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幕末に散った男たちの行動学
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歴史
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攘夷の黒幕

『幕末に散った男たちの行動学』
[著]童門冬二 [発行]PHP研究所


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─ 将軍慶喜側用人 原市之進(はらいちのしん)


いのちがけ

血液型と歴史上の人物

「社会や環境の変化に対しては、実に敏感であり、しかも、本能的に危険から身を避ける生命力を持っている。これは、たとえば街を歩いていても、ビルの建設現場の下を通って上から何かが落ちてきても、めったに当たらないし、交通事故にもあわない。タクシーの運転手でも自ら事故をおこすことは少ない、といわれる。

 性格は淡白で明るく、おしゃべりで、つよい自己肯定力を持っているので、あらゆる状況を切りひらいて行く。これは、実は心の底に、本人自身、つよい疎外感を持っているので、この疎外感を克服するために、反射的に行動的になるのである。周囲を魅する力を持っているが、論理性には欠ける」

 これは、「血液型による人間の性格」を分類する本での「B型」についての記述である。

 直感的で自己不信のつよいA型と、客観的・論理的で慎重なO型に対置してのB型を浮きぼりにしている。なぜ、こんなことを書き出したか、といえば、テレビの歴史ドラマを見ていて、
「信長や光秀は、いったい血液型は何型だったのかな」

 と、フッとつまらないことを考えたからだ。日本人の血液型は、いつごろから明らかにされたのかわからないが、このことは、ぼくにとって意外と興味のあることになってきたのである。

 すでにあげた血液型にあてはめるとすれば、豊臣秀吉などは、あきらかに「B型」である。明るくオッチョコチョイで、おしゃべりで、しかし状況の変化にじつに敏感で、状況を切りひらいて新しい局面を展開して行くことにかけては抜群の能力を持っている秀吉は、ぜったいに、状況に屈服することはない。その自己肯定を支えるのは、もちろん、底にある本能的な生命力であろう。

 そこへいくと織田信長だの、明智光秀だのは、いったいどの型にあてはめたらいいだろう。A型とB型の混合に、「AB型」というのがある。AとBの長所と欠点をそれぞれ併せ持ち、一見、理解しやすいようにみえて、しかし実際には、ひじょうに理解しにくい人間のタイプだという。“不気味”といってもいいそうである。

 光秀はこのAB型にちかい気がする。柴田勝家は、もっとも日本人的といわれるA型にあてはめていいだろう。しかし、どうあてはめてみても、ぜったいにどの型にもあてはまらないのが信長である。妙な断定だが、信長の性格にあう血液型は見当たらない。

AB型人間としての原市之進


 こういう歴史上の人物を血液型にあてはめてみるアソビは、幕末維新のときにも可能である。西郷隆盛はA、大久保利通は0、木戸孝允はどちらかといえばO、坂本龍馬はBかAB、勝海舟はABというようなことになるであろう。その意味では、これから書く原市之進も、実はこれといって即座にあてはめられるタイプではないが、0的なところもあり、AB的なところもある、という難解な男である。

 その客観的・論理的な一面はO型であるが、幕末時、しかも暗殺されるその日まで、将軍慶喜の黒幕として、諸種の建策をおこなった、いわゆる“幕末仕掛人”としての本領は、やはり不気味な行動力を思わせ、単にOにとどまるものではない。

 そこで、もういちど「AB型」の性格を、その本から抜き書きしてみる。
「決断力があり、機敏であり、活動的であり、人あたりがよく……」

 このへんはB型そっくりだという。また、
「事にあたって慎重、客観的で判断力もある、感動しやすく、同情心に厚く、犠牲的精神もある」
「勘の働きもよく、順応性もあり……」

 このへんはA型だという。しかし、気質的には自分でも整合できず、いわゆるムラがあり、心の中で煩悶することも多いという。ある意味では、どの血液型よりもすぐれているが、総合的に判断すると、残念ながら大きく成功する人が少ないそうだ。

 他人に対する優越意識があるので虚栄心もつよく、自分の実力をいつも過大評価して誇らしげに見せつけようとすることもあるが、これは、しかし、口さきだけでなく、冷静・沈着・決断力・行動力などによって実行はしてみせる ―― というようなタイプであるという。

 ぼくは、前出の本を読みながら、完全に「明智光秀だ」と思い、あるいは「勝海舟だな……」と思った。そして同時に、
「原市之進でもある」

 と思ったのである。しかし、歴史上の人物と、ぼくは会ったり話したりしてきているわけではないので、ぼくが勝や光秀をAB型といったり、あるいは、秀吉をB型だ、といってみたところで、それは、かなり一般化しているかれらのイメージをそのまま置きなおしているだけだ。もっと無責任ないいかたをすれば、テレビの役者のイメージが重なっているかも知れない。

 しかし、それではあまりにも味気ないので、歴史的事実から組みたてなおした原市之進を、AB型人間として登場させてみることにしたい。

わが胸の底には


 幕末時、政治的野心の旺盛な実力藩主たちは、それぞれ自分の脇に優秀な“頭脳”を置いていた。越前・松平春嶽における横井小楠と橋本左内、そしてのちの三岡八郎(由利公正)、彦根・井伊直弼における長野主膳、水戸・徳川斉昭における藤田東湖、会沢正志斎(あいざわせいしさい)、土佐・山内容堂における吉田東洋、武市半平太、そして後藤象二郎を通じての坂本龍馬、長州・毛利敬親における長井雅楽などはその例である。

 そういう“頭脳”を持たずに、自らが頭脳そのものであったのは、薩摩の島津斉彬くらいなものである。斉彬はとにかく、「日本きっての英明君主」といわれていた。西郷や大久保は斉彬に教えられたのであって“頭脳”ではない。

 さて、実力藩主と“頭脳”という図式を具体名を連ねてならべてきたら、ひとつのことに気がついた。というのは、これらの“頭脳”の多くが揃って非業の死をとげていることである。
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