できれば働きたいという希望を持つ無業者を加えた潜在的有業率をみると、M字形カーブにはなっていない。そのギャップ(潜在的有業率−有業率)は、育児期にあたる二五〜三九歳の年齢層において大きく、三〇〜三四歳が二七・一%ポイントと特に大きい。

 一方、アメリカの女性の労働力率を図3―1でみると、育児期に該当する年齢層の労働力率が特に落ち込んだM字形カーブになるような傾向はみられない。また、M字形カーブの底だけでなく、三〇〜五九歳という幅広い年齢層でアメリカの女性の労働力率が高い。それは日本の女性が望む潜在的有業率に近い。

 図には入れていないが、これはヨーロッパ諸国との比較においてもそうである。すなわち、日本の女性が望む有業率は、実際に欧米で実現されているレベルに近く、単なる願望のレベルではない。欧米と同じように女性が働きやすい社会をつくることができれば、働きたい女性がもっと働けるようになる。

 しかも、図3―2にみるように、日本では高学歴の女性の労働力率が低いという傾向がある。これに対して、アメリカやヨーロッパでは、高学歴の女性ほど労働力率が高い。これは、日本では高学歴の女性が高学歴の男性と結婚し、夫の所得が高いがゆえに働かなくてもよいという傾向があること、また一度退職すると学歴の高い女性にふさわしい仕事を見出すことが難しいからである。






 しかし、人口減少社会において、高い教育を受けた女性が働かないのでは、社会にとって損失である。欧米のように、女性にチャンスが与えられ、それに挑戦していく社会になることが必要だろう。

 働きたいという希望を持ちながら働いていない女性が希望どおり働いた場合、何万人の女性が働けることになるだろうか。

 日本の女性の潜在有業率と諸外国の労働力率を比較して、労働力供給余力の規模を試算してみると、図3―3のようになる。日本の女性の労働力率がアメリカと同じになった場合、二〇二五年に二五三万人、二〇五〇年では一八〇万人の労働力人口を増加させることができる。






 アメリカの女性の労働力率は高いが、パートタイムの労働者もいる。そのため、人数で試算したような労働供給の増加とならない可能性がある。そこで、アメリカの水準に引き上げることによる労働力人口増加分はすべてパートタイム労働者と仮定し、マンアワーを考慮した上で試算すると、二〇二五年に一四六万人、二〇五〇年では一〇四万人、労働力人口を増加させることができる。

 このような労働力人口の増加は、実質GDPを増加させ、一人当たりの実質GDPをも増加させることになる。仮に、アメリカと同じレベルまで女性の労働力率が高まると仮定すると(フルタイムとした場合)、労働力の増加によって生産が増大し、国民一人当たり実質GDPは、二〇二五年に四・三%、二〇五〇年には四・一%増加する。

母親が就業する選択肢を活かせる社会づくり


 このように、女性が働くことが、人口減少社会においては重要である。ただし、その比率を上昇させることによって得られる実質GDPの増加は、二〇五〇年で最大四・一%なのだから、そのためにあまりに過大なコストをかけるのは本末転倒であることも認識しておく必要がある。

 日本の女性の年齢ごとの労働力率の推移をみると、図3―4のように、女性の社会進出により労働力率は全体として上がってきているが、M字形カーブの形自体はそのままである。






 すなわち、日本の場合、M字形カーブの上昇は未婚率の上昇が主因であり、仕事と育児の両立が容易になってきたためにM字形カーブが上昇したわけではない。就業を希望する女性が子育てのために就業を断念することがないように、仕事と育児の両立が可能な社会にする必要がある。
この記事は役に立ちましたか?

役に立った
0
残り:11819文字/本文:13984文字
この記事を買った人はこれも買っています
      この記事を収録している本
      この本で最も売れている記事
      レビューを書くレビューを書く

      レビューを書いてポイントゲット!【詳細はこちら】

      この本の目次