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プレッシャーに強くなる技術
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生き方・教養
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第5章 プレッシャーに強い「名将」のワザを盗む

『プレッシャーに強くなる技術』
[著]齋藤孝 [発行]PHP研究所


読了目安時間:33分
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リーダーのプレッシャー耐性が組織の浮沈を左右する



 どんな組織であれ、リーダーの立場にある人には、メンバーよりも強いプレッシャーがかかる。それだけに、プレッシャー耐性=胆力が欠かせない。

 特にピンチの場面では、リーダーの胆力がチームの浮沈を大きく左右する。メンバーはその姿を見て、結束もするしバラバラにもなるからだ。

 およそ古今東西の「名将」と呼ばれる人たちは、類まれな胆力の持ち主でもある。そんな名将たちの胆力そのものを私たちが身につけることは、残念ながら難しい。もともとの「器」が小さい以上、無理なものは無理である。

 だが、数々のエピソードから胆力の一端を捉え、自分なりにアレンジして真似してみることならできる。

 そこで本章では、何人かの現代の名将のエピソードを紹介しつつ、胆力養成のヒントになりそうな部分を切り取ってみよう。

緊張する場面でこそ「笑顔」



 なるほどリーダーの胆力とはこういうものか、ということを大舞台で見せてくれたのが、なでしこジャパンの佐々木則夫監督だ。二〇一一年七月のワールドカップ決勝戦で優勝候補筆頭のアメリカに勝ち、チームを世界一に導いたことは周知のとおりである。

 この試合、PK戦にもつれ込んでチームが円陣を組んだとき、その輪の中で佐々木監督は確実に笑っていた。それも“つくり笑顔”ではなく、ごく自然に湧き出たような表情だったと記憶している。「この場面で笑えるのか!」と度肝を抜かれたのは、私だけではないだろう。

 この場面について、佐々木監督自身は以下のように述べている。

〈笑顔はほとんど無意識だったのですが、実は厳しい表情をしてはいけないという気持ちはありました。

 世界一を賭けたペナルティキック戦なんて、人生のうちに一度経験するかどうか。プレッシャーを感じるのは当然です。ペナルティキックを蹴らない私がガチガチの表情をしていたら選手に伝染しますが、監督が笑顔なら、選手も同調してくれるだろうと思っていました。〉(『勝つ組織』佐々木則夫・山本昌邦著/角川oneテーマ21


 つまり、意図的に笑顔をつくったということだ。またこのPK戦では、大黒柱の澤穂希(ほまれ)選手が蹴らなかったことも話題を呼んだ。もともとは蹴る予定だったが、澤選手自身が「蹴れません」と申し出たという。その際の佐々木監督の対応が、またすごい。

〈「そうか、さっきものすごい得点を決めてくれたからな、みんな、許してあげようよ」と言いましてね。そうしたら、選手たちは「えーっ、ずるーい」って笑ったのですが、その瞬間、これはリラックスして臨めるな、と思ったのは確かでした。〉(同書)


 よほど腹がすわっていなければ、これほど冷静な決断や観察は難しいだろう。しかし、緊迫した状況でとりあえず笑顔をつくることなら、私たちも意識すればできるかもしれない。

 ある程度の緊張感を持つことは重要だが、脳も身体も固まったままでは、状況をますます悪化させるおそれがある。笑顔で緊張をほぐすことができれば、少なくとも本来の実力は発揮しやすくなるだろう。世界が見つめるPK戦でさえ有効なのだから、日常の緊張を強いられる場面でも、効力を発揮するに違いない。


 ただし、無理に笑顔をつくろうとしても引きつってしまうだけだ。ポイントは、顔だけではなく身体全体で笑うように努めること。身体を揺さぶったり、肩甲骨(けんこうこつ)を回したり、軽くジャンプしたりして呼吸を入れ換えることが第一歩。さらに、揉んで温めた両手で顔を覆い、上に軽く引き上げるようにマッサージすれば笑いやすくなる。

面倒なトラブルが起きたら、まず軽く笑ってみる



 やることなすことうまくいかなかったり、トラブルが立て続けに起きたりして、自分で自分が嫌になるときがある。

 そんなときこそ、あえて笑顔をつくるチャンスだ。

 あなたの周りにいるリーダーのことを思い浮かべてほしい。こうした状況に陥ったとき、落ち込んで暗い表情をしたり、イライラして周りに八つ当たりをしてしまう人が少なくないはずだ。

 一方、「こうも重なるか。うまくいかなすぎてむしろ笑っちゃうよ」といって軽く笑みを浮かべ、淡々と問題解決に着手するリーダーがいたら、どう思うだろう。「ずいぶん腹の大きい人だな」と感じるのではないか。

「とりあえず軽く笑ってみること」には、周囲からの評価向上以外にもさまざまなメリットがある。まず、開き直って「もう笑うしかない」という心境になれれば、多少なりとも元気が湧いてくる。極論すれば、笑顔をつくれた時点で状況に対して「勝利宣言」できた、と考えてもいいだろう。

 また、笑いが身体の免疫力を高め、例えば癌に対しても効果があることが研究結果として明らかになっている。私たちの感覚としても、これは何となく理解できるのではないだろうか。

 笑顔が特に有効なのは、チームでトラブルに対処するときだ。全員が落ち込んだままでは、雰囲気まで悪くなってしまう。ここはやはり、まずは上司が笑って部下を安心させる必要がある。そういうワンクッションを置くことで、その後のトラブル処理は再発防止まで視野に入れた「アイデア会議」にまで昇華させることができるのである。

 私が勤める明治大学も大きな組織であり、小さなトラブルは茶飯事だ。学部間で意見が合わないこともあれば、学外との調整が必要なこともある。

 正直なところ、かなり面倒くさい案件も少なくない。その思いは、他の先生方や事務の方も共有するところである。したがって、会議はどうしても暗くなる。

 だがそのとき、「まったく、困りましたね」「どうしようもないですね」といった軽い調子で感情を共有し、状況を笑い飛ばすことができると、場の空気はずっと柔らかくなる。そうなると、「まあ仕方がない。やるしかないね」と覚悟を決めて前向きになれるのである。

 会議は雰囲気が大事であることは、誰もが経験的にわかっているだろう。全員が前向きになれば、意見やアイデアが飛び交い、いい結論に達することが多い。調子に乗って当初の議題を超越し、別の問題の解決策までついでに議論してしまうこともある。
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