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強者の管理学 韓非子
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第五章 仕える側の論理

『強者の管理学 韓非子』
[著]守屋洋 [発行]PHP研究所


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 今までの章では、主としてトップはどうあるべきかの問題をとりあげてきた。この五章では、百八十度角度を変えて、部下の側からトップにどう仕えるべきかについて考えてみたい。『韓非子』によれば、トップというのは部下に対する生殺与奪の権を握って組織ににらみをきかせている存在である。そんなトップにどう対応するかは、部下にとって死活の問題であると言ってよい。「説難」、「説林」、「外儲説」の諸篇から、その心得をさぐってみよう。


  〔ことば〕

(ゼイ)ノ離キハ、説ク所ノ心ヲ知リ、吾ガ説ヲ以ッテコレニ当ツベキニ在リ。
■ 説ノ務メハ、説ク所ノ(ホコ)ル所ヲ飾リ、ソノ恥ズル所ヲ滅スルヲ知ルニ在リ。
■ 自ラソノ計ヲ智トセバ、則チソノ敗ヲ以ッテコレヲ窮スルナカレ。
■ 事ハ密ヲ以ッテ成リ、語ハ()ルルヲ以ッテ(ヤブ)ル。
■ 知ノ難キニ非ズ。知ニ処スルハ則チ難シ。
■ 人主モマタ逆鱗(ゲキリン)アリ。
■ コレヲ()ウルハ難ク、コレヲ去ルハ易シ。
■ 淵中ノ魚ヲ知ル者ハ不祥ナリ。
■ 人言ヲ以ッテ我ヲ善クス。必ズ人言ヲ以ッテ我ヲ罪セン。
■ 直議スル者ハ、人ノ()ルル所トナラズ。


1 仕える者の心くばり

説得するためには相手の心を読め


 トップを説得するのはむずかしい。では、どういう点がむずかしいのか。

 それは、こちらが十分な知識を身につけておくことのむずかしさではない。また、自分の意見をよどみなく弁じ立てることのむずかしさでもない。そしてまた、言いたいことを残らず言い切ってしまうむずかしさでもない。トップを説得することのむずかしさとは、相手の心を読みとったうえで、こちらの意見をそれにあてはめること、この一点につきるのだ。

 たとえば、相手が名声を欲しがっているトップだとする。そんな相手に向かって利益をあげる方法を説いたら、心根の卑しい奴に辱しめられたとして、相手にされないにきまっている。逆に相手が利益のことしか念頭にないトップだとする。そんな相手に名声をあげる心得を説いたら、気のきかない役立たずだとして、見向きもされないにきまっている。

 表向きは名声を欲しがっているふりをしながら、実際は利益のことしか念頭にない相手だとする。そんな相手に、名声をあげる心得を説いたら、形だけは登用されるかもしれないが、実際は嫌われるのがオチだ。そうかと言って、利益をあげる方法を説いたら、意見だけ盗用されて、あとは知らぬ顔ということになりかねない。

 説得にあたっては、このあたりの機微を肝に銘じておかなければならない。

■ トップに物申すということは、現代と『韓非子』の当時とでは、いささかニュアンスが異なっている。当時は、進言であれ諫言であれ、まかりまちがってトップの怒りを買うようなことになれば、命がなかった。それだけに真剣勝負である。その説得を成功させる鍵は、相手の心を読むことだと『韓非子』はいう。韓非よりやや早い時期に活躍した「説客」に、蘇秦(そしん)という人物がいた。若いころ説得術を勉強して諸国遊説の旅に出たが、いっこうに芽が出ない。一念発起したかれは、数十巻の書物を積み上げて研究にはげみ、ついに、「揣摩(しま)の術」を会得した。「揣摩」とは一種の読心術のようなものであったらしい。これで蘇秦は、再度、遊説の旅に出たところ、こんどは、次々に説得を成功させることができたという。この蘇秦の例でも明らかなように、相手の心を読めるかどうかが、説得を成功させる鍵になるのである。


 オヨソ(ゼイ)ノ難キハ、吾ガ知ノ以ッテコレニ説クアルノ難キニ非ザルナリ。マタ吾ガ弁ノ能ク吾ガ意ヲ明ラカニスルノ難キニ非ザルナリ。マタ吾ノ敢エテ横佚(オウイツ)シテ能ク尽クスノ難キニ非ザルナリ。オヨソ説ノ難キハ、説ク所ノ心ヲ知リ、吾ガ説ヲ以ッテコレニ当ツベキニ在リ。説ク所名高ノタメニ()ヅルニ、コレニ説クニ厚利ヲ以ッテセバ、則チ下節ニシテ卑賤ニ遇ストセラレテ、必ズ棄遠セラレン。説ク所厚利ニ()ヅルニ、コレニ説クニ名高ヲ以ッテセバ、則チ無心ニシテ事情ニ遠シトセラレテ、必ズ収メラレズ。説ク所陰ニハ厚利ノタメニシ顕ニハ名高ノタメニスルニ、コレニ説クニ名高ヲ以ッテセバ、則チ陽ニハソノ身ヲ収メテ実ニハコレヲ(ウト)ンゼン。コレヲ説クニ厚利ヲ以ッテセバ、則チ陰ニハソノ言ヲ用イ、顕ニハソノ身ヲ棄テン。コレ察セザルベカラズ。


 凡説之難、非吾知之有以説之之難也。又非吾弁之能明吾意之難也。又非吾敢横佚而能尽之難也。凡説之難、在知所説之心、可以吾説当之。所説出於為名高者也、而説之以厚利、則見下節而遇卑賤、必棄遠矣。所説出於厚利者也、而説之以名高、則見無心而遠事情、必不収矣。所説陰為厚利而顕為名高者也、而説之以名高、則陽収其身而実疏之。説之以厚利、則陰用其言顕棄其身矣。此不可不察也。

相手の気持に逆らうな


 では、トップを説得するための心得とは、何か。

 相手が誇りにしていることは褒め、恥としていることは忘れさせてやる。まず、このあたりのコツを知っておかなければならない。

 私利私欲の非難を気にしている相手には、立派な大義名分を見つけてやって、自信を持たせることだ。

 志の低さを気にしながらやめられないでいる相手には、十分意義のあることだからやめる必要はない、と言ってやる。

 理想の高さにふりまわされて計画倒れにおわっている相手には、その理想のまちがいを指摘して実行しないほうがいい、と言ってやる。

 自分の知謀を自慢している相手には、以たような事例をあげて相手がそれを参考とするように仕向け、こちらは、あずかり知らぬ顔をして、それとなく知恵をつけてやる。

 他国との平和共存を説くときは、それが人類の理想であることを力説したうえで、トップ個人にとってもプラスになるとほのめかすがよい。

 危険な事業をやめさせようとするときは、いちおう問題点を指摘したうえで、トップ個人にとってもマイナスになるとほのめかすがよい。

 相手の仕事を褒めるときは、他の人の同じような例を引き、諫めるときは、共通点のある別の例を引くがよい。

 破廉恥だと非難されている相手には、同じような例をあげ、気にするほどのことではないと言って、励ましてやるがよい。失敗に心を痛めている相手には、やはり同じような例をあげ、あなたの責任ではないと言って、気を楽にさせてやるがよい。

 能力に自信をもっている相手には、その能力にケチをつけて、せっかくのやる気に水をさしてはならない。決断力を誇りにしている相手には、その決断の誤りを指摘して、機嫌を損じてはならない。知略に富むと思っている相手には、その知略の欠点を言いたてて、窮地に追い込んではならない。

 このように、相手の意向を汲みながらこちらの考えを述べ、相手の気持に逆らわないで物を言い、そのうえで、知恵と弁舌のかぎりをつくす。
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