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脳が変わる生き方
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生き方・教養
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第1章 人はどこまでも変われる

『脳が変わる生き方』
[著]茂木健一郎 [発行]PHP研究所


読了目安時間:37分
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01 脳には、変わることを支える力がある




 今、私は五十歳です。だいたい人生の折り返し地点ですけれども、自分の人生を振り返ってみても、ずいぶんと変わってきました。

 人は変われると、私は思っています。変われるということは、素晴らしいと思っています。そして、人間の脳にはもともと、変わることを支える力があることがわかっています。

 これまで十九年間、脳科学の研究をしてきました。この本では、それを活かして、人間は変わることができるということ、そして、どうしたら変わることができるのか、その考え方や方法について、解説したいと思います。

 まず、鍵になるのは、「偶有性」という言葉です。偶有性とは、半分は決まっているけれども、半分はどうなるかわからないこと。少し難しく言うと、半分は規則的で、あとの半分は、偶然に左右されるということです。

 たとえば、人の会話がそうです。人の会話は、ある程度はそれまでの流れなどから決まりますが、残りはどう展開していくかわかりません。だから、会話は面白い。

 人生もそうでしょう。人生も決まっているようでいて、決まっていない。どうなるかわからないから、生き甲斐があるのではないでしょうか。

 この「どうなるかわからない」ことを、大事な要素として脳は動いています。逆に言えば、決まり切ったことばかりだと、脳本来の働きが死んでしまいます。ある程度までは予想できるけれども、あとは何が起こるかわからない偶有性の中で、うまく生きていくために、脳は進化してきたからです。

 もし「脳の取扱説明書」があるとすれば、偶有性ということは、第一ページに書いてある重要なことですので、繰り返し解説していきたいと思います。

 考えてみれば、われわれは一人ひとり、それぞれ一個の脳を持って生きていますが、取扱説明書なんて、誰も読んだことはありません。恐ろしいことに、取扱説明書もなしに、われわれは日々、自分の脳を使っている。逆に言うと、いかに素晴らしい可能性に気づかないで生きているか、ということでもあります。

 それは、私自身もそうです。実を言えば、自分ができることの一万分の一もできていないと思っています。しかし、常にいろいろと試しています。どうしたら、自分の脳を思う存分使うことができるか、どうしたら、もっといろいろなことができるようになるのか、いつも考えています。

 読者の中には、自分の能力はもう決まっている、と思っている方も多いのではないでしょうか。

 いま仮に「自分は英語が苦手だ」と思い込んでいる人がいるとします。これは断言しますけれども、生まれつき「英語が苦手な脳」は存在しません。単に、英語を学ぶ方法をまだ見つけていないだけのことです。「勉強が苦手な脳」もありません。「人間関係が苦手な脳」もない。それまでの人生で、たまたまそういう状態になってしまっている。ただ、それだけの話です。

 本当にもったいないことだと思います。一人ひとりの脳が、たいへん大きな可能性を秘めているのに、そのうちのごく一部だけしか使わないで生きて、死んでいってしまうのが実情です。これは別に、新興宗教をやっているのでもない、洗脳しようとしているわけでもない。ただ、科学的な事実を述べているのです。

 もちろん、人間の脳はある程度、遺伝子で決まっています。たとえば知能指数で言えば、一卵性双生児の調査で、全体の五〇%が遺伝子で決まる、とされています。しかし、あとの五〇%は、生まれた後に何を経験し、学ぶかで変わってくる。

 そして、何よりも大事なことは、われわれ脳科学者は、知能指数が人間を測る上での、唯一絶対の指標だとは思っていないということです。それは、人間の脳の複雑さを知れば知るほど、実感することなのです。

02 人格や知性は「巡り会いの総体」




 たとえば、脳の記憶の研究でわかってきたことは、人間の記憶はコンピュータのように、一度蓄えられたらずっとそのままではなく、脳の中でずっと編集され続けている、ということです。

 読者の脳も、そうです。いまこの本で読んでいる内容は、脳の中に収納されて、その後、今までの経験と照合され、ずっと編集され続ける。その中から、後になって何が出てくるかは、そう簡単にはコントロールできないし、予想できることでもない。

 そもそも、入り口で取捨選択されていますから、いま読んでいることも、全部は覚えられません。何が残るかといえば、感情の中枢である扁桃体(へんとうたい)というところが、記憶の中枢である海馬(かいば)というところにシグナルを送り、「これは重要だから覚えておく」「これは覚えておかなくていい」ということを、私たちの知らないうちに振り分けている。

 いかに人間の脳というものが、一筋縄ではいかない複雑なシステムであるかを、われわれは今、少しずつ解明しているのです。

 知能指数も、ひと昔前は「頭の良さを表す指標」として使われていましたが、今は、実感として、そんなものではとても人間の知性を扱えないと、われわれは考えています。
「芸術は爆発だ」という名言で有名な、岡本太郎さんという芸術家がいました。彼があるパーティの乾杯の音頭で、こう叫んだそうです。
「この酒を飲んだら、死んでしまうと思って飲め。乾杯!」

 こういうひらめきに満ちた即興を、知能指数で測れますか。絶対に測れないでしょう。脳の中で何がどう編集され出てきたかわからない、このような瞬発的な判断やひらめきは測れない。遺伝子の影響の割合は全体の五〇%。ただそれだけのことに過ぎません。

 われわれの性格も、そうです。性格は生まれつきのものだ、と思われているかもしれませんが、人は変わることができる。

 アメリカで詳細な研究が行われて、現在では、性格形成における親の影響は二割、ほかの人の影響が、八割と言われています。

 われわれは人生の中で、実に多くの人と出会います。私もこれまでの人生で、いろいろな人にお会いしてきました。そのお目にかかったさまざまな方から、少しずつ影響を受けて人格はつくられていく。たとえば小学校のときなど、仲のいい友だちと話し方が似たり、趣味が似たりということがありました。あれは、人格が影響を受けて、互いに(はぐく)まれている状態です。

 ですから、自分という人間が、「最初から孤立して存在するもの」という、その考え方をまず捨てていただきたい。われわれは、人生の中でいろいろな人と出会います。そして、いろいろな結びつきをつくっていきます。パチンコ玉がお互いにぶつかるように行き交う中で、自分という人格が、徐々につくられていく。

 今あるあなたは、遺伝子で決まっているのではなく、これまでの人生の中で出会ったさまざまな人々、あるいは感動した映画や強い影響を受けた本、そういうものとの巡り会いの総体として、今ここにある。
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