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中国古典の名言に学ぶ 勝つためにリーダーは何をなすべきか
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ルポ・エッセイ
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一、かすかな徴候から動きを察知する

『中国古典の名言に学ぶ 勝つためにリーダーは何をなすべきか』
[著]守屋洋 [発行]PHP研究所


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 適切な経営戦略を立てるためには、その前に、時代の動きをみきわめ、流れを読む必要があります。また、対応を誤らないためには、人間を読む目も磨かなければなりません。

 先見力や洞察力を磨くためにはどうすればよいのか。この章では、中国古典の名言を参考にしながら、この問題を取り上げてみたいと思います。


 君子(くんし)(かすか)なるを()(あらわ)るるを()り、(はじ)めを()(おわ)りを()る。(わざわい)(したが)()こるなし


 君子視微知著、見始知終。禍無従起(『諸亮集』便宜十六策)



 先見力とはどういうことなのか、それをずばり語っているのがこの言葉です。
「君子」とは、中国古典によく出てくるのですが、能力、人格ともにすぐれた人物を指しています。中国流の理想の人物像であって、()いて言えば、アングロサクソンのジェントルマンがこれに近いかもしれません。

 そういう人物というのは、
「かすかな徴候を見ただけで、これから起こる事態を察知し、始めを見ただけで終わりがどうなるかを知ることができる。だから、不幸な事態を避けることができるのだ」

 というのです。

 この言葉は、『(しよかつりよう)集』といって、『三国志』で有名な、あの諸亮、(あざな)は孔明の文章を集めた古典に出てきます。孔明と言えば、知謀すぐれた軍師として知られていますが、いかにもそんな人物にふさわしい言葉ではありませんか。

先見力には「智」と「明」が必要だ


 ところで、「先見力」という言葉ですが、比較的新しい言葉のせいか、こういう言い方では古典には出てきません。古くから使われ、今でもよく使われているのは、「先見の明」という言い方ですね。

 さらに、漢字一字で先見力にあたる言葉を強いてあげるとすれば、「智」とか「明」になるかと思います。二つとも、昔からリーダーにとっては、なくてはならない条件だとして、しばしば取り上げられてきました。

 では、「智」や「明」というのは何を意味しているのかと言いますと、まず「智」ですが、『戦国策(せんごくさく)』という古典に、こういう有名な言葉があります。
愚者(ぐしや)成事(せいじ)(くら)く、智者(ちしや)未萌(みぼう)()る」

 というのです。
「愚者」、愚かな人間というのは、「成事に闇く」、ものごとが形になって現われてきてもまだその動きに気づかない。これに対し、「智者」、智のある人物というのは、「未萌に見る」。「未萌」とは「いまだ(きざ)さず」です。ものごとがまだ萌さないうちにその動きを察知するというのです。
『戦国策』のこの言葉によりますと、「智」というのは、深い読みのできる能力、つまりは洞察力を指していることがわかります。

 では、「明」とは何を意味しているのでしょうか。これについては『老子(ろうし)』という古典にある次の言葉が参考になるかもしれません。
(ひと)()(もの)は、()なり。(みずか)()(もの)は、(めい)なり」

 というのです。

 わかりやすく訳してみましょう。
「人を知るためには智が必要になるが、自分を知るためには明が必要になる」

 となります。
『老子』のこの言葉から、「明」もまた「洞察力」を意味していることがわかっていただけるかと思います。

 ただし、人を知ることもむろんむずかしいのですが、それよりももっとむずかしいのは、自分を知ることだと言われています。つまり、「智」も「明」も洞察力を意味しているのですが、強いてその違いをあげるなら、「明」のほうが「智」よりも高いレベルのものであることがわかります。

 これから取り上げていく「先見力」というのは、今述べた「智」や「明」があって、はじめて発揮されるのです。ですからリーダーというのは、とりあえずは「智」を身につけ、さらにそれを「明」のレベルにまで高めていくことが望まれます。そうあってこそ「先見力」を自分のものにすることができるのです。

リーダーの第一条件は洞察力


 では、なぜ先見力が重視されるのでしょうか。
『孫子』という有名な兵法書があります。『孫子』は、将たる者、つまりはリーダーの条件として五つのことをあげていますが、そのなかでこの「智」、すなわち洞察力をまっ先にあげています。

 ちなみに、他の四つとは、約束を守ること、思いやりの心、決断力、信賞必罰の厳しさといったことですが、これらと並んで「智」をまっ先にあげているのは、それだけこの「智」を重視していたことの現われであろうと思います。

 なにしろ(いくさ)をするからには勝たなければなりません。もし負けでもしたら、悪いことはみんな負けた側のせいにされてしまいます。こんなつまらないことはありません。

 勝つ戦を目指すからには、戦いを始めるまえに、敵味方双方の戦力を慎重に分析し、これなら勝てるという見通しをしっかりと立ててかからなければなりません。そこで必要になるのが、この「智」、すなわち「洞察力」なのです。

 また、いざ戦いとなって、両軍が戦場で相目見(あいまみ)えたとします。そんなときも、『孫子』は、
「相手の出方に応じて臨機応変に戦え。それが勝つ秘訣だ」と説いています。

 臨機応変に戦うためには、常に相手の動きに目をこらし、わずかな徴候や変化からも相手の意図を見破って対応しなければなりません。現に『孫子』は、ふつうなら見逃してしまいそうな、かすかな徴候から、相手の動きを読みとるための心得の条を幾つもあげているのですが、ここでも「智」を重視していることは言うまでもありません。

 このように、「智」というのは、「洞察力」と言ってもいいし、「先見力」と言ってもいいのですが、勝つことを目指すからには、どうしても必要な条件になるのです。

ビジネスに活かす中国古典の知恵


 洞察力や先見力が必要になるのは、なにも武器を取った戦いの場だけではありません。ビジネスの場でも同じことが言えるかと思います。

 私の知り合いの経営者がかつてこんなことを語っていました。かなり大きな取り引き先があって、比較的堅実な経営を続けてきたので安心してつき合ってきたのだが、あるときを境にして、急に拡大路線に転じたというのです。

 彼は「やばいぞ」と思ったらしい。他の会社は、相手の拡大路線に応じてどんどん取り引きを増やしていったのに対し、彼のところだけは、目立たないように少しずつ減らしていったというのです。

 一年後、案じたように、その取り引き先の経営が破綻し、多くの会社が巻きぞえで痛手をこうむったのに、取り引きを減らしていた彼の会社だけは、ほんのかすり傷で済んだと、そんな話をしていました。

 この場合、取り引き先の変化は、誰の目にもそれとわかるほど大きなものでした。それでも変化の裏に隠されていたものを読み切れないで、損害をこうむったところが多かったのです。まして、ささいな徴候から相手の実態を読み取るのは、容易なことではありません。

 厳しい現実を生き抜いていくためには、洞察力を磨いてかかる必要があります。そのためにはどうすればよいのか。引き続き、中国古典に学んでいきましょう。
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